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注目のキーワード『防災の日』

水澤 太一

9月1日は「防災の日」です。この日は、1923年に関東大震災が発生したこと、台風シーズンを迎える時期にあたることから、1960年に災害に備える日として制定されました。震災から百年を超え、防災インフラや情報伝達の仕組みは大きく進歩しましたが、今なお残る課題として、いわゆる「災害弱者」が挙げられます。

「災害弱者」とは、高齢者、障害のある人、乳幼児、妊産婦、外国人など、災害時に特別な配慮が必要な人々を指します。東日本大震災では、障害のある人の死亡率が住民全体の約2倍に上ったと報告され、その深刻さがうかがえます。避難情報が届きにくい聴覚障害者、移動が困難な車いす利用者、言葉の壁に阻まれる外国人など、直面する困難はさまざまです。とりわけ、単身世帯や老老介護世帯の増加は、この課題をより複雑かつ深刻にしています。

これまで対策の柱とされてきた地域の助け合い(共助)も、コミュニティの希薄化により、その機能に限界が見え始めています。そこで、新たな光となるのがテクノロジーの活用です。たとえば、支援が必要な人と地域の支援者を結びつけるマッチングアプリ、高齢者宅に設置されたセンサーが揺れや停電といった異常事態を検知し、家族や支援者などにその情報を通知することで安否確認のきっかけをつくる「デジタル見守り」、自動翻訳機能を用いた多言語対応の防災アプリなど、多様なニーズに応える技術が続々と生まれています。

これらの取り組みは、高齢者向け技術「エイジテック」や社会課題解決を目指す「ソーシャルテック」と呼ばれる新しいビジネス領域を形成し、市場の拡大も期待されます。誰一人取り残さない防災体制の構築は、人道的要請であると同時に、社会の多様性・包摂性や企業の社会的責任といった観点からも重要です。災害という非常時にこそ、その社会の真価が問われます。テクノロジーの力と人の温かさを融合し、社会全体の防災力を高めること。それこそが、課題先進国である日本が世界に示す新しい防災の姿ではないでしょうか。

(総合調査部 政策調査グループ長 水澤 太一)

水澤 太一


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