2022年・夏のボーナス予測

~前年比+1.2%と増加を予想も、物価上昇には追い付かず~

新家 義貴

  • 民間企業の2022年夏のボーナス支給額を前年比+1.2%と予想する。21年冬のボーナスは前年比+0.1%とほぼ横ばいにとどまったが、夏のボーナスでは伸びが高まるだろう。

  • 背景にあるのは企業業績の改善である。21年度の経常利益は前年比+32.0%と、20年度の大幅な落ち込みから明確に持ち直している(日銀短観ベース)。一度引き上げると削減が難しい月例給与に比べて、ボーナスは業績に応じて比較的柔軟に変動させることが可能であるため、業績さえ良ければ経営側も引き上げへのハードルは高くない。実際、春闘における一時金交渉では増額回答が目立っており、22年のボーナス増加が示唆されている。ベースアップについては、昨年対比改善したものの伸びは限定的なものにとどまったと思われるが、大手企業のボーナスについては比較的はっきりとした増加が見込まれる。

  • 一方で不安が残るのが中小・零細企業である。中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことが多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。その点、資源価格上昇の影響が足元で一段と強まりつつあることは懸念材料だ。中小企業ではコスト増を価格に十分転嫁することは容易ではなく、収益が圧迫される可能性が高いため、ボーナスの伸びも抑制されやすいだろう。前述のとおり大手企業を中心としてボーナスは増加が見込まれるが、中小・零細企業を含めた全体としてみれば、大幅な増加は見込み難い。

  • こうしたなかで懸念されるのが生活必需品価格の上昇だ。エネルギー価格の上昇に加え、足元では食料品価格の値上げが加速しており、22年度の物価上昇率は大きく高まることが予想される(22年3月上旬時点でのエコノミストコンセンサス:+1.51%)。小幅とはいえベースアップが実現し、ボーナスも伸びが高まることで名目賃金については増加が見込まれるものの、それでも賃金の伸びは物価上昇に追い付かない可能性が高く、実質賃金でみればマイナスが予想される。コロナ禍からの持ち直しが期待されている個人消費だが、その期待が裏切られる可能性があることに注意したい。

新家 義貴


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新家 義貴

しんけ よしき

経済調査部・シニアエグゼクティブエコノミスト
担当: 日本経済短期予測

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