米国 トランプ関税への懸念を強める企業(12月ISM非製造業)

~ISM景気指数は米経済の堅調さを示す~

桂畑 誠治

要旨
  • 24年12月のISM非製造業景気指数(総合、季節調整値)は、54.1(前月52.1)と前月比2.0%ポイント上昇し、市場予想中央値の53.5(筆者予想54.2)を上回った。拡大した業種数が9業種と前月の14業種から減少した中、金融・保険、芸術・娯楽・レクリエーション、小売業、医療・社会支援、運輸・倉庫、公的部門、宿泊・飲食サービス、卸売業、公益の拡大によって、総合指数は上昇した。堅調な内需の他、トランプ政権による関税引き上げを控え、企業が対応措置を取り始めたことも、企業活動を押し上げた。報告では、多くの業界で全般的に楽観的な見方が示されたものの、トランプ関税に対する多くの懸念が示された。

  • ISM非製造業景気指数は、24年に変動が大きくなったものの、均してみれば、非製造業部門が22年につけたピークから緩やかに低下したことを示した。米国では、製造業部門の調整が長期化するなかで、非製造業部門の拡大ペースの緩やかな鈍化を背景に、秩序だった景気減速を続けているが、米経済は堅調を維持している。

  • 非製造業総合指数の構成項目では、雇用が51.4(前月51.5、前月比▲0.1%ポイント)と低下した一方、活動指数が58.2(前月53.7、前月比+4.5%ポイント)、入荷遅延が52.5(前月49.5、前月比+3.0%ポイント)、新規受注が54.2(前月53.7、前月比+0.5%ポイント)と上昇した。総合指数への寄与度では、雇用が前月比▲0.03%ポイントの押し下げ寄与となった一方、活動指数が前月比+1.13%ポイント、入荷遅延が前月比+0.75%ポイント、新規受注が前月比+0.13%ポイントの押し上げ寄与となった。

  • 雇用では、18業種中9業種(同5業種)が増加した一方、4業種(同5業種)が減少した。採用の凍結を報告した企業がある一方、将来の成長に向けた新規採用を報告した企業などまちまちだった。12 月に雇用の増加を報告した9つの業種は、卸売業、金融・保険、運輸・倉庫、宿泊・飲食サービス、建設業、公的部門、医療・社会支援、公益、小売業。一方、雇用の減少を報告した4つの業種は、不動産・賃貸・リース業、専門・科学・技術サービス、情報、教育サービス。

  • 活動指数では、拡大した業種が18業種中10業種(前月14業種)に減少したが、通常よりも早い発注など、関税引き上げによるサプライチェーンへの影響に対応するための動きが活発化したほか、縮小した業種が2業種(同2業種)にとどまったことで、大幅に上昇した。拡大した業種は、金融・保険、小売業、芸術・娯楽・レクリエーション、宿泊・食品サービス、公益、医療・社会支援、企業向けサービス、卸売業、情報、公的部門と続いた。また、新規受注では拡大した業種が18業種中7業種(前月13業種)に減少し、縮小した業種が5業種(同3業種)と増加するなかで、前月から上昇し高い水準を維持した。芸術・娯楽・レクリエーション、金融・保険、運輸・倉庫、小売業、公的部門、医療・社会扶助、公共事業が大幅に上昇した。さらに、入荷遅延は、サプライヤーが資源の制約や工場での作業負荷の増加等によって、製品の配送が遅れ、上昇した。

  • インフレ関係では、仕入価格指数が64.4(前月58.2)と大幅に上昇したほか、18業種中15業種(前月14業種)で上昇しており、インフレ圧力の再燃が示唆された。アルミニウム製品、一部のディーゼル燃料、家禽製品が下落した一方、労働コストの継続的な上昇のほか、木材、電気部品、牛肉、コンピューター等が上昇した。供給不足の分野として、電気機器、変圧器のほか、建設請負業者等が挙げられた。

  • 米国経済全体の景気動向を示す「ISM総合景気指数(非製造業景気指数と製造業景気指数の合成)」は、12月に53.6(前月51.7)と上昇し、拡大ペースの加速が示された。四半期では、10-12月期の製造業が48.1と7-9月期の47.1を上回ったほか、非製造業が54.1と7-9期の52.6を上回った。この結果、10-12期のISM総合景気指数は、53.5と7-9月期の52.0から上昇しており、10-12月期の米経済が堅調さを維持したことを示している。

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桂畑 誠治

かつらはた せいじ

経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済

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