安心感のある中国経済指標

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは+0.2%、S&P500は▲0.4%、NASDAQは▲1.0%で引け。VIXは17.0へと上昇。11営業日連続で節目の20を下回った。社債市場はIG債(投資適格)、HY債(投機的格付)が共に堅調。
  • 米金利カーブはベア・スティープ化傾向。予想インフレ率(10年BEI)は2.348%(+2.2bp)へと上昇。債券市場の実質金利は▲0.719%(▲0.4bp)へと低下。過去2週間程度は、予想インフレ率が高止まりするなかで、実質金利が低下する構図となっている。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 予想インフレ率(10年)、実質金利(10年)
米国 予想インフレ率(10年)、実質金利(10年)

米国 予想インフレ率(10年)
米国 予想インフレ率(10年)
米国 実質金利(10年)
米国 実質金利(10年)

  • 為替(G10通貨)はUSD安傾向。USD/JPYは109近傍で一進一退も、EUR/USDは1.20近傍へと上昇。コモディティはWTI原油が63.2㌦(+3.0㌦)へと上昇。銅は9074.5㌦(+175.0㌦)へと上昇。金は1734.9㌦(▲11.3㌦)へと低下。景気の強さを反映する「銅」と安全資産「金」の相対価格は上昇。ビットコインは最高値近辺で推移。

主要通貨の変動率(前日比)、ビットコイン
主要通貨の変動率(前日比)、ビットコイン

主要通貨の変動率(前日比)
主要通貨の変動率(前日比)
ビットコイン
ビットコイン

経済指標

  • 米MBA住宅ローン申請指数は前週比▲3.7%と6週連続の減少。新規購入は▲1.4%と3週連続の減少。モーゲージ金利上昇が影響したとみられ、基調的な弱さが認められている。

MBA住宅ローン申請指数(新規購入)、モーゲージ金利
MBA住宅ローン申請指数(新規購入)、モーゲージ金利

MBA住宅ローン申請指数(新規購入)
MBA住宅ローン申請指数(新規購入)
モーゲージ金利
モーゲージ金利

注目ポイント

  • 昨日発表の機械受注(内閣府)や12日発表の工作機械受注では、海外の旺盛な設備投資意欲が示された。業種別では自動車、半導体関連。地域別では中国を中心とするアジア、米国向けが回復したとみられる。その点、最近の中国経済指標は日本からの輸出、とりわけ資本財輸出がなお底堅く推移することを示唆しており、好感される。

  • 3月中国貿易統計は、春節影響と前年のコロナ影響によって極めて基調が把握しにくかったものの、輸出入共に中国経済の底堅さを示すに十分な強さであった。輸出は前年比+30.6%、地域別では米国向けが前年比+53.3%、それ以外の地域向けが+27.1%と強く伸びた。北米航路を中心とするコンテナ船運賃の急騰は、米国経済の回復も去ることながら、中国国内の生産活動の強さを物語っている。輸入も前年比+38.1%とすこぶる強かった。生産の先行指標として注目される銅の輸入(数量ベース)は前年比+25.0%、筆者作成の季節調整値で前月比+11.7%と強く伸びた。銅の輸入量は20年夏頃に爆発的増加を記録した後、低下基調を辿っていたが、ここへ来て再び加速している。製造業PMIは挽回生産の一服もあってか、やや低下基調にあるものの、それでも50は明確に上回っている。

中国 輸入、銅輸入(数量)
中国 輸入、銅輸入(数量)

中国 輸入
中国 輸入
中国 銅輸入(数量)
中国 銅輸入(数量)

コンテナ船運賃指数、中国 製造業PMI(Markit)
コンテナ船運賃指数、中国 製造業PMI(Markit)

コンテナ船運賃指数
コンテナ船運賃指数
中国 製造業PMI(Markit)
中国 製造業PMI(Markit)

  • そうした生産の底堅さに対応した固定資産投資の拡大基調も好感される(3月分はGDP等と共に明日16日に発表される)。長らく投資が抑制されていた自動車は20年央に底打ちし、足もとでは前年比+16.1%へとプラス圏に浮上。世界的なIT関連財需要の高まりを受けてコンピュータ・通信機器・電子機器は+54.5%へと伸びを高め、製造業全体では前年比+40%に届く勢いで増加している。自動車、IT関連財の需要堅調が日本企業の輸出環境改善に大きく貢献することを踏まえれば、中国国内の投資は日本企業の業績拡大ドライバーとしての役割が期待される。

中国 固定資産投資、自動車販売台数
中国 固定資産投資、自動車販売台数

中国 固定資産投資
中国 固定資産投資
中国 自動車販売台数
中国 自動車販売台数

実質輸出(日本→中国)
実質輸出(日本→中国)

藤代 宏一


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。