株高不況 株高不況

トランプ関税でも残しておきたい日銀の7月利上げ説

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月43,000円程度で推移するだろう。(修正検討中)
  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう。
  • 日銀は半年に一度の利上げを続け、2026年1月までに政策金利は1.0%に到達しよう。
  • FEDはFF金利を25年末までに4.0%まで引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
目次

金融市場

  • 前営業日の米国市場は、S&P500が▲4.8%、NASDAQが▲6.0%で引け。VIXは30.0へと上昇。

  • 米金利はカーブ全体で金利低下。予想インフレ率(10年BEI)は2.279%(▲5.9bp)へと低下。

実質金利は1.748%(▲4.3bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は+34.3bpへとプラス幅拡大。

  • 為替はUSDが全面安。USD/JPYは146近傍へと低下。コモディティはWTI原油が67.0㌦(▲4.8㌦)へと低下。銅は9366.5㌦(▲334.0㌦)へと低下。金は3097.0㌦(▲42.9㌦)へと低下。

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注目点

  • 米国は全ての貿易相手国に10%の基本関税を発動した上で、貿易赤字国を中心に相互関税を課し、日本に対しては9日から24%ptを上乗せする。この24%という数値の根拠として米国側の説明は、日本が米国に課している関税率は対米貿易黒字、円安、非関税障壁(特に自動車)を加味すると実質的には46%に相当し、その約半分が適当であるというものであった。事前の予想では、相互関税は(米国の貿易相手国が適用している)平均関税率に応じて決まるとされており、日本のように関税の低い国に対しては穏健な数値になるとみられていた。WTOによると日本の加重平均関税率は1.9%、単純平均で3.7%であったから、24%という数値には驚きを禁じ得なかった。

  • もっとも、米国側が「非関税障壁を加味して算出した」としている関税率はかなり雑な計算であることが明らかになっている。米国が示した関税率は、日本に限らず、全ての国において「貿易赤字額÷輸入額」で算出されており、常識的に理解される関税率とはかけ離れている。この粗い数値にどのような含意があるかは正直なところ解釈が難しいが、交渉の戦略として、高い要求を最初に示しただけの可能性はあるだろう。今回とは別枠(上乗せではない)で25%ptの追加関税が決定されている自動車関税を含め、関税率は何らかの譲歩があると考えるのが自然であろう。

  • 詳細な分析をするまでもなく、4月3日に示された高率関税がそのまま賦課されれば米国内のインフレ率が加速するのは必至。また米国内の生産拠点設立など、サプライチェーン再構築となれば労働需給の逼迫を伴い、インフレが複数年にわたり発生する。昨日の当レポートでも指摘したとおり、そうした環境においてFedは景気後退懸念とインフレ再加速の板挟みとなり、動くに動けない状況に陥るのではないか。

  • 一方の日銀はどう動くだろうか。まず5月1日の利上げ決定は遠のいたと判断される。金融市場が荒れている状況での利上げは、株価下落に拍車をかける可能性が高く、常識的に考えればあり得ない選択であろう。日銀は、政策判断にあたり通商政策の不確実性を注視すると何度も言及してきた経緯があるので、この段階で動く可能性はゼロに近い。

  • もっとも7月31日までに金融市場(≒株価)が好転するのであれば、利上げは十分にあり得ると筆者はみている。特に円安が加速する場合、利上げは現実味を帯びてくるだろう。4月3日から4日にかけてのパニック的な初期反応として、米長期金利の低下と世界的なドル安が発生し、USD/JPYは145円近傍まで急速な円高が進行した。もっとも、もう少し長い目でみれば、米インフレ率の加速を睨んだ米長期金利上昇・ドル高の組み合わせが想定される他、自動車輸出の減少によって日本の対外収支が悪化するとの見方から円売りが加速する可能性もある。USD/JPYが一方的な円高になるとは考えにくい。

  • 日本経済全体として、対米輸出で稼ぐモデルの脆弱性が浮き彫りとなる中、内需拡大の重要性が増してくるのは必至。これまでの常識に基づくと金融引き締めは国内景気を冷やし、賃金・物価を下押しするため、景気後退の脅威が燻ぶる中での利上げは理に適うものではなかった。しかしながら、輸入物価の高止まりが個人消費の足かせとなっている現在の状況における利上げは、通貨安抑制を通じて、個人消費を下支えする可能性がある。また約800兆円の「純」現・預金(現預金から負債を差し引いた額)から得られる利子収入が増加することで、景気にマイナス影響が及ぶどころかプラスに作用する可能性すらある。日銀短観(3月調査)では強烈な人手不足感が示されるなど、インフレ圧力が高まっていること等を踏まえれば、世界景気の不透明感が強まる中においても利上げという選択肢は残るのではないか。

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。