工作機械受注が教えてくれる景況感 ~しばらくは増加サイクル~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国市場は小幅下落。NYダウは▲0.4%、S&P500は▲0.2%、NASDAQは▲0.1%で引け。VIXは17.90へと上昇。
  • 米金利カーブはツイスト・フラット化。債券市場の予想インフレ率(10年BEI)は2.326%(▲4.4bp)へと低下し、実質金利は▲0.847%(+0.2bp)へと上昇。最近は予想インフレ率が低下傾向、実質金利は横ばい圏で推移。本日発表の米CPIを受け、こうした傾向がどう変化するか注目。

米国 イールドカーブ、予想インフレ率(10年)、実質金利(10年)
米国 イールドカーブ、予想インフレ率(10年)、実質金利(10年)

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)

米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

  • 為替(G10通貨)はUSDの強さが中位程度。USD/JPYは109後半へと小幅上昇、EUR/USDは1.21後半へと水準を切り下げた。コモディティはWTI原油が70.0㌦(▲0.1㌦)へと低下。銅は9978.5㌦(+14.5㌦)へと上昇。金は1893.2㌦(+1.0㌦)へと上昇。ビットコインは下落。

注目ポイント

  • 昨日発表の5月工作機械受注は、世界的な財需要の強さが続く下、国内外の設備投資意欲が回復しつつあることを裏付けた。受注総額は前年比+140.7%。国内向けが+83.2%、外需が+172.3%と著しい伸びを記録。昨年5月の落ち込みの反動によって強さが誇張されているとはいえ、受注額は4ヶ月連続で1000億円を超え、水準は前サイクルの7合目付近まで回復している。地域別・業種別の詳細は確報を待つ必要があるが、4月までの傾向から判断すると中国と米国向けに、半導体関連(一般機械、電気機械、精密)と自動車関連の需要が増加したとみられる。筆者作成の季節調整値では前月比+3.7%と4ヶ月連続増加。3ヶ月平均でみても+8.5%と基調的な強さが認められている。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

  • 中国側統計でも製造業の設備投資回復が確認されている。固定資産投資は情報通信業の高い伸びが続くなか、自動車の復調が継続し、製造業が全体で持ち直している。今後、サービス消費の復調によって財消費の優先順位が低下し、設備投資も慎重化することも考えられるが、IT関連財については、ある種の構造的需要が拡大しているため、大幅な鈍化は考えにくい。そうした下で工作機械を含め、日本からの資本財輸出は堅調に推移しよう。

中国 固定資産投資、中国 自動車販売台数
中国 固定資産投資、中国 自動車販売台数

中国 固定資産投資
中国 固定資産投資

中国 自動車販売台数
中国 自動車販売台数

  • 工作機械は月あたりの受注額がピーク時でも2000億円に満たない業界規模でありながら、その受注額は世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と密接に連動する。またアナリスト予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有するため、金融市場の行方を考察する際に重宝する。

工作機械受注・OECD指数、工作機械受注
工作機械受注・OECD指数、工作機械受注

工作機械受注・OECD指数
工作機械受注・OECD指数

工作機械受注
工作機械受注

  • サイクルの位置取りを確認するために、縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右上領域を上方向に進んでおり、増加サイクル中盤にあると判断される。過去の経験則に従うなら、今後は回復モメンタムをやや弱めつつも水準を切り上げていく(左上方向へ進む)と予想される。

工作機械受注
工作機械受注

藤代 宏一


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