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- 経済分析レポート(Trends)
- 米国経済マンスリー:2025年1月
- 要旨
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- 12月の雇用者数は市場予想を大幅に上回ったほか、10~12月期実質GDPは個人消費を中心に底堅く推移したと見込まれるなど、米国経済は堅調さを維持している。一方、24年6月以降の不法移民流入の減速を背景に、25年初から雇用の増加ペースが鈍化するリスクに警戒が必要だろう。
- 12月の消費者物価指数ではトレンドを示す3か月前比年率のコア指数が+3.3%(+3.7%)と、前月から減速した。財コアの減速や家賃の鈍化トレンドは前向きな展開である一方、その水準は依然目標である+2%を大幅に上回る推移が持続している。
- 1月20日発足のトランプ新政権を巡っては、各種大統領令による今後の具体的な政策方針が注目される。また、閣僚候補の公聴会では、国務長官候補のルビオ上院議員が自由貿易への否定的な見解を示した一方、財務長官候補のベッセント氏はトランプ減税延長の重要性を強調した。

経済指標
- 12月全米供給管理協会(ISM)景況感指数
12月ISM製造業PMIは49.3(11月:48.4)と2か月連続で前月から上昇した。とはいえ、好不況の節目となる50を9か月連続で下回るなど、製造業活動は高金利政策による需要抑制を背景に停滞が持続している。12月の内訳をみると、生産が50.3(46.8)と2か月連続、生産活動に先行する新規受注が52.5(50.4)と4か月連続でそれぞれ上昇した。一方、雇用は45.3(48.1)と2か月振りに低下し、依然50を下回るなど停滞が続いている。他方、12月ISM非製造業PMIは54.1(52.1)と2か月振りに上昇した。好不況の節目となる50を6か月連続で上回るなど、サービス業活動は底堅く推移している。内訳をみると、事業活動が58.2(53.7)、新規受注が54.2(53.7)と上昇し全体を押し上げた一方、雇用は51.4(51.5)と小幅に低下した(詳細は「米国 製造業の回復が近づく(12月ISM製造業)」及び「米国 トランプ関税への懸念を強める企業(12月ISM非製造業)」)。
- 12月雇用統計
12月雇用統計における非農業部門雇用者数は前月差+25.6万人(11月:+21.2万人)と、市場予想(+16.4万人)を大幅に上回った。同時に公表された10月実績は+0.7万人と上方修正、11月実績は-1.5万人と下方修正された結果、3か月移動平均では+17.0万人(+17.0万人)と良好な水準を保つなど、雇用は底堅く推移している。
12月の雇用者数を業種別にみると、医療・社会福祉が+6.95万人(+7.98万人)と人手不足を背景に35か月連続で増加し全体を押し上げた。また、小売は+4.34万人(-2.92万人)、娯楽・飲食・宿泊は+4.3万人(+5.2万人)と消費関連銘柄が堅調さを示したほか、専門・ビジネスサービスが+2.8万人(+0.9万人)、金融が+1.3万人(+1.1万人)と共に前月水準を上回るなど、広範な業種で増加した。一方、製造業は-1.3万人(+2.5万人)と2か月振りに減少するなど、停滞が持続している。他方、政府部門は+3.3万人(+3.0万人)と地方政府の教育部門を中心に雇用拡大が続いている(産業別の雇用動向に関しては2024/6/19付け「米国の雇用増は持続可能か?(需要編)」を参照)。
一方、12月の労働参加率は62.5%(62.5%)と3か月連続で横ばい圏で推移した一方、失業率は4.1%(4.2%)と3か月振りに低下した。失業率は2024年5~7月にかけて3か月連続で上昇し労働市場の急速な悪化懸念が浮上したものの、その後は4%台前半の低水準に留まっている。この間、週平均労働時間は前年比-0.3%(-0.3%)と2か月連続で低下した一方、平均時給は+3.9%(+4.0%)と高水準で推移した。この結果、労働所得(=民間雇用者数×平均労働時間×平均時給)は+5.0%(+5.1%)と、賃金上昇を背景に増加基調で推移している。他方、CPI上昇率を控除した実質賃金は時間当たりで+1.0%(+1.3%)と20か月連続、週当たりでは+0.7%(+0.9%)と19か月連続でそれぞれ増加するなど、減速しつつもインフレの鈍化傾向を背景に堅調な雇用所得環境が持続している(詳細は「米国 労働市場は軟化傾向も堅調さ維持(12月雇用統計)」)。
- 12月消費者物価指数(CPI)
