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景気予測調査から見た来期業績見通し

~コロナ収束と半導体不足解消期待業種で大幅増益計画~

永濱 利廣

要旨
  • 2022年1‐3月期の法人企業景気予測調査を見ると、22年度計画では、売上高が2期連続増収計画も、輸入原材料高に伴うコスト増等により、経常利益は非製造業中心に減益計画。
  • 来季の増収計画幅が大きい業種は「宿泊、飲食サービス」「石油・石炭」「生活関連サービス」「生産用機械」「電気・ガス・水道」と続く。「宿泊飲食サービス」「生活関連サービス」は、新型コロナに対する経口薬の普及やGoTo再開などにより、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性が推察される。次に増収幅が大きい「石油・石炭」「電気・ガス・水道」は、原油価格の水準が引きあがったことにともなう価格転嫁を見込んでいる可能性がある。「生産用機械」は、半導体等の部品不足の深刻化により、製造装置などの更なる需要拡大を見込んでいることが予想される
  • 来期大幅増益が計画されている業種は「娯楽」「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「運輸・郵便」「自動車」「繊維」の順となる。特に上位四業種は、新型コロナに対する経口薬の普及が進むことやGoTo再開等で、空運や鉄道旅客数が正常化に向かう動きに加えて、テレワークやEC化の進展に伴う宅配需要の増加も寄与している可能性が推察される。また、半導体不足解消によりフル生産が期待される「自動車」やその川上の「繊維」も大幅増益を計画する。これ以外にも、非製造業では新型コロナに対する経口薬普及やGoTo再開による経済正常化を期待する「小売」「医療、教育」、製造業では在庫評価損の更なる拡大が期待される「鉄鋼」「金属製品」、半導体不足解消期待の「その他輸送機械」等も大幅増益を計画していることにも注目。
  • ウクライナ戦争の影響がより反映される3月日銀短観の業種別収益計画(4月2日公表)も来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
目次

来季は増収減益計画

3月11日に公表された2022年1-3月期法人企業景気予測調査は、今年2月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。

そこで本稿では、今年4月下旬からの今年度決算発表で、コロナ禍やウクライナ情勢が悪化する中でも来年度の企業業績計画の好調さが見込まれる業種を予想してみたい。

下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、22年度は2期連続の増収計画となっている。このことから、決算でも来期の売上高が好調な計画となる業種には注目が集まるものと推察される。

一方の経常利益も、全体で今年度は+22.1%の増益計画となっているが、輸入原材料の高騰などにより、来年度は▲0.3%と減益に転じる計画となっている。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度減益計画が出てくることが予想される中、特に2期連続増益計画となっている製造業で強めの計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。

企業収益計画
企業収益計画

来期大幅増収期待の「サービス」「エネルギー」「生産用機械」

以下では、4月下旬からの決算で、来季売上高計画で高い増収率が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を今期と来期の前年比で比較したものである。

売上高計画(2022年1-3月期景気予測調査)
売上高計画(2022年1-3月期景気予測調査)

結果を見ると、22年度は「農林水産」「鉱業」「娯楽」以外の全業種で増収計画となっている。中でも、増収率が高い業種は「宿泊、飲食サービス」「石油・石炭」「生活関連サービス」「生産用機械」「電気・ガス・水道」であり、二桁増益計画となっている。

なお、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。

したがって、「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」については、来期は新型コロナに対する経口薬の普及やGOTOキャンペーン再開等が進み、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性が推察される。

また「石油・石炭製品」や「電気・ガス・水道」については、原油価格の水準が引きあがったことにともなう価格転嫁の影響が大きいことが推察されるが、移動や接触を伴う経済活動正常化により、各種製品の需要回復も見込んでいる可能性がある。

さらに「生産用機械」は、半導体などの部品不足の深刻化により、製造装置などの更なる需要拡大を見込んでいることが予想される。

「サービス」「運輸」「自動車」「繊維」が大幅増益

続いて、経常利益計画から22年度の業績拡大が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、4割以上の業種で減益計画となっており、これは国際商品市況価格高騰等に伴うコスト増が主因と推察される。

こうした中、増益率が高い業種は「娯楽」「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「運輸・郵便」「自動車」「繊維」であり、いずれも二桁を大きく上回る増益計画となっている。

特に、「娯楽」「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」「運輸・郵便」については、新型コロナに対する経口薬の普及が進むことやGoToキャンペーン再開が予定されていること等により、空運や鉄道旅客数が正常化に向かう動きに加えて、特に「運輸・郵便」については、テレワークやEC化の進展に伴う宅配需要の増加も寄与してい可能性が推察される。

また、今期は大幅増益となった「自動車」や「繊維」も2割以上の増益計画となっている。自動車では、半導体不足の段階的解消が想定されていることに加えて、繊維ではその川上の化学繊維や炭素繊維の更なる需要拡大が寄与している可能性があろう。

さらに、これ以外にも非製造業では新型コロナに対するワクチン普及等による経済正常化を期待する「小売」や「医療、教育」、製造業では在庫評価損の拡大が予想される「鉄鋼」「金属製品」や、自動車同様に半導体不足解消期待の「その他輸送機械」等が2桁増益を計画していることにも注目だろう。

なお、日銀が4月2日に公表する3月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、ウクライナ戦争の影響をより織り込んでいる可能性が高いため、3月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。

経常利益計画(2022年1-3月期景気予測調査)
経常利益計画(2022年1-3月期景気予測調査)

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

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