トランプ関税で米製造業の縮小が継続(12月ISM製造業)

~新規受注の回復に遅れ~

桂畑 誠治

要旨
  • 25年12月のISM製造業景気指数(季節調整値)は、47.9(前月48.2)と市場予想中央値の48.4への上昇に反して前月比0.3%ポイント低下し、米製造業部門の縮小ペースが小幅加速したことを示した。国内需要に支えられながらも、関税賦課などトランプ政権の政策による不確実性の高まりやコストの上昇によって、拡大縮小の分岐点である50を10ヵ月連続で小幅下回っており、米国製造業部門の緩やかな縮小継続を示している。
  • 12月の景気指数は、新規受注、雇用が減少幅を縮小したものの、企業の慎重姿勢によって生産が鈍化したほか、悪天候による物流の混乱の影響で在庫が減少幅を拡大したことで、押し下げられた。また、仕入価格指数は高い水準で横ばいとなり、コスト増加圧力が強いままであることが示された。
  • 12月に拡大した業種は、全18業種のうち電気機器・電化製品・電気部品、コンピューター・電子機器の2業種(前月4業種)に減少(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。主要6業種で拡大した業種は、コンピューター・電子機器の1業種と、前月の3業種から減少した。縮小した業種は、アパレル・皮革製品、木材製品、繊維、紙製品、化学製品、印刷・関連サポート活動、非鉄、石油・石炭製品、一次金属、その他製造業、プラスチック・ゴム製品、加工金属、一般機械、食品・飲料・タバコ、輸送機器の15業種(前月11業種)に増加した。なお、家具・同関連は変わらずとなった。
  • 12月のISM製造業景気指数の構成項目別の動向をみると、前月比で、入荷遅延、雇用、新規受注が上昇した一方、在庫、生産が低下した。また、生産、入荷遅延が50を上回ったが、新規受注、雇用、在庫が50を下回り、全体で縮小を示す水準にとどまった。
  • 入荷遅延は、50.8(同49.3)と上昇し、サプライヤーへの納入が遅くなったことが示された。北東部での爆弾低気圧、中西部での猛吹雪、南部での竜巻、西部での豪雨や暴風によって、物流が悪影響を受けた。 また、雇用は、44.9(同44.0)と上昇したが50を下回った水準となり、雇用の減少幅の縮小が示された。雇用の増加した業種は、その他製造業、輸送機器、一般機械の3業種(同2業種)にとどまった。調査対象の63%が自社では依然として採用ではなく人員管理を行っていると回答。事業環境の不透明感の強まりを背景に、レイオフ、自然減、採用凍結を中心とした人員削減が継続されている。 さらに、新規受注は、47.7(前月47.4)と上昇したが縮小を示す水準にとどまっており、需要縮小ペースの鈍化が示された。拡大した業種数は18業種中2業種(同6業種)と減少し、縮小は13業種(同9業種)に増加した。拡大した業種は、電気機器・電化製品・電気部品、コンピューター・電子機器の2業種。縮小は、アパレル・皮革製品、木材製品、非鉄、紙製品、繊維、石油・石炭製品、化学製品、一次金属、その他製造業、加工金属、プラスチック・ゴム製品、一般機械、輸送機器の13業種となった(下線は拡大・縮小が2カ月以上続いたことを示す)。 一方、生産は、51.0(同51.4)と拡大を示す水準で低下、拡大ペースの鈍化が示された。拡大した業種数が4業種(同7業種)に減少し、縮小した業種が9業種(同5業種)と増加した。新規受注、受注残が縮小を示す水準にとどまっており、生産の脆弱な状況が継続している。また、在庫は、45.2(前月48.9)と縮小を示す水準で大幅に低下、不確実性の高いもと企業が慎重な姿勢を強めているほか悪天候による物流の混乱を受け、在庫の縮小ペースが加速した。ただし、在庫の減少や顧客の在庫不足感の強まりを背景に、生産が緩やかな拡大を継続する可能性が高い。
  • インフレの動向を示す仕入価格指数は、58.5(同58.5)と変わらず、コスト増加圧力が強いままであることを示した。商品別では、ポリプロピレン樹脂、ガソリン、燃料、石油、ココア製品が下落した一方、アルミニウム、銅、重要鉱物、電気部品、天然ガス、鉄鋼、メモリ、金属、真鍮等の価格が上昇した。供給不足品では、電子部品、電気部品、労働者、希土類部品が挙げられた。
  • 今後の製造業部門の活動は、①分野別関税で半導体、医薬品、重要鉱物等への関税賦課が予想されるものの、分野別であればインフレへの影響が限定的なものになる可能性が高いこと、②減税や資産価格上昇によって国内需要が堅調に推移すると予想されること、③在庫が低い水準にとどまっていることから、製造業景気指数は26年前半に拡大を示す水準を回復すると見込まれる。
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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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