QOL向上の視点『青い鳥症候群とキャリアデザイン』

山口 良司

目次

キャリアデザイン研修の限界と挑戦

私がファシリテーターをしているキャリア研修は、過去の出来事とその時の感情を思い返しながら、自分が大切にしている価値観(自分らしさ)とリソース(人生資産)を言語化し、将来ありたい姿をデザイン(描く)していく。そして最後に、実現のための行動計画を立てて完成となるが、私だけではなく、キャリアデザインと名の付く研修のほとんどはこのステップを基本としている。

ある時、「研修で、理想的な将来像を考えよと言われても正直思いつかなかった。いや、指示されることに慣れてしまい、自ら考えることを辞めてしまっていたのかもしれない」と話してくれた受講生がいた。昨日まで目の前の仕事に忙殺される日々を送って来た受講生が、研修の短い時間内にありたい姿を明快に描くことは難しい。だからこそ、せめて研修の間くらい真剣に、ありたい将来像をデザインしてみて欲しいと願ってガイドしている。

将来のありたい姿の変化

「将来のありたい姿を描く」とは、「“自分らしい幸せ”を発見すること」と言い換えることもできる。かつて、僕は社長になる!という夢を抱いて入社式に臨んだ新入社員も多かったのではないだろうか。そんな彼らも、50代となり、キャリア研修の場で、ありたい姿を“社長”と公言する人はまずいない。50代研修受講者の価値観ベスト3は「自由」「貢献」「達成感」だ。

ひとたび夢を手に入れると、その幸福感は永遠に続くと思いたいものだが、人と夢という字を合わせて儚いと書くように、夢の絶頂感は得てして短命である。50代は、少なからずそのことに気づく年代だ。幸せをそんな夢の一瞬の連続と考えるならば、幸せでいることは、ずいぶんと気ぜわしく困難なことに感じる。

二つのキャリア理論

有名なキャリア理論に、「特性因子理論」がある。自分の特性(個性)と因子(環境)とのマッチングをさせることで、より良い職業人生が実現できると考える理論だ。運良く希望した会社に就職できたとしても、望まない部署や業務に就くことの方が多いのが現実。結果、何度も因子(会社)を変えるための転職を試みる。

対極に、一見好ましくない状況でも、それを自分の好機と考えて取り組もうという「計画された偶発性理論」がある。研修でも、「あの頃の苦難は、今考えると自分の成長の糧になった」と振り返る人は多い。幸せな人生のためには、夢を抱くだけでなく、目の前の現実から目を逸らさず行動することも忘れてはいけない。

長続きする幸せは平凡な日々に

「今のままが最高!!」と言い続けて生涯を終える人は少ないだろう。第一志望校に合格する、宝くじで10億円を手にする、社長になる等、そんな輝く時間も人生の一場面を切り取った一瞬にしかすぎない。また、輝きが大きいほど、反動として訪れる闇が深いことも多い。

青い鳥症候群という言葉がある。似た意味に「灯台下暗し」「隣の芝は青い」などもある。他人の一瞬の輝きを羨んだり、日常の現実から目を逸らしていては、より良く生きる(Well Being)ことはできないだろう。

最近、人生とは、たまに訪れる輝く瞬間や暗い時間の点と点をつなぐ線(日常)だと感じるようになった。灯台の光や、青い芝、そして幸せの青い鳥という点を見つめながら、そこに向かって一歩一歩階段を昇り、土をいじり、目の前のスズメを見つめなおしてみよう。長続きする幸福は、そんなありたい姿に向かって、行動し、成長し続ける一見平凡な日々の中にあるように思う。

山口 良司

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