12月消費者物価指数(CPI)は前月比+0.4%(11月:+0.3%)と2か月連続で騰勢を加速した。足下のトレンドを示す3か月前比年率でみると、総合指数が+3.9%(11月:+3.0%)とエネルギー価格上昇を背景に加速した一方、コア指数は+3.3%(+3.7%)と振れを伴いながらも減速傾向にある。12月の内訳を見ると、食品が前月比+0.3%(+0.4%)と果物・野菜や飲料品が下落した一方、エネルギーは+2.6%(0.2%)とガソリン価格を中心に2か月連続で上昇した。この間、食品・エネルギーを除くコアベース指数は+0.2%(+0.3%)と前月から減速した。コアCPIの内訳を見ると、住居費は+0.3%(+0.3%)と前月から横ばい圏で推移した一方、住居費を除くコアCPIは+0.2%(+0.3%)と騰勢を鈍化した。特に財コアは+0.1%(+0.3%)と中古車や家具などの価格下落を背景に減速した。他方、サービス品目では医療サービスや娯楽サービスは減速した一方、航空運賃が大幅に上昇するなど区々の動きとなった。この間前年比でみると、CPI総合は前年比+2.9%(+2.8%)と前月から騰勢を加速した一方、食品・エネルギーを除くコアCPIは+3.2%(+3.3%)と小幅ながら5か月振りに騰勢を鈍化した。先行きのCPIを巡っては、財価格の下落や労働需給緩和による賃金鈍化を背景にインフレ減速が続く可能性が高いものの、堅調な消費需要を背景にサービス価格や家賃が再加速するリスクに警戒が必要だろう(詳細は「米国 コアインフレの緩やかな低下傾向を確認(12月CPI) 」)。
- 12月小売売上高
12月小売売上高は前月比+0.4%(11月:+0.8%)と4か月連続で増加した。米国の消費動向は年末商戦を中心に堅調さを維持している。12月の内訳をみると、自動車・同部品は+0.7%(+3.1%)、家具が+2.3%(+1.3%)と共に4か月連続で増加したほか、家電は+0.4%(+0.9%)、衣料品は+1.5%(-0.8%)、ネット通販などの無店舗小売が+0.2%(+1.7%)と広範な品目で前月水準を上回った。また、ガソリンは+1.5%(+0.2%)と価格上昇を背景に増加した。この結果、GDP算出に用いられるコア小売売上高(自動車・ガソリン・建設材・飲食サービスを除くコントロール・グループ)は+0.7%(+0.4%)と4か月連続で増加し、10~12月期でみても前期比+1.3%(+1.4%)と前期水準を上回るなど、雇用所得環境の改善を背景に増加基調を維持している(詳細は「米国 ヘッドライン下振れも堅調な12月小売売上高」)。
- 12月鉱工業生産
12月鉱工業生産は前月比+0.9%(11月:+0.2%)と2か月連続で上昇した。航空機大手のストライキやハリケーンの影響が収束しつつあるなか、鉱工業生産は緩やかな持ち直しの兆しを示している。12月の内訳を見ると、鉱業が+1.8%(-0.5%)、公益は+2.1%(-0.7%)と共に2か月振りに前月水準を上回った。一方、製造業は+0.6%(+0.4%)と2か月連続で上昇した。12月の内訳を見ると、航空機・その他輸送機器が+6.3%(+0.5%)と、ストライキ収束を背景に大幅に上昇した。また、素材業種では一次金属が+1.7%(-0.3%)、化学が+0.8%(+0.8%)と上昇した一方、加工業種では自動車・同部品が-0.6%(+3.4%)、一般機械が-0.2%(+2.2%)と共に前月の反動もあり低下するなど、区々の動きを示した(詳細は「米国 生産拡大も基調は依然弱い(12月鉱工業生産)」)。
- 12月住宅着工件数
12月住宅着工件数は年率149.9万戸(11月:129.4万戸)と4か月振りに増加した(前月比+15.8%;11月:同-3.7%)。とはいえ、住宅ローン金利の高止まりが需要を抑制する構図は続くと見込まれるほか、1月の住宅着工はロサンゼルス近郊の山火事を背景に一時的に下押しされる可能性に留意が必要である。12月の内訳を見ると、戸建住宅が前月比+3.3%(11月:-9.1%)と西部や中西部を中心に増加した。一方、集合住宅は+61.5%(-30.7%)と前月の反動もあり大幅な上昇を示した。この間、住宅着工に先行する住宅建設許可件数は年率148.3万戸(149.3万戸)と2か月振りに減少したほか、その水準は依然停滞の域を脱していない(詳細は「米国 12月住宅着工は集合の急増を受け予想上振れ」)。
経済見通し
2024年10~12月期実質GDP成長率(2025/1/30公表)を巡っては、1/17時点のアトランタ連銀によるGDPナウキャストが前期比年率+3.0%(7~9月期実績:+3.1%)のプラス成長を見込んでいる。個人消費は実質賃金の上昇を背景に底堅く推移する一方、住宅投資も緩やかな回復を示す可能性が高い。FRBは9月から3会合連続で利下げに踏み切っており、金融政策の転換はこれまで抑制されていた住宅投資や設備投資をけん引するすると期待される。この間、25年1月のミシガン消費者信頼感指数は73.2(24年12月:74.0)と6か月振り、12月のコンファレンスボード消費者信頼感指数は104.7(11月:112.8)と3か月振りにそれぞれ低下したものの、均してみれば改善傾向にある。
