株価上昇を裏付ける半導体

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月41,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月138程度で推移するだろう。
  • 日銀は、10月に追加利上げを実施するだろう。
  • FEDは6月に利下げを開始、FF金利は年末に4.75%(幅上限)への低下を見込む。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。S&P500は+0.1%、NASDAQは▲0.1%で引け。VIXは13.0へと上昇。

  • 米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.325%(+1.6bp)へと上昇。実質金利は1.874%(▲0.6bp)へと低下。長短金利差(2年10年)は▲42.4bpへとマイナス幅拡大。

  • 為替(G10通貨)はUSDが堅調。USD/JPYは151前半で推移。コモディティはWTI原油が83.2㌦(+1.8㌦)へと上昇。銅は8867.0㌦(+17.5㌦)へと上昇。金は2217.4㌦(+26.8㌦)へと上昇。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ(前日差)
米国 イールドカーブ(前日差)

米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)
米国 名目金利・予想インフレ率・実質金利(10年)

米国 長短金利差(2年10年)
米国 長短金利差(2年10年)

米国 イールドカーブ、イールドカーブ(前日差)、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差
米国 イールドカーブ、イールドカーブ(前日差)、名目金利・予想インフレ率・実質金利、長短金利差

経済指標

  • 2月米中古住宅販売成約指数は前月比+1.6%、前年比▲2.2%と概ね市場予想に一致。この指標が中古住宅販売の実績値に1~2ヶ月程度の先行性を有することに鑑みれば、ひとまず住宅市場は底打ちしたとみられる。

中古住宅販売件数・制約指数
中古住宅販売件数・制約指数

注目点

  • 日本の2月鉱工業生産は自動車生産(前月比▲7.9%)の落ち込みによって減産となったが、引き続き、IT関連財の在庫調整が進展し、同セクターの本格的な増産局面入りが近いことを示した。自動車生産の弱さは一過性であり、先行きは持ち直しが期待される。

  • 2月鉱工業生産は前月比▲0.1%と経産省予測値(+0.8%)を下回り、大幅減産となった1月から更に低下した。これまでの鉱工業生産は、自動車生産が回復基調を維持する中、電子部品・デバイス工業や半導体製造装置の底打ちによって緩やかな増産基調にあったが、1・2月は自動車の大幅減産によって垂直的な低下となった。もっとも、自動車生産の弱さは専ら供給側に起因しており、需要の弱さを反映したものではない。一部メーカーの工場稼働停止(品質管理・地震)に加え、過去数年の供給制約(半導体不足)によって潜在的な需要は豊富に存在しているため、落ち込みの大部分は時間が解決するとみられる。自動車ローン金利の急上昇が足かせとなり販売が頭打ちになっている北米市場はFEDの利下げが追い風となろう。

鉱工業生産指数
鉱工業生産指数

生産 自動車工業
生産 自動車工業

鉱工業生産指数、生産 自動車工業
鉱工業生産指数、生産 自動車工業

米国 新車販売台数
米国 新車販売台数

  • 3月初旬に実施された生産予測調査に基づけば、製造工業の生産計画は3月が前月比+4.9%、4月が+3.3%と増産の見込みが示された。経産省がバイアスを補正した3月の予測値は+4.5%と鋭い反発となっている。輸送機械工業の生産計画は3月に+10.9%、3月に+5.0%と2ヶ月連続の大幅増産が見込まれている。

  • 株式市場と関連の深い電子部品・デバイス工業の生産に目を向けると、2月の生産は前月比+0.2%と小幅ながら増加し、前年比では+3.3%とプラスを維持。ノートPCやスマホの需要が力強さを欠く中、世界半導体売上高は前サイクルの頂点よりも低い水準に甘んじているが、本邦企業においては、在庫調整が進展したことで製品需給は引き締まる方向にある(半導体製造装置も似た構図)。生産計画は3月が+6.6%、4月が+1.1%と連続で増産が見込まれている。

IT関連財 生産
IT関連財 生産

世界半導体売上高
世界半導体売上高

IT関連財 生産、世界半導体売上高
IT関連財 生産、世界半導体売上高

  • 電子部品・デバイス工業は1月に出荷が前年比▲2.1%とマイナス圏に沈んだものの、在庫は▲38.9%と一段と減少。出荷・在庫バランス(両者の前年比差分から算出)は+36.9%と6ヶ月連続でプラス圏推移し、3ヶ月平均でも+31.3%と大きくプラスに突き出た。在庫循環図の位置取りは、左下領域(在庫減・出荷減)を下に突き進んでいる。今後、右下方向(在庫減・出荷増)に推移した後、右上領域(在庫増・出荷増)に進路をとると期待される。

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

電子部品・デバイス工業
電子部品・デバイス工業

  • 長期的に電子部品・デバイス工業の出荷・在庫バランスと日経平均株価は連動性を有してきた。株価指数において半導体を直接手掛ける企業の存在感は必ずしも大きくはないが、半導体製造装置や化学品など「広義半導体」で見ればその存在感は大きく、結果的に日本株全体のうねりを作り出すという構図が背景にある。今後ノートPC・スマホの販売低迷が長期化したり、データセンタ向け投資の抑制が続いたりして需給バランスの好転が遅れる可能性はあるが、AI向け半導体の爆発的需要やコロナ初期局面にあたる2020年に購入されたPCの一部が買い替え期に差し掛かることで、新たな需要が発生することでIT関連財市況は持ち直しが期待される。日本株上昇のエンジンとなった半導体株の躍進は正当化されるだろう。

日経平均・出荷在庫バランス
日経平均・出荷在庫バランス

藤代 宏一


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