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QOL向上の視点『リモート社会が生んだ「部下との距離」を縮めるには?』

畑野 宏

コロナによる様々な社会の変化とともに、企業における上司部下の人間関係も微妙に変化しつつある。リモートワークをベースとして、オンラインでの対話が主流となる機会も随分増えており、その結果上司部下の距離が遠くなったという話をよく耳にする。部下の立場からは、上司と少し離れていた方が心地よい時もあるが、上司にとってこの距離感は、モヤモヤの原因となる場合も多いのではないだろうか。

これを補う方法として、最近では1on1ミーティングを取り入れる企業も増えてきたが、ただでさえ「今の若者たちと心を通わすのは難しい」と考える上司にとって、リモート社会は「分かり合う」というハードルを更に引き上げているように思う。雑談や「ちょっと一杯」の機会が極端に減った今、「部下と心を通わす」には、どのように接していけばよいのだろうか。この微妙な距離を縮めるために、部下との対話で大切にしたい3つの点について考えてみる。

 1点目は、「傾聴」というスキルを発揮することだ。私たちは日々対話する際、相手の話を様々な角度から分析・判断・評価しながら、「聞く」という作業を行っている。そしてその作業中には、様々な自身の感情を抱えながら聞くケースも多い。たとえば「自分とは考え方が違うな」とか「同じことを何度言わせるのだ」などだ。しかし、この自分目線の感情が、時には部下に寄り添う妨げとなる場合がある。

「傾聴」とは、このような分析・判断・評価は一切せず、ひたすら寄り添い、受け止め、共感することを大切にする聴き方である。もし自身と異なる価値観に接した場合は、無理に共感しようとせず、「そう感じるのだな」と一旦横に置き、ひたすら相手目線での対話を心掛けるようにする。「傾聴」は、カウンセリングでは基本となる技法だが、部下との対話においても大切にしたいポイントである。

2点目は、自身の凝り固まった価値観を押し付けることなく、部下の話を聴くということだ。最近のキャリア相談では、「役職というステータスにあまり魅力を感じられない」「仕事に人生を捧げるよりも、プライベートを充実したい」こんな言葉がよく聞かれるようになった。以前は、昇格を諦めたミドル社員がよく口にする言葉だったが、今ではヤング世代からも聞かれる。

もちろん、最初から昇格を諦めているわけではない。しかし、そもそも仕事に求めるもの、会社という組織に対する考え方などが、上司の時代とは確実に変わってきていることを、この際しっかりと認識しておきたい。その上で、凝り固まった価値観を押し付けず、部下の様々な考え方を冷静に受け止めることが大切である。昇格や目標管理に頼る面談スタイルだけでは、もはや通用しない時代となりつつある。

3点目は、このような多様な価値観に触れる機会を、積極的に増やすことだ。家庭や会社といった同質性の集団とは別に、第三の場(趣味や学びなど)に意識して身を置き、そこに集う人々の多様性をまずは肌で感じてみたい。様々なコミュニティに内在する、多様な考え方に刺激を受けることが、自身の価値観の壁を取り払う、一番の近道となるのではないだろうか。

この混沌とした時代においても、人と人との関わりは、何ら変わるものではない。そのつながり方に、少しの工夫と努力を積み重ねることが、このリモート社会でも変わらぬ人間関係を築いていくために、大切なことなのではないだろうか。

畑野 宏


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