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よく分かる!経済のツボ『賃上げにはどのような方法があるのか?』

岩井 紳太郎

目次

高まる賃上げモード

2023年春闘(春季労使交渉)において、主要企業の定期昇給相当分を含む賃上げ率は3.60%と、30年ぶりの高水準を記録しました(資料1)。このような賃上げに向けての動きは、昨今の物価動向も影響しさらに熱量が高まっています。政府は「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」において「構造的賃上げ」の実現を掲げ、また経団連や連合は2024年春闘においてさらなる賃上げに取り組む方針とされます。

図表1
図表1

賃上げの方法

賃上げは主に月例給与にかかる議論で、「定期昇給(定昇)」と「ベースアップ(ベア)」の2つに分けられます。「定期昇給(定昇)」とは、年齢や勤続年数に応じて定期的に引き上がる昇給のことを指します。これに対して「ベースアップ(ベア)」とは、賃金水準自体を引き上げることです。この2つを合わせた賃金の引き上げ割合がいわゆる賃上げ率です(資料2)。月例給与の他にも賃上げの方法はあり、「賞与・一時金(ボーナス)」の引上げや「諸手当」の支給が該当します。「諸手当」には、資格手当や能力給等があります。昨今の物価動向に対応したインフレ手当や、被扶養配偶者を対象とした配偶者手当も「諸手当」の1つです。

図表2
図表2

自社に適した賃上げ方法の検討が必要

2023年は賃上げ率が高水準を記録した一方で、人手不足や物価上昇が理由でやむを得ず賃上げを実施した企業が多かったことも事実です。日本商工会議所の調査によると、2023年に賃上げを実施した企業のうち、業務の改善が見られないが賃上げ(防衛的賃上げ)を実施した企業は6割超でした(資料3)。昨今のさらなる賃上げモードの高まりの中で、それぞれの企業において労使で議論を重ね、状況に応じて多様な方法・選択肢の中から判断する必要があります。また、賃上げに向けて、中小企業の生産性向上への支援等の環境整備に社会全体で取り組んでいくことが重要です。

図表3
図表3

岩井 紳太郎


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