工作機械受注が教えてくれる景況感

~ピークアウト~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年央までに資産購入を終了、22年央に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は下落。NYダウは▲0.0%、S&P500は▲0.7%、NASDAQは▲1.7%で引け。VIXは21.60へと上昇。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の実質金利は▲1.011%(+4.1bp)へと上昇。30年金利は底打ち感が鮮明。
  • 為替(G10通貨)はUSD高傾向。USD/JPYは113半ばで一進一退。コモディティはWTI原油が70.9㌦(▲1.4㌦)へと低下。銅は9534.5㌦(▲118.0㌦)へと低下。金は1774.6㌦(▲8.8㌦)へと低下。

米国 イールドカーブと米国 実質金利(10年)と米国 30年金利
米国 イールドカーブと米国 実質金利(10年)と米国 30年金利

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

米国 30年金利
米国 30年金利

経済指標

  • 米新規失業保険申請件数(季節調整値)は18.4万件と前週比大幅減。パンデミック発生前の水準を明確に下回った。原数値が28.1万件へと増加したことから判断すると、季節調整値の強さは誇張されている可能性があるが、労働市場は12月も堅調なペースで回復している可能性が高い。継続受給者数も減少傾向にある。FEDが引き締めに着手する理由に「雇用回復」が加わる可能性がある。

米国 新規失業保険申請件数と米国 失業保険継続受給者数
米国 新規失業保険申請件数と米国 失業保険継続受給者数

米国 新規失業保険申請件数
米国 新規失業保険申請件数

米国 失業保険継続受給者数
米国 失業保険継続受給者数

注目ポイント

  • 11月工作機械受注は前年比+64.0%へと伸び率が縮小したものの、単月の受注額は1454億円と約3年ぶりの高水準を維持。筆者作成の季節調整値は前月比▲1.3%、1496億円と微減。国内向けは季節調整済み前月比+1.9%、前年比+84.1%、外需は季節調整済み前月比▲2.4%、前年比+55.1%であった。大きくみれば水準は増加傾向、前年比伸び率は縮小傾向にある。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

  • 外需は高水準を維持している。地域別詳細は確報を待つ必要があるが、10月までの傾向から判断すると米国向けと欧州向けの伸びが続く下で、アジアが底堅く推移した可能性が高い。中国は電力不足問題が投資活動を抑制する可能性も危惧されたが、ひとまず深刻な事態は回避された模様。韓国と台湾向けは旺盛なIT関連財需要を背景に好調を維持した可能性が高い。米国向けはISM製造業景況指数が60前後で推移するなか、省力化目的もあり投資活動が復調しているとみられる。欧州向けは自動車生産の底入れ期待もあり復調している。
  • 国内向けはここへ来て回復が鮮明化してきた。一般機械、電気機械、精密機械など広範な業種で回復傾向にあり、単月の受注額は3ヶ月連続で500億円を超えた(季節調整値ベース)。自動車からの受注は依然低調だが、工場稼働率の回復と共に投資再開が期待される。自動車大手は12月以降に挽回生産を計画していると伝わっており投資活動再開が期待される。

工作機械受注「外需」と工作機械受注「国内向け」(需要業種別)
工作機械受注「外需」と工作機械受注「国内向け」(需要業種別)

工作機械受注「外需」
工作機械受注「外需」

工作機械受注「国内向け」(需要業種別)
工作機械受注「国内向け」(需要業種別)

  • 工作機械業界は、その受注サイクルが世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と連動するほか、アナリスト予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有する。決して大きくはない業界規模でありながら世界経済の動向を掴むうえで優れた指標と言える。

工作機械受注・OECD指数と工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・OECD指数と工作機械受注・予想EPS

工作機械受注・OECD指数
工作機械受注・OECD指数

工作機械受注・予想EPS
工作機械受注・予想EPS

  • そこでサイクルの位置取りを確認するために縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右上領域を左方向に進んでおり、増加サイクルの後半にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後は高水準を維持するも回復モメンタムは弱まると予想される。また株式市場目線では、受注ピークアウトが意識される時間帯に突入するだろう。特に中国向け受注額については、12ヶ月程度の先行性を有する中国クレジットインパルスが大幅低下し不気味なシグナルを発している。

工作機械受注と工作機械受注・中国クレジットインパルス
工作機械受注と工作機械受注・中国クレジットインパルス

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注・中国クレジットインパルス
工作機械受注・中国クレジットインパルス

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。