- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- 米国経済マンスリー:2026年1月
- US Trends
-
2026.01.19
米国経済
米国経済見通し
米国経済全般
米国金融政策
トランプ政権
米国経済マンスリー:2026年1月
~2026年の政策サポート~
前田 和馬
- 要旨
-
-
アトランタ連銀のGDPナウキャスト(1月14日時点)は2025年10~12月期の実質GDP成長率が前期比年率+5.3%と、個人消費を中心に大幅なプラス成長を予想している。なお、政府閉鎖による公的支出の停止と再開により、今後数四半期の成長率の変動は大きくなる可能性がある。
-
2026年の米国経済は、25年7月成立の減税法案の効果発現や利下げによる住宅投資の下支え等を背景に、緩やかな成長を続ける可能性が高い。また、一部関税策に違憲判決が下されると見込まれるなか、トランプ政権は11月の中間選挙を見据え関税率を幾分低下させる可能性がある。
-
12月CPIでは関税によるインフレへの影響が依然緩やかに留まった。2026年の金融政策は5月以降に就任する新議長の政策スタンスとその指導力に大きく依存する。一方、トランプ政権によるパウエル議長の刑事捜査を背景に新議長の指名が円滑に進まない懸念が浮上している。
-

経済指標
12月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
12月ISM製造業PMIは47.9(11月:48.2)と3か月連続で低下し、10か月連続で好不況の節目となる50を下回った。内訳をみると、在庫が45.2(48.9)と低下し全体を押し下げたほか、生産も51.0(51.4)と前月水準を小幅に下回った。一方、雇用は44.9(44.0)、生産活動に先行する新規受注は47.7(47.4)と共に上昇したものの、低調に推移していることに変化はない。企業コメントでは「(関税による)収益減でボーナス支給や新規採用が困難となっている(その他製造業)」などと引き続き関税を中心した懸念のほか、「大規模データセンター計画が他産業向けのリソースを吸収・減少させている(飲食料品・タバコ製品)」などデータセンター建設等による他産業への負の影響(クラウディングアウト)に言及する声がある。
他方、12月ISM非製造業PMIは54.4(52.6)と3か月連続で上昇した。足下のサービス業活動は好不況の節目となる50を上回るなど、底堅く推移している。内訳をみると、事業活動が56.0(54.5)、雇用が52.0(48.9)、新規受注が57.9(52.9)と幅広い項目で上昇した。企業コメントでは「休暇シーズンによりビジネス活動が活発化している(輸送・倉庫)」や「総じてビジネスは堅調(金融・保険)」といった前向きなコメントが見られる一方、「バリューブランド(低価格帯)は引き続き高い需要を維持しているものの、プレミアムブランド(高価格帯)は市場シェアの維持に苦戦している(農林水産業)」など消費の二極化を指摘する声がある(詳細は「トランプ関税で米製造業の縮小が継続(12月ISM製造業)」及び「米国 懸念をよそに非製造業の拡大ペース加速(12月ISM)」)。
12月雇用統計
12月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+5.0万人(11月:+5.6万人)と2か月連続で増加した。3か月移動平均では-2.2万人(-0.3万人)と、10月における政府職員の大量離職(1月に実施した早期退職プログラムの影響)を背景に3か月連続で減少したものの、こうした影響が剥落する1月分ではプラスに転じる可能性が高い。12月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉は前月差+3.85万人(+5.81万人)と人手不足を背景に46か月連続で増加し全体を押し上げた。また、娯楽・宿泊業も+4.7万人(-0.3万人)と休暇シーズンのレジャー需要などを背景に前月水準を上回った。一方、小売業は-2.5万人(-1.69万人)、専門・企業サービスは-0.9万人(+1.3万人)、製造業は-0.8万人(-0.2万人)とそれぞれ減少するなど、景気に敏感な産業の雇用は停滞が持続している。他方、政府部門は+1.3万人(+0.6万人)と2か月連続で増加したものの、連邦政府職員に限ると2025年通年では-14.9万人の減少となるなど、トランプ政権による政府職員削減の影響がみられる。
