2つの意味で朗報だった雇用統計

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月31,500程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年央に資産購入を終了、22年終盤に利上げを開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.6%、S&P500は+0.4%、NASDAQは+0.2%で引け。VIXは16.50へと上昇。米長期金利の安定が株価押し上げに貢献。
  • 米金利カーブはブル・フラット化。利上げ観測の後退を伴いカーブ全体で金利低下。債券市場の実質金利は▲1.104%(▲5.7bp)へと低下。
  • 為替(G10通貨)はUSDの弱さが目立ち、USD/JPYは113前半まで下落。コモディティはWTI原油が81.3㌦(+2.5㌦)へと上昇。銅は9518.0㌦(+79.0㌦)へと上昇。金は1816.8㌦(+23.3㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブと米国 OIS金利と米国 実質金利(10年)
米国 イールドカーブと米国 OIS金利と米国 実質金利(10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 OIS金利
米国 OIS金利

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

注目ポイント

  • 10月米雇用統計は広義の経済活動正常化を印象付ける結果となり、2つの意味でポジティブであった。雇用者数の着実な増加は①マクロ的な賃金増加を通じた個人消費の回復に加えて、②サプライチェーン問題の解決に貢献すると考えられる。

  • 雇用者数は前月比+53.1万人と市場予想(+45.0万人)を上回り、過去2ヶ月分も+23.5万人上方修正された。原数値では+155.8万人と極めて大幅に増加。季節的に雇用者数が増加する時期ではあるが、失業保険の特例措置終了に伴い復職を果たした人が増加した可能性を窺わせる結果であった。業種別では飲食店等接客業(レジャー・ホスピタリティ)が+16.4万人と大幅に増加したほか、製造業(+6.0万人)、運輸(+5.4万人)などが増加した。

  • 失業率は4.6%へと0.2%pt.低下。労働参加率(61.64%→61.65%)が低空飛行を続けるなか、失業者は▲25.5万人の減少となり、失業率の低下基調は維持された。労働参加率の停滞についてはパンデミックに伴うレイオフが早期リタイアを促した可能性があり、これらに該当する人の復職は期待しにくい(労働参加率は上昇しない)。また感染リスクを踏まえ、パンデミックの帰趨を更に見極めたいと考える人も相当数存在する模様。パンデミックが完全収束するまで、労働参加率の上昇は鈍くなり、失業率低下が労働市場の改善を誇張する構図は続きそうだ。U6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なした広義の失業率)が8.3%へと0.2%pt.低下したことを踏まえると、労働市場の質的改善は進んでいると判断されるが、見た目の失業率ほどに労働市場は改善していないと判断される。

米国 雇用者数と米国 失業率
米国 雇用者数と米国 失業率

米国 雇用者数
米国 雇用者数

米国 失業率
米国 失業率

  • 平均時給は前月比+0.4%、前年比+4.9%であった。3ヶ月前比年率では+5.3%まで伸びを高め、モメンタムは一段と加速。同時に週平均労働時間は34.7時間と異例の水準で高止まりした。求人件数や企業サーベイ(NFIB調査)では企業の人手不足感がなお強いことが示されており、労働者の獲得競争が過熱している様子が窺える。名目総賃金(就業者数×時給×労働時間)は前年比+9.2%、3ヶ月前比年率で+11.0%と著しい増加基調にある。

  • 今回の結果は、労働参加率が横ばいに留まるなど労働市場の正常化が一筋縄ではいかないことが示された。しかしながら、雇用者数の着実な回復はサプライチェーン問題の一因である労働者不足が改善することで、賃金・物価上昇圧力が鎮静化に向かうシナリオの蓋然性を高めている。直近のペースで雇用者数が回復すれば、2022年央にはサプライチェーン問題は解決の糸口がみえているだろう。FEDは2022年6月に資産購入が終了した後、どれだけの期間を置いて利上げに踏み切るか悩んでいると思われるが、その頃には「一時的インフレ」が終息する兆候が散見されていると期待される。

米国 U6失業率・労働参加率と米国 平均時給と米国 週平均労働時間と米国 名目総賃金
米国 U6失業率・労働参加率と米国 平均時給と米国 週平均労働時間と米国 名目総賃金

米国 U6失業率・労働参加率
米国 U6失業率・労働参加率

米国 平均時給
米国 平均時給

米国 週平均労働時間
米国 週平均労働時間

米国 名目総賃金
米国 名目総賃金

藤代 宏一

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