北京2022パラリンピックに期待される遺産

~東京2020パラリンピックが残したものを振り返る~

水野 映子

目次

1.まもなく始まる北京2022パラリンピック

中国の北京では現在、冬季オリンピック(注1)が開催されているが、これが2月20日に閉幕すると、次は冬季パラリンピックが3月4日に開幕する。この北京2022パラリンピックでは、3月13日までの10日間にわたり、6競技78種目がおこなわれる予定になっている。

ところでパラリンピックといえば、特に日本人にとっては、昨夏(2021年8月24日~9月5日)の東京2020パラリンピックが記憶に新しい。新型コロナウイルスの感染拡大によりオリンピックとともに1年延期され、当初の予想とは全く異なる形で開かれた東京2020パラリンピックは、開催地の人々に何を残したのだろうか。北京2022パラリンピックの開会を前に振り返る。

2.北京2022パラリンピックを観戦したい都民は3割 ~東京2020パラリンピックを経て~

東京都は、東京2020パラリンピック後の2021年10月に都民に対する意識調査を実施し、先月(2022年1月)末に結果を公表した。それによると、東京2020パラリンピックより前に開催された2回のパラリンピック(リオデジャネイロ2016、平昌2018)を観戦した人(テレビやインターネット等で観戦した人を含む)は、それぞれ1割程度に過ぎなかった(図表1①)。だが、東京2020パラリンピックを観戦した人は44.5%と大幅に増えた。そのうち約85%の人は、東京2020パラリンピックを楽しめたと答えている(図表2)。

また、今後の開催が予定されている北京2022・パリ2024パラリンピックについては、それぞれ3割以上の人が「観戦したい」と答えている(図表1②)。東京2020パラリンピックを楽しく観戦した経験などが、次のパラリンピックの観戦意向につながったと考えられる。パラリンピックに対する関心をより喚起すれば、観戦意向を示した人はもちろん「わからない」と答えた人なども、これから開かれるパラリンピックの観戦に気持ちが向かうかもしれない。

図表1 パラリンピック観戦の経験と意向
図表1 パラリンピック観戦の経験と意向

図表1 パラリンピック観戦の経験と意向
図表1 パラリンピック観戦の経験と意向

図表2 東京2020パラリンピックを観戦
図表2 東京2020パラリンピックを観戦

3.東京2020パラリンピックが膝元にもたらした社会的効果

次に同調査で、東京2020パラリンピックの開催によってどのような効果が得られたと思うか、と尋ねた結果を図表3に示す。最も回答割合が高かったのは、「障害者への理解促進」(41.3%)である。次に「パラスポーツ(障害者スポーツ)の普及促進」「パラアスリートの認知度の向上」「共生社会への理解促進」が3割強で並んだ。

東京2020パラリンピックは原則無観客でおこなわれたために、その競技に一般の人々が生で触れることはほぼ叶わなかった。また、パラリンピックに関連したさまざまなイベントも、コロナ禍により中止・縮小を余儀なくされた。それでもなお、開催地の人々は、このパラリンピックが障害のある人への理解やそのスポーツの認知・普及の促進に一定の効果をもたらした、と考えていることがわかる。

図表3 東京2020パラリンピックの開催によって得られた効果
図表3 東京2020パラリンピックの開催によって得られた効果

今回の北京2022パラリンピックもまた、コロナ禍の中、観客数などを制限しておこなわれるとされている。だがこれを機に、開催地の北京をはじめとする中国、日本、そして世界において、障害のある人を取り巻く社会環境が改善され、良い意味での「遺産(レガシー)」として残ることを期待する。その実現のためには、パラリンピックを通じてパラスポーツやパラアスリート、ひいては障害のある人に対する関心を高め、さらにはそれを一過性のものにするのではなく持続・深化させていく取り組みが必要だろう。

【注釈】

1)本稿では、「オリンピック競技大会」「パラリンピック競技大会」をそれぞれ「オリンピック」「パラリンピック」と略記する。


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水野 映子


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