PMI とISM の強さはしばらく続く可能性

~実際の生産に余力あり~

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株は上昇。NYダウは+0.5%、S&P500は+1.0%、NASDAQは+1.4%で引け。VIXは18.40へと低下。インフレをメインテーマとする相場展開は終わりつつある。
  • 米金利カーブはブル・フラット化傾向。予想インフレ率(10年BEI)は2.460%(+1.3bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.864%(▲3.1bp)へと低下した。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

  • 為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは109前半を割れ、EUR/USDは1.22前半へと上昇。コモディティはWTI原油が66.1㌦(+2.5㌦)へと上昇。銅は9947.0㌦(+65.5㌦)へと上昇。金は1884.5㌦(+7.8㌦)へと上昇。ビットコインは下げ止まり。

注目ポイント

  • 5月米製造業PMIは、過去の常識では持続不可能と考えられるレベルを維持し、生産活動のモメンタムがなお強いことを示唆した。これまでの経験則に鑑みると、そろそろ生産活動のモメンタムが鈍化する頃だが、今次局面が例外的なのは製造業の設備稼働率がコロナパンデミック発生前の水準を下回っており、なお増産の余地が残されていること。生産活動の強さはしばらく続く可能性がある。

  • 5月米製造業PMIは61.5へと上昇し、2007年5月の集計開始以来で最高水準に到達した。内訳は生産(57.2→58.1)と新規受注(61.7→65.3)が高水準から一段と上昇。雇用(55.7→53.3)はやや低下したものの高水準を維持。中間財投入を示す購買品在庫(52.2→55.5)は指数押上げに寄与、サプライヤー納期(75.7→74.9)は異例の高水準からやや低下。自動車とIT関連財が需要好調を維持するなか、経済活動正常化に伴う広範な財需要の回復が重なり、PMIは空前の領域で推移している。この指標は前月との比較を問う形式で集計されるから、指数の上昇は前月比での改善ペースが強まっていることを意味する。

米国 製造業PMI
米国 製造業PMI

  • ここで実際の生産高を把握するために生産統計に目を向けると、実のところPMIが示唆するほど生産活動は盛り上がっておらず、4月の製造業生産の水準は2020年1月をなお1.7%下回っている。半導体不足によって自動車生産が頭打ちになっていることが一因だが、自動車を除いても20年1月水準を1.2%下回っており大勢は変わらない。過去数ヶ月のPMI(ISMも同様)は異常値ともいえる水準で推移し、さながら生産設備がフル操業近い状態にあることを示唆しているが、製造業の設備稼働率は20年1月の水準を回復しておらず、なお余力があることを示している。そうだとすれば今後しばらくは、生産が回復を続ける下で、サーベイ指標が異例の高水準を維持する現在の構図が続く可能性があるだろう。ISMやPMIは金融市場において(実際の生産統計よりも)存在感の強い指標であるから、その高水準維持は投資家の景況感を改善させる。

米国 鉱工業生産、製造業設備稼働率
米国 鉱工業生産、製造業設備稼働率

米国 鉱工業生産
米国 鉱工業生産

米国 製造業設備稼働率
米国 製造業設備稼働率

藤代 宏一


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