時評『「幸せ」視点の地球環境問題』

近藤 智洋

当社は昨年出版した「『幸せ』視点のライフデザイン」の中でコロナ禍の中、つながり、お金、健康の3つの人生資産について、「幸せを感じる」という視点からの分析提案を行っているが、ここではいわゆる地球環境問題について、この「幸せ」視点から考えてみたい。

<つながり> 気候変動や生物多様性といった地球環境問題に「つながり」が不可欠なのは言うまでもない。温室効果ガスも生物圏の侵食も国境で止まらず、地球環境問題は相互に深く関連した多様な問題の集合として、どこかひとつを取り出して解決するということもできない。近年「ワンヘルス」として、ヒトの健康、動物の健康、環境の健全性の3つを統合的に同時達成にすることが提唱されているが、これらはいずれも地球環境問題の解決に向け「つながり」を新たに強化構築する取り組みとも言えよう。

<お金> 地球環境問題の多くは、先進国と途上国の間における成長や資源分配に関する国際的な議論の中で扱われており、お金の必要性や投資のあり方は、近年特に大きな課題となっている。COP26で大きく報じられたGFANZ(ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟)の活動やESG投資に代表される責任投資の議論は、現世代である私たちが働きがいを求めるのと同様に、次世代が如何に安心して成長の果実を享受でき、地球から引き続き豊かな慈しみを幸せに受けられるようするか、その知恵と工夫を現世代に問うているとも言えよう。

<健康> 地球の健康診断はあまり芳しくないようである。この厳しいコロナ禍の環境下でも地球環境に関する科学者の国際組織は知見の蓄積を進め、気候変動におけるIPCCの新たな統合報告書作業や生物多様性におけるIPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)などで分析検討が進められている。この多大な努力に頭が下がる一方で、1.5度目標への道程などその健康診断結果には情報提供レベルを超え、最早動機付けや積極的支援が必要であろう。

このように、つながり、お金、健康の3つは人生資産であると同時に次世代の地球の幸せを形作る要素の一部であり、さらに本書が個々人のライフデザインに向けて謳っている「多様性の受容」、「寛容さ」、「利他」という3つの「幸せ」視点も同様に私たちの地球環境問題への対応に有益な視点の一部と思われる。

これら3つの視点はいずれも他者への想像力や敬愛の気持ちを重視している。一人の幸せは周囲の他人や環境で支えられているが、地球環境問題の難しさの一つは、現在の自分の生活が如何に他人や他国によって支えられているか、あるいは自分の小さな行為が遠くの国に無理な活動を強いていないか、といった想像力や思いを十分働かせる必要がある点にある。

つながり、お金、健康という人生資産がコマ軸をもってバランスをとりつつ回転することが人生の「幸せ」視点に有益なように、改めて日々の自らの活動の地球への負担を想像し、時々は自分の生活を見つめ直すことは、地球と自分の両方の幸せを感じる一歩かもしれない。

NGOや地域での様々な地球環境の保全活動は、個々人や個社にとって、改めてその想像を具体化し「幸せ」を実感できる貴重な機会である。華やかな国際会議の議論の一方で、実際にゴミ拾いや生物観測などの現場に赴き心地良い自然の息吹に触れるとき、その営みが小さいものであったとしても、一瞬この3つのコマが快く回転数を上げるように感じるのは私だけではないと思う。

改めて自分の人生の来し方を振り返り、これからのライフデザインを考えるとなると、私なぞは反省ばかりで頭を抱えてしまう。ましてや地球環境問題へのこれまでの自分の対応など尚更である。今から取り返しできるのだろうかと思いながらも、今日より早い日はないという若き日の教えを今更ながらに噛み締めて、改めて日々の生活に「幸せ」視点を取り入れていきたい。

近藤 智洋

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