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QOL向上の視点『Well-beingの実現は「心理的安全性の確保」から』

山口 良司

目次

バラエティー番組を見て気づいたこと

少し前の話だが、相手が話していようがお構いなし、出演者は愚痴や、思いついたことを勝手気ままに喋りまくる某地方テレビ局の番組を目にした。キャリアコンサルタントとしては不可欠な傾聴の姿勢などどこにもないやりとりに、強烈な違和感を覚えたが、徐々に、そんな言いたい放題の掛け合いに心地よく引き込まれていったのを覚えている。 

暫くたったある日、キャリアデザイン研修をしている企業担当者のリモートの背景がこの番組の映像であることに気づいた。聞けば、この番組の大ファンだとか。その魅力を語る彼の話に興味を持ち、どうしたら幸せ(Well-being)でいられるかを研究テーマとしていた私は、勝手気ままで滅茶苦茶だけれど、とても幸せそうな番組の登場人物達を、もう一度じっくりと観察してみることにした。

この番組の主役は、企業でいうならリーダー的存在だ。彼の言いたい放題、やりたい放題の発言や振る舞いは、そのまま文字に起こせば、パワハラとされる内容かもしれない。しかし、映像で目にする彼の雰囲気や仕草、全身を使って大笑いする姿からは、相手(例えれば部下)への尊敬や愛すら感じられるから不思議だ。他の出演者も同様に言いたい放題なのだが、それでも番組は決まって毎回、予想以上に爽快で温かい着地点(組織なら目標)に辿り着く。

コロナ禍の今、ソーシャルディスタンスの影響もあってか、ますます人と人の距離が遠ざかり、社会というレストランの新メニューには、掲載しきれないほどハラスメントの種類が書き加えられていく。自明のことだが、独りでできることには限界がある。大きな目的に立ち向かい実現するには、一人ひとりが存分に個性を発揮し、足し算に留まらない掛け算のパフォーマンスの発揮が必要な時代だ。ハラスメントを恐れるあまり、言いたい事、言うべきことを言わずにいないか? 表面的なやり取りでお茶を濁してはいないか? この番組のように、時には葛藤を乗り越え、なんでも言い合える環境がなければ多様性の発揮もままならないのではないか。

Well-beingに必要な心理的安全性

キャリアコンサルタントとして駆け出しの頃の私は、来談者に「そのままの貴方でいい」と赦すことを優先してきた。人間関係の悩みを、他者との距離を広げる転職などで解決しようとする相談者に「それで良し」と面談を終えることは簡単だ。でも、相談者の多くは、できるなら相手と善い関係性をつくりたいとも考えている。今は、「そのままで良し」で終わらせることなく、来談者が真に望む状態(Well-being)を共に見つけ、少しは背伸びもして行動できるまで面談を重ねるよう心掛けている。

Well-being(幸せな状態)は、静のイメージの言葉だが、静かな水面も、木の葉が一葉落ちただけでさざ波は立つように、変わらず幸せでいる状態を保つのは、実はかなり難しい。

また、Being(あり続けるため)には、Doing(行動し続けること)が不可欠であり、Doingには、ThinkingやLearningなど、その時々に相応しい行動の形が沢山ある。

独りよがりのWell「良い」に留まらず、みんなにとってのWell「善い」-beingを実現するためには、自由に言いたいことが言い合える心理的な安全性の確保が不可欠だ。さらに、個人の行動変容には、何でも言い合える心理的安全性を確保してくれる、リーダーの存在も不可欠だ。

そして今、リーダーに必要なDoingは、軋轢を恐れず、目の前の人と心の距離を縮めるためのListeningとTalkingのように思う。

山口 良司


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