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2023.10.16
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在留外国人の孤独感
~孤独・孤立対策が進む中で~
水野 映子
1.コロナ禍を経て
日本に住む外国人(在留外国人)は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大による入国制限の影響で一時はやや減ったが、2022年末に再び増加に転じ、2023年6月末には過去最高の322万人(日本の総人口のおよそ2.6%)となった(図表1)。
日本では近年、長引くコロナ禍の下で孤独・孤立の問題が深刻化したことを背景に、その解決に向けた政策(後述)が進められてきた。この孤独・孤立の問題は、日本人だけでなく、外国人にも存在すると考えられる。
先月(2023年9月)、在留出入国管理庁から発表された「令和4年度 在留外国人に対する基礎調査」には、孤独感に関する設問がある。この設問には、日本に住む一般の人々を対象に実施された「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」(以下「一般調査」)とほぼ同じ設問が使われている。そこで本稿では、一般調査も参考にしながら、日本に住む外国人の孤独感の現状と、孤独・孤立への対策について考える。
2.孤独を感じる外国人は約半数 ~若い世代・留学生で顕著~
まず、一般調査の結果からみてみよう。回答者の国籍に関するデータはないが、冒頭で述べた外国人の人口比率をふまえると、ほとんどは日本人と考えられる。
本稿で焦点を当てるのは、「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか」という設問への回答である(図表2)。回答者全体では、孤独を感じることがある人(「しばしばある・常にある」「ときどきある」「たまにある」と答えた人)は約4割であった。年代別では、現役世代と呼ばれる20~50代で孤独を感じることがある人の割合が高い。
次に、在留外国人の調査の結果を図表3に示す。全体では孤独を感じることがある人の割合が半数近くを占めている。前述の一般調査の結果より約9ポイント高い。
ただし、「全くない」と答えた人の割合も、一般調査で「決してない」と答えた人の割合より8ポイント以上高い。質問方法や集計方法等が若干異なるため単純には比較できないが、在留外国人のほうが孤独を感じることが多い人と全くない人に二極化しているとも考えられる。
在留外国人の調査を年代別にみると、孤独を感じることがある割合は20歳未満を除く若い世代で高い傾向がみられる。一般調査に比べても20代の割合が特に高い。
在留資格別では「留学」の人で孤独を感じることがある割合が最も高い(注1)。また、日本での通算在住年数別にみると、在住年数が短いほど孤独を感じることがある割合が高い。若い人や在住年数が短い人のほうが他の人との付き合いが浅く、孤独を感じていると推測される。
3.外国人を取り残さない孤独・孤立対策を
以上が調査結果からみた、外国人の孤独感の現状である。
ところで、1で触れたように、日本では近年、孤独・孤立対策が急速に進められてきた。具体的には、2021年2月に内閣官房に孤独・孤立対策担当室および担当大臣が新設された。また同年には、この担当室によって、支援制度や相談窓口などを紹介するウェブサイト(注2)も開設された。今年(2023年)5月には「孤独・孤立対策推進法」が成立し、来年度始(2024年4月1日)に施行される。
この法律の概要(注3)の趣旨には、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」「相互に支え合い、人と人との『つながり』が生まれる社会」を目指すことが明記されている。この概要や法律本文の中で外国人に言及した箇所は特にないが、「誰ひとり取り残さない」対象者には、日本に住む外国人も当然含まれる。
前述の孤立・孤独対策のウェブサイトの情報は、日本語以外に10か国語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・タイ語・ベトナム語・ネパール語・インドネシア語)で提供されている。また一部ではあるが、日本語以外の言語に対応した相談窓口もある。外国人が利用しやすい制度や相談窓口をより充実させるとともに、その認知を広げることが課題といえる。
併せて、「相互に支え合い、人と人との『つながり』が生まれる社会」にするためには、外国人と日本人とのつながりを作るきっかけも必要である。今年(2023年)5月に新型コロナが5類感染症に移行したことを機に、地域のイベントなどの活動が復活しており、住民同士の交流機会が増える兆しもみられている。その輪の中に入って、元からあったつながりを取り戻したり、新たにつながりを作ったりしている外国人もいるだろう。
ただし、2で紹介した調査結果では、外国人の中で孤独感に差がある傾向がみられた。人とのつながりを十分得られている外国人がいる一方で、それができずに孤立している外国人もいる可能性がある。そうした人々も含めて「誰ひとり取り残さない」対策が、政策のレベルでも地域や個人のレベルでも引き続き求められる。
水野 映子
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。