この間、12月の労働参加率は62.4%(11月:62.5%)と小幅に低下した。一方、失業率は4.4%(4.5%)と僅かに前月水準を下回るなど、足下の上昇傾向に一服感が示された。また、週平均労働時間は前年比0.0%(0.0%)と横ばい圏で推移した一方、平均時給は+3.8%(+3.6%)と増勢を加速した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+4.3%(+4.4%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+1.1%(0.9%)、週当たりでは+1.1%(+0.9%)と増加するなど、底堅く推移している(詳細は「米国 失業率が低下、FRBの様子見を支援(12月米雇用統計)」)。
12月消費者物価指数(CPI)
12月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%(9月:+0.3%)と前回9月実績から横ばい圏で推移した(10月分が欠損しているため、11月分の前月比は非公表)。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみると、総合指数が+2.1%(+2.1%)、コア指数は+1.6%(+1.6%)とインフレの減速が示された。しかし、政府閉鎖を背景に価格調査が困難であったため、10月実績は大半の品目で前月から横ばいと仮定されるなど、これらの計数は足下のインフレトレンドを過小評価していることに留意が必要だ。
12月の内訳を見ると、食品は前月比+0.7%(9月:+0.2%)と大幅に加速した。パンや食肉、乳製品など幅広い品目で上昇した。一方、エネルギーは+0.3%(+1.5%)とガソリン価格低下を背景に前月から騰勢を鈍化した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.2%(+0.2%)と前回実績から横ばい圏で推移した。コアCPIの内訳を見ると、住居費が+0.4%(+0.2%)と家賃を中心に高い伸びを示した。一方、住居費を除くコアCPIは+0.1%(+0.2%)と前月から減速した。コア財は0.0%(+0.2%)に留まるなど、高関税による価格転嫁の進行や11月の特殊要因からの反動(11月は調査期間が短縮され、年末商戦によるセールの影響が通常より強く反映されたとの見方があった)を示すとの予想に反して、低調に推移した。家電が低下したほか、引き続き自動車やアパレルなどの価格上昇は緩やかに留まっている。他方、サービスでは航空運賃や娯楽サービスが上昇した。
先行きのCPIを巡っては、サービス価格は労働需給緩和による賃金上昇率の安定や家賃の鈍化を背景に減速が続く可能性が高い。一方、財価格は追加関税による輸入物価上昇の影響が時間をかけて波及するとみられ、特にCPI上のウェイトが大きい新車やアパレルへの価格転嫁動向が注目される(詳細は「米国 安定も政府機関閉鎖お承認による歪みが残存(12月CPI)」)
11月小売売上高
11月小売売上高は前月比+0.6%(10月:-0.1%)と前月から増加した。内訳をみると、自動車が+1.0%(-1.6%)と前月の反動増もあり全体を押し上げた。また、無店舗小売は+0.4%(+1.0%)、衣料品は+0.9%(+1.2%)と共に2か月連続で前月水準を上回るなど、年末商戦を背景に幅広い品目で堅調に推移した。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は+0.4%(+0.6%)と2か月連続で増加した。12月が前月から横ばいの場合、10~12月期では前期比+1.0%(7~9月期:+1.6%)と6四半期連続での増加となる。雇用の減速感は強まっているものの、株高を背景とした高所得者消費の牽引もあり、米国の消費は底堅く推移している(詳細は「米国11月小売売上高は堅調な年末商戦を映じて拡大」)。なお、クレジットカード利用実績や人流データを用いた「シカゴ連銀小売速報(CARTS)」において、12月の小売売上高(外食を含み自動車を除く)は名目ベースで前月比+0.6%(11月:+0.5%)、インフレ調整後の実質ベースでは+0.3%(+0.2%)と共に増加したと試算されている。
12月鉱工業生産
12月鉱工業生産は前月比+0.4%(11月:+0.4%)と2か月連続で上昇した。12月の内訳を見ると、鉱業は-0.7%(+1.7%)と前月の反動もあり2か月振りに低下した一方、公益は+2.6%(-0.3%)と気温低下を背景に2か月振りに上昇した。一方、製造業は+0.2%(+0.3%)と2か月連続で上昇するなど、緩やかに回復している。製造業の内訳を見ると、航空機・その他輸送機器は+1.5%(-1.3%)、電気機器・部品は+1.7%(+0.8%)、一次金属は+2.4%(-2.1%)とそれぞれ上昇した。一方、自動車・同部品は-1.1%(-0.2%)と、EV補助金終了による軟調な新車販売を背景に4か月連続で低下した。先行きに関して、追加関税によるサプライチェーンの混乱や価格上昇を背景とした需要減少、及び半導体の供給不足による生産下押しに警戒が必要だろう(詳細は「米国 製造業が予想に反して拡大(12月鉱工業生産)」)。