先行きの米国景気を巡る懸念要因としては、長引くインフレやローン金利高止まりによる家計購買力の侵食、トランプ新政権における高関税政策や移民抑制策によるインフレ再燃、これに伴う高金利政策の長期化などが挙げられる(詳細は「2025年の米国景気を占う6つの要素」)。これまでの高金利政策の影響を巡っては、2024年7~9月期におけるクレジットカードローンの90日以上延滞率が11.1%(2024年4~6月期:10.9%)と5四半期連続で上昇し2012年1~3月期以来の水準へ達するなど、低所得家計を中心とした債務膨張が個人消費を押し下げるリスクがある。
なお、不法移民の流入はバイデン政権による6月の大統領令(一定の不法越境者が確認された場合、亡命申請を受け入れずにメキシコ等へと即時送還)の発令以降は大幅に減少している。不法入国者(亡命申請者)が正式な労働許可を得るまでには半年程度(亡命申請から150日を経ると労働許可の申請、180日を経るとこれの受け取りがそれぞれ可能)を要するため、24年夏以降の不法入国者の減少は2025年初以降の非農業部門雇用者数の増勢を抑制する可能性がある。これが失業率に与える直接的な影響は限定的に留まるものの、景気減速感が強まる場合、求人数の減少などを通じて労働市場の悪化が顕在化する懸念がある。足下の求人倍率(=求人数/失業者数)は1.1倍前後で推移するなど、雇用市場の過熱感は解消しつつあり、失業率が急上昇するリスクに警戒が必要だろう。
また、トランプ新政権が公約通りの関税引き上げや移民の強制送還へと踏み切る場合、人口流入の鈍化などが成長率を押し下げる要因となる一方、インフレ率は輸入物価上昇や労働力不足を背景に再加速することが懸念される。FRBは9月FOMC以降にようやく利下げサイクルへと転じたものの、当面の政策金利は中立水準(12月SEPにおけるLonger run金利:3.0%)を上回り続けるほか、インフレ再燃懸念から利下げペースがより緩慢に留まるなど、金融政策がより長期にわたって引締め的な水準に留まる可能性が高まっている。金利が高止まりする場合、住宅投資や設備投資の回復も後ずれする形となるだろう。

金融政策
- 1月地区連銀経済報告(ベージュブック)
1月6日時点の情報に基づく1月地区連銀経済報告(ベージュブック)では、全12地区で経済活動が「僅か、或いは緩やかに拡大した」と報告された。個人消費は力強い年末商戦を背景に緩やかに拡大した一方、建設活動は資材コストや調達金利の上昇を背景に総じて減少した。また、製造業では関税引き上げのために在庫を積み増す動きがみられると指摘されている。この間、小売物価はほとんどの地区で小幅に上昇したものの、横ばいまたは下落した例も見られたと述べられた。2025年の景気を巡っては楽観的な見方が悲観的な見方を上回ったものの、幾つかの地区では移民や関税政策の変更が景気に悪影響を与えるとの懸念が示された。なお、同ベージュブックでは1月7日に発生したロサンゼルス近郊の山火事の影響は考慮されていない。


新閣僚候補の公聴会
1月20日に始まるトランプ新政権を巡って、上院での閣僚承認に向けた公聴会が開かれた。15日、外交を担う国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員は「世界に関与し、米国の利益を最優先する」方針を強調した一方、「米国を含む多くの先進国では、国民経済を犠牲にしながら自由貿易をほぼ宗教的に信任している」と保護貿易政策への肯定的な見解を示した。また、16日の公聴会に出席した財務長官候補のベッセント氏は、個人所得税減税を含む「トランプ減税」を延長しない場合(2025年末に失効予定)、約4兆ドルの税負担増により経済に深刻な打撃を招くと主張した。また、米国の財政悪化は「歳入ではなく歳出に問題がある」と述べたものの、著名投資家のイーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)に関しては言及を避けた。他方、高関税政策とインフレの関係性を巡っては、10%の一律関税によってドルが4%増価するとし、こうしたドル高が輸入物価の上昇を抑えると主張した。なお、商務長官候補のルトニック氏の公聴会は書類手続きが完了していないために日程が依然未定である(1月19日時点)。



前田 和馬
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