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2025.10.28
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管理職につくことだけが、女性活躍か?
~現代における女性活躍のあり方を考える~
福澤 涼子
- 目次
1. 女性活躍推進法の施行から10年を迎える
女性活躍推進法の施行から、2026年4月で10年となる。本来、10年の時限立法であった同法は、2036年まで延長されることとなった。延長の背景には、女性の正規雇用比率、女性管理職比率、男女間賃金格差などにおいて依然として課題が存在するという現状がある(注1)。同法において「常時使用する労働者が101人以上」の企業は、「管理職に占める女性労働者の割合」「採用者に占める女性労働者の割合」「男女の賃金差」などの15項目の指標の中からいくつかを選定し、情報を開示することが求められている(注2)。一方で、これらの指標のなかでも、女性管理職の割合が特に女性活躍のシンボルとされているとの見方もある(注3)。実際、日本の女性活躍が進んでいない証左として、女性管理職比率の国際比較が報道などで取り上げられたり、主要な新卒採用サイトでもその比率が企業データとして掲載されている。
女性活躍推進の達成度を測るうえで、女性管理職比率の公表は有効な指標の一つであり、目指すべき方向性であると考えられる。しかし、この指標があまりにも前面化することで、非管理職で働く女性たちの仕事に対する自己評価や社会的評価が相対的に低くなったり、「管理職を目指さない=意欲が低い」と捉えられてしまうのは惜しい。彼女たちを「活躍を望んでいない人」とみなすのではなく、「異なる形で活躍を志向している人」と捉えることはできないだろうか。
2. 管理職志向の男女差
実際、管理職を志す女性が少ないことは多くの調査からも明らかである。当研究所が2024年に実施したアンケートによると、正社員女性(注4)のうち「今より高い役職(会社幹部や、管理職など)を目指している」との回答は21.1%にとどまる一方、「目指していない」と回答した女性は50.7%にのぼり、その割合には倍以上の開きがみられた(図表1)。
年代別の男女差に着目してみると、「あてはまる」と明確に肯定的な意思を示した割合は、若手層(18~39歳)、中堅層(40~59歳)ともに女性より男性の方が約2倍高い割合となっている。「あてはまらない」と明確に否定的な意思を示した割合をみても、特に若手層において女性が男性の約1.5倍に上ることから、男女間でより強い意思での昇進意欲の意識差があることがうかがえる。

このようなキャリア意識に男女差が生まれる背景には、いくつかの社会的な要因があると考えられる。第一に、正規雇用で就業する女性や管理職に就く女性の少なさである。厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によると、正社員・正職員として勤務する人の内訳は、女性が27.6%、男性が72.4%である。そして、管理職等に占める女性の割合は、部長相当職では 8.7%、課長相当職では 12.3%と女性の割合はさらに低い水準にある。その結果、ロールモデルとなるような同性管理職の存在が少なく、男性よりも女性の方が管理職で働くことを当然のこととして捉えにくい。
第二に、管理職像そのもののジェンダー・バイアスがある。管理職には男性的なイメージが付与されがちで、これらが女性にとって心理的なハードルとなっている。実際、リーダー像の印象に関する調査(注5)でも、人事や経営層が自社に求めるリーダーシップ像は、「数字に強い」「行動力がある」といった男性リーダーのステレオタイプと大きく重複する一方で、「よい聞き役である」「思いやりがある」といった女性リーダーのステレオタイプとはほとんど重複しないという結果であった。つまり会社のリーダー像の期待に応えるためには、女性であっても男性的にふるまわなければならない。このことが、管理職は自分には不向きだと女性が捉えることにつながっていると考えられる。
さらに、ライフコースとキャリアパスの違いもある。女性は結婚・出産・育児などライフイベントに応じて、休業したり、働き方を変える場合が男性よりも多く、その時々で柔軟にキャリアを組み立てる必要がある。ゆえに、男性に比べて長期的なキャリアパスを描きにくい。そして、管理職になると労働時間が長くなったり、緊急対応なども生じやすいことから、家庭との両立への危惧も昇進意欲を下げる要因となる。
3. 働く意欲・目的の男女差
次いで、別の角度からキャリア意識の男女差を見てみよう。図表2は、有配偶者の「もし配偶者の収入が十分であれば、自分は働いていないだろう」の回答結果である。女性では、いずれの年代も肯定的に回答した割合(「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」の合計)の方が否定的な回答割合(「あてはまらない」「どちらかといえばあてはまらない」の合計)よりも多く、収入を得るために働いている人の方が多い。一方、男性では否定的な回答割合の方が多く、特に40代以降ではその割合が44.5%に達しており、「配偶者の収入が十分でも働き続けたい」という人が多い。男性にとって「働くこと」は、収入以外の意味を持つ行為でもあることがわかる。
多くの女性にとって、働くことは人生の選択肢の一つでしかないのかもしれない。実際、既婚女性には働くか否かの選択肢、働く場合もフルタイムかパートかといった選択肢が多く存在する。一方で、「男性は働くのが当然」という社会的認識がいまだ根強く、現役世代の男性の就業率は配偶者の有無にかかわらず非常に高い。つまり、男性にとって働くことは、単なる経済活動ではなく自己のアイデンティティの維持という重要な意味を持つと考えられる。だからこそ、より高い役職に就くことが、彼らの自尊心などとも直結してくると考えられる。これに対して、女性の場合は、働くことを人生の選択肢の一つとして、家庭や地域活動など他領域とのバランスの中で位置づけている人も多いのではないか。

