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Well-being QOLの視点『新しいNISA活用術』

村井 幸博

目次

新しいNISA

2024年からNISAが抜本的に拡充される予定である。今回の拡充は「抜本的」とい言葉に相応しく、NISAのモデルとなったイギリスのISAと遜色ないものになる。主なポイントは、

  • 制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化
  • 年間投資枠の拡大(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)及びつみたて投資枠と成長投資枠が併用可能(現在はつみたてNISAと一般NISAは年単位の選択制)
  • 非課税保有限度額が全体で1800万円(うち成長投資枠1200万円)、枠の再利用可能

などである。新しいNISAによって、一定の制限はあるが、平均的な世帯が行う資産形成で必要な株式・投資信託などへの長期投資は「ずっと非課税」が制度として確立すると考えられる。

新しいNISA活用術

新しいNISAは、いろいろな活用術が提案されているが、筆者は以下の3点を提案したい。

①新しいNISAよりもまずiDeCoを優先検討

iDeCoの「掛金の全額所得控除」はNISAにはない大きな税制優遇である。「原則60歳まで資金の引き出し不可」や手続きなどの煩雑さを理由に敬遠する人が多い印象だが、iDeCoによる所得税・住民税の減少金額とその換算利回り、iDeCoとつみたて投資枠の投資対象・手法の類似性、老後資金を確実に準備する必要性を考えるとiDeCoの資金配分を優先検討すべきである。しかもiDeCoには預金など元本確保型商品が含まれ、100%配分できる(NISAは株式や投資信託などへの投資が必須)。投資に不安感を持つ初心者でも、安心して取り組める仕組みである。

②つみたて投資枠・成長投資枠の使い分け

「長期・積立・分散」は投資の基本である。しかし実際に投資をすると特定の資産・銘柄の中短期投資になってしまう人も少なくない。そのような投資家に対して、つみたて投資枠を長期・積立・分散のコア部分とし、成長投資枠の一部を個別株などの中短投資用のサテライト部分として明確に分けて使うことを提案したい。短期売買したい投資家にとって年間投資枠240万円は少ないが、税制優遇の中短期投資は魅力的であり、かつNISA口座で明確に資金・損益管理ができるため、短期売買の抑制効果も見込める。

③各世代の特性に合った活用

若い世代は、自動化して「積み立て(貯める)&投資(ふやす)」ができるつみたて投資枠を積極的に活用して欲しい。NISAは投資に焦点が当たりがちだが、積み立てでお金を貯める習慣を身に付けるのも資産形成には重要である。また、セカンドライフ世代では株主優待や配当などを目的にした成長投資枠での投資も選択肢になる。配当などの定期的なインカム収入や株主優待の楽しみがあれば、心に余裕をもって長期投資をすることも可能だからである。

新しいNISA普及のための課題

今後の課題を3点指摘したい。第一は貯蓄の約2/3を保有する60歳以上世帯の問題である。年齢や適合性の観点から投資への移行は限定的で、新たな仕組が必要となる。第二は投資に必要な金融リテラシー向上である。情報過多の中で適切かつ分かり易い情報をどのように届けるかである。第三は国内株式投資への関心低下である。日本と日本企業に投資家が納得する成長戦略がなければ、国内株式投資回帰は難しい。

村井 幸博


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。