経済見通し
2025年10~12月期実質GDP成長率は民需を中心に底堅く推移すると見込まれる。アトランタ連銀によるGDPナウキャスト(1月14日時点)に基づくと、同四半期の実質GDP成長率は前期比年率+5.3%(7~9月期実績:+4.3%)と、個人消費の増加や無形資産投資を背景に堅調さを維持する可能性が高い。とはいえ、同試算値には政府閉鎖の影響が部分的にしか反映されていない可能性がある。米議会予算局は6週間に及ぶ政府閉鎖が10~12月期の成長率を-1.5%pt下押しすると試算している。また、2026年1~3月期には逆に政府支出の反動増が全体の成長率を+2.2%pt押し上げると見込まれるなど、表面上の成長率は短期的に大きく変動する可能性がある。
先行きの米国経済を巡っては、利下げによる住宅投資の下支え、或いは7月に成立した減税法案の効果発現などを背景に、緩やかな成長を続ける可能性が高い。また、IEEPAに基づく関税措置が違憲となる場合、実効関税率が低下し、インフレ抑制と消費の更なる押上げへと繋がる可能性がある(詳細は1月6日付け「2026年の米国経済を占う5つの注目点」)。
一方、移民抑制による労働供給減の影響は割り引いてみる必要があるものの、足下では雇用者数の拡大ペースの減速が鮮明となっている。新規の求人や採用が鈍化するなか、今後企業による人員削減の動きが積極化する場合、失業率が急騰するリスクに警戒が必要だ。11月の有効求人倍率(=求人数÷失業者数)は0.92(10月:0.98[当社試算値])と1倍割れに陥っており、大幅な失業者の増加を吸収する十分な雇用は存在しない。
この間、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は89.1(10月:92.9)と5か月連続で低下した。また、1月のミシガン大学消費者信頼感指数は54.0(52.9)と2か月連続で上昇したものの、消費者マインドの軟化が続いていることに変化はない。減税法案の恩恵が富裕層に集中する一方、オバマケア補助金の打ち切りを中心とした社会保障改革、及び高関税を通じた財価格の値上がり等による負担は低中所得者層に集中する可能性があり、足下の消費の二極化が持続する懸念は残る。
金融政策
1月地区連銀経済報告
1月地区連銀経済報告(ベージュブック;1月5日までの情報に基づく)では12地区中8地区で「経済活動は僅かに拡大した」とまとめられた。個人消費を巡っては、大半の地区で年末商戦を背景に緩やかに拡大したほか、「高所得者の消費は高級品、旅行・観光、体験型サービスで堅調だった一方、低中所得者は価格に敏感となり、必需品以外への支出をためらっている」と指摘された。一方、「雇用は概ね変化がなかった」と述べ、複数の地区で臨時労働者が増加し、採用は新たなポジションではなく欠員を埋められるために活用されていると指摘した。また、AIによる雇用への影響は現時点では限定的であり、より大きな影響は直ぐにではなく今後数年内に現れることが見込まれると述べた。他方、「価格は緩やかに上昇した」と言及されたものの、企業は先行きの上昇率が鈍化すると予想している。また、関税によるインフレへの影響を巡っては、複数の企業が関税引き上げ前の在庫が枯渇したために価格転嫁を始める一方、小売業や飲食業では価格に敏感な顧客へのコスト転嫁に消極的な姿勢がみられると指摘した。
パウエル議長の刑事捜査
パウエル議長は1月11日の声明において、司法省がFRBに対して大陪審への召喚状を送付し、FRB本部改修に関する同氏の議会証言(2025年6月)を巡って、刑事訴追の可能性を示唆したことを明らかにした。同氏は「法の支配と民主主義における説明責任を深く尊重する」としたうえで、刑事訴追の脅迫は「自身の議会証言」に基づくものではなく、「FRBが大統領の意向に従うのではなく、米国民にとって最善となる金利設定を行った結果」と述べるなど、政策金利を巡るトランプ大統領とパウエル議長の対立が根底にあることを強調した。
トランプ大統領は自身が捜査を指示したとの見方を否定したほか、14日にはパウエル議長を「解任する予定はない」と述べた。一方、同捜査を巡っては一部の共和党議員からも懸念の声が示されるなど(上院銀行委員会のトム・ティリス氏やケビン・クレイマー氏など)、5月に任期を迎えるパウエル議長の後任指名・承認が円滑に進まない可能性も浮上している。また、ECBやイングランド銀行等の複数の中央銀行が、金融政策の独立性とパウエル議長を支持する共同声明を発表した。
FRB高官発言




前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