4. 社会や組織にとって役に立つ人材でありたいという意識の男女差
こうしたデータを見ると、「女性はキャリア志向や働く意欲が低い」と受け取られがちだが、必ずしもそうではない。「今の仕事に働きがいを感じている」「社会や組織にとって役に立つ人材でありたい」といった項目への肯定的な回答割合をみると、男女差はほとんどなく、むしろ女性のほうが高い(図表3)。
つまり、女性は組織内での地位向上よりも、社会や組織への貢献を重視して働く傾向があると言える。「傍(はた)を楽(らく)にする」ことがその語源であると言われるように、「働く」とはもともと他者を楽にするための行為である。その原点に立ち返れば、「社会や組織の役に立ちたい」との意識をもって他者のために働くこと自体が「活躍の姿」であると捉えられるだろう。

5. 女性の活躍のあり方を決めるのは、女性自身
本稿で見てきたように、女性のなかには管理職への昇進意欲は低い一方で、社会や組織への貢献ややりがいを感じて働いている人も多い。このようなキャリア観をより尊重した女性活躍のあり方が求められる。
ただし、本人たちの志向を尊重して、女性の管理職を増やすことを諦めるべきだと言いたいわけではない。意思決定層に女性が不在だと、当事者視点での労働環境の改善を果たしていくことは難しい。また、性別多様性が高い組織ほど、業績・イノベーションの成果が向上する傾向が示されている。男女の賃金格差も、女性管理職の少なさが大きく影響している。何より、次世代を担う若い女性たちが自分はリーダーにはなれないと諦めることのないよう、現役世代から変えていくことが求められる。そのためには、「管理職」の人材イメージや、労働環境を根本から変えていく必要がある。長時間労働の慣行や、「決断力」「行動力」など男性的資質を前提としたリーダー像を見直すことが求められる。
その上で、これからは「女性は管理職を目指すべきだ」という社会的通念が強まりすぎることには留意する必要がある。かつて、「女性は家庭で家事・育児に専念すべきだ」という性別役割分業意識が、多くの女性の職業機会を奪ってきたように、社会的通念はときに当事者の自由な選択を制限してしまう。もちろん、働き方の柔軟性やジェンダー・バイアスなど女性の管理職志向を阻む構造的な課題を一つひとつ丁寧に解決していくことは不可欠である。だが、女性活躍のあり方として「女性は管理職を目指すべきだ」という画一的な期待が広がることは望ましいとは言えない。求められるのは、上司や組織などの周囲が一方的に「活躍のかたち」を定義するのではなく、本人自らが自分らしい活躍の姿を描き、それが選択できる環境を整えていくことである。日本初の女性首相が誕生したこのタイミングだからこそ、改めて女性活躍のあり方について考え、お互いのキャリア観を尊重し、多様な形で活躍ができる社会を作っていくことが重要である。
【注釈】
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厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」の報告資料では、男女の賃金の差異は依然として大きく、女性管理職の割合も国際的に見るとその水準が低い、ハラスメント関係の相談件数は高止まり傾向にあるなどの課題から、10年の期限延長が適当だと述べられている。/厚生労働省「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会 報告書」2024年
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厚生労働省・都道府県労働局雇用環境・均等部「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!(パンフレット)(2025年10月最終閲覧)」によると【女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供】の項目として「採用した労働者に占める女性労働者の割合/男女別の採用における競争倍率/労働者に占める女性労働者の割合/係長級にある者に占める女性労働者の割合/管理職に占める女性労働者の割合/役員に占める女性の割合/男女別の職種又は雇用形態の転換実績/男女別の再雇用又は中途採用の実績/男女の賃金の差異」加えて【職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備】の項目として、「男女の平均継続勤務年数の差異/10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合/男女別の育児休業取得率/労働者の一月当たりの平均残業時間/有給休暇取得率」がある。なお、常時使用する労働者の人数に応じて、必須項目や必要な公表数が異なり、すべて公表する義務があるわけではない。なお、2026年4月1日以降は、従業員数101人以上の企業は、「男女間賃金差異」及び「女性管理職比率」の情報公表が義務となる。
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たとえば「『女性活躍』の指標はさまざまであるが、女性管理職を増やすことが「女性活躍」のメルクマークとされていることは確かであろう。」と述べられている。/濱口桂一郎「女性「活躍」はもうやめよう 働き方の普通を変える」『世界 第998号』2025年10月
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厚生労働省の「令和6年版働く女性の実情」によると、令和6年の雇用形態別雇用者数は、女性は非正規雇用で働く者(1,444万人)が、正規雇用(1,299万人)で働く者よりも多くなっており、男性の場合は非正規雇用労働者(682万人)よりも正規雇用労働者(2,355万人)で働く者の方が大幅に多い。このような雇用形態の違いからキャリア形成意識の差が生じる可能性もあるために、本稿では正規雇用労働者に絞って分析している。
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パーソル総合研究所「女性活躍推進に関する定量調査報告書」内の「リーダーステレオタイプの実態(p.70~71)」2022年
【参考文献】
厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「ハラスメント対策・女性活躍推進に関する改正ポイントのご案内」2025年6月
【関連レポート】
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福澤 涼子
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