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プレゼン資料AIの衝撃

~標題、見出し項目、概要を自動生成してくれる現代の魔法~

柏村 祐

目次

1.プレゼン資料の重要性

ビジネスにおいては、さまざまな局面でプレゼンテーションする機会がある。たとえば、新規事業を立ち上げ予算や人員を確保するために、企画内容を経営層に説明することがある。また、顧客に自社の商品やサービスを提案することもあるだろう。これらのプレゼンテーションでは、企画や提案の意図・内容を的確にわかりやすく伝えるためにも、プレゼンテーション資料は重要である。資料には、説明する相手の関心を惹き、内容に共感を得ることが必要となる。

効果的なプレゼンテーション資料を作成するには、相応のスキルが求められる。従来は、テキストやセミナーで自学自習したり、同僚・上司から作成ノウハウを教えてもらいながらスキルを高めてきた人が多いだろう。だが最近では、テクノロジーの進歩に伴い、プレゼン資料を自動生成してくれるAIが登場している。プレゼン資料は、伝えたい内容をわかりやすく的確に表現し、さらに状況によっては、できるだけ短時間で作ることが求められる。プレゼン資料AIは、高度な資料作成スキルがなくても、これらの課題を解決してくれる画期的なAIとなっている。

本稿では、そのプレゼン資料AIについて概観し、その可能性について解説する。

2.プレゼン資料AIとは

プレゼン資料AIとは、自分自身がプレゼン資料として作成したいテーマを一文入力すれば、AIがプレゼンテーション資料を自動生成してくれる仕組みである。生成される資料は、標題ページ、見出しページ、見出し毎の説明ページという、多くのビジネスマンに馴染み深い構成となっている。

そこで、実際に具体的なテーマでプレゼン資料AIに資料作成させ、その性能を検証してみよう。まず、筆者の専門分野であるテクノロジーについて、「テクノロジーはどのように社会を変えるか」というテーマをプレゼン資料AIに入力してみた。このテーマに対して、プレゼン資料AIは10秒足らずで8枚のプレゼンテーション資料を生成した。資料の構成は、1枚目に標題、2枚目に見出し、3枚目から8枚目に見出し毎の説明ページとなっている。1枚目の資料には「デジタル革命 テクノロジーは社会をどう変えるか」という標題が生成され(図表1左)、2枚目の資料として標題の主旨に沿った見出しが6項目自動生成された(図表1右)。

図表1
図表1

さらに、3枚目以降の見出しごとの説明ページでは、2枚目の見出し項目に即した説明文章と、それを連想させる画像がついた形でプレゼン資料が生成された。たとえば「テクノロジーの長所と短所」というページでは、テクノロジーの進化により情報へのアクセスが高速化したことや、日常的な作業が自動化したことが長所として挙げられる一方、テクノロジーを受け入れながらも、周囲の人々とのつながりを忘れないことが大切だという説明文章が生成された(図表2)。

図表2
図表2

次に、「人生100年時代のキャリア形成を考える」というテーマをプレゼン資料AIに入力してみた。このテーマに対して、1枚目に標題、2枚目に見出し、3枚目から8枚目に見出し毎の説明ページが生成された。1枚目に「自分の道を切り開く 人生100年時代のキャリア開発」という標題が自動生成され(図表3左)、2枚目には見出しとして6項目のキャリア形成に関連する項目が自動生成された(図表3右)。

図表3
図表3

さらに、3枚目以降に見出し毎の詳細な説明が記載された。たとえば「セルフケア」のページでは、「人生100年時代のキャリア形成には、自分自身をケアする時間をとることが、ストレスや燃え尽き症候群を減らし、健康や幸福感を向上させる」と説明された。また、セルフケアのためには、体を動かしたり、趣味や興味のあることを追求することが重要である点が記載されている(図表4)。

図表4
図表4

3.プレゼン資料AIの可能性

以上のように、プレゼン資料AIは、プレゼンしたい内容をAIに書き込むと、標題、標題に基づいた見出し項目、見出し項目毎の説明文章とその内容を連想させる画像をつけて、プレゼン資料を自動生成してくれる。生成された資料には加筆修正できるので、これをもとに自分なりの資料にカスタマイズすることもできる。プレゼン資料生成の経験がない人や浅い人にとっては、プレゼン資料AIを活用することにより、資料に必要なアウトラインの作成やキーワードの抽出といったスキルを習得することにつながる。

さらに、ビジネス環境が激しく変化する中、作成したいテーマを一文入力すればAIが資料を自動生成するこの仕組みは、従来では人のみが作成すると考えられていたプレゼン資料について、AIと人が協力する新たな生成プロセスのあり方を提示しているといえるだろう。

現時点では、前提となる個別具体的な情報を受け付けられないため、プレゼン資料AIのみで完璧なプレゼン資料を作成することは難しいが、自分がプレゼンしたいストーリーやコンテンツのたたき台を生成する能力は有している。近い将来を見据えれば、すでに普及しているプレゼンテーションソフトにプレゼン資料AIが搭載されることや、会話型検索エンジン(注1)とプレゼン資料AIが統合されることも予想され、それらにより、作業の飛躍的な効率化や資料の高付加価値化が可能となるだろう。

ビジネス現場では必須スキルともいえるプレゼン資料の作成において、プレゼン資料AIは、生産性を向上させる現代の魔法として、今後さらなる発展が期待されるところである。

【注釈】

1, 会話型検索エンジンの衝撃~生産性向上につながる検索エンジンの可能性~
https://www.dlri.co.jp/report/ld/232635.html

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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