1.強い工作機械受注&悪くない機械受注 2.公表前に賞味期限が切れていた“前年の裏”

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均は先行き12ヶ月30,000程度で推移するだろう。
  • USD/JPYは先行き12ヶ月113程度で推移するだろう。
  • 日銀は、現在のYCCを長期にわたって維持するだろう。
  • FEDは、2022年前半に資産購入の減額を開始するだろう。
目次

金融市場

  • 前日の米国株はまちまち。NYダウは▲0.2%、S&P500は+0.3%、NASDAQは+1.1%で引け。J&Jのワクチン接種停止との報道が嫌気される場面もあった。VIXは16.7へと低下。20を下回るのは10営業日連続。社債市場はIG債(投資適格)、HY債(投機的格付)が共に軟調。
  • 米金利カーブは10年ゾーンまでブル・フラット化。警戒感のあった30年債入札を通過すると金利低下に拍車。米3月CPIは上昇加速が事前に織り込まれていたこともあり金利上昇イベントにはならなかった。予想インフレ率(10年BEI)は2.326%(▲1.0bp)へと低下し、債券市場の実質金利は▲0.715%(▲4.2bp)へと低下。

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ
米国 イールドカーブ

  • 為替(G10通貨)はUSD安傾向。米金利低下に沿ってUSD/JPYは109近傍へと低下、EUR/USDは1.19半ばへと上昇。コモディティはWTI原油が60.2㌦(+0.5㌦)へと上昇し、銅は8899.5㌦(+38.5㌦)へと上昇。金は1746.2㌦(+15.0㌦)へと上昇。景気の強さを反映する「銅」と安全資産「金」の相対価格は上昇。ビットコインは上昇。

主要通貨の変動率(前日比)
主要通貨の変動率(前日比)

経済指標

  • 米3月CPIは予想比やや強め。総合CPIは前月比+0.6%、前年比+2.6%へと上昇加速。エネルギーが前月比+5.0%と大幅に加速。食料とエネルギーを除いたコアCPIは前年比+1.6%へと加速。コア財が前月比+0.1%の上昇に留まった反面、コアサービスが+0.4%と強く伸びた。宿泊設備は前月比+3.8%と7ヶ月ぶりに上昇。コロナからの回復を象徴した。

米国 CPI
米国 CPI

米国 CPI
米国 CPI
米国 CPI
米国 CPI

  • 4月のコアCPI前年比はベースエフェクトによって一段と加速が予想される。前月比+0.2%で延伸すると前年比伸び率は+2.2~2.3%へと到達する。物価水準は依然としてパンデミックがなかった場合に実現していたであろう水準を下回っているが、ペントアップデマンド発現と給付金効果が相まって個人消費は加速する公算が大きく、そうした下で財・サービスともに上昇が続く可能性が高い。なお、CPIを大きく下押ししているのは家賃であるが、それを除いた系列は前月比+0.8%、前年比+3.1%と著しい伸びを示している。今後、大都市へと回帰する動きなどから家賃が回復傾向を強めると、全体の物価に相応のインパクトを与えるだろう。

米国 コアCPI/米国 CPI 除く家賃
米国 コアCPI/米国 CPI 除く家賃

米国 コアCPI
米国 コアCPI
米国 CPI 除く家賃
米国 CPI 除く家賃

注目ポイント

  • 本日内閣府から公表された2月機械受注は予想比ネガティブ。他方、12日発表の3月工作機械受注はポジティブな結果であった。前者は驚くほど弱かったが、この指標は季節調整の難しさなどから振れが大きく単月での評価には限界があるため、過去数か月の上向きトレンドが終わったと判断するのは早計だろう。日銀短観の設備投資計画が底堅さを示していたこともあり、次月の結果を待ちたい。後者はこれまでの増加トレンド持続が確認できた。
  • 2月のコア機械受注は前月比▲8.5%と2ヶ月連続の減少。3ヶ月平均でも▲2.6%と7ヶ月ぶりにマイナス。製造業と非製造業が共に弱く、日銀短観で示された設備投資計画と符合しない結果であった。3ヶ月平均では化学、運輸・郵便業、通信業、卸売・小売業などで弱さが認められている。
  • 他方、資本財輸出の先行指標である「外需」は前月比+76.2%とスパイク。3ヶ月でも+29.8%と大幅増加。中国、米国における自動車販売の強さ、世界的な半導体需要の強さが背景にある。

機械受注
機械受注

機械受注
機械受注
機械受注
機械受注

  • 株式市場との関連が深い「電子計算機等」は前月比▲2.8%と2ヶ月連続マイナスも、3ヶ月平均では+1.1%と5ヶ月連続の増加。水準は前サイクルのピークを上回り、IT関連財需要の強さを物語っている。「電子計算機等」の大部分を占める半導体製造装置の引き合いが強く、特に海外向けの伸びが著しい。この指標は日経平均株価との連動性が強いだけに、受注好調は心強い。

機械受注 電子計算機等
機械受注 電子計算機等

機械受注 電子計算機等
機械受注 電子計算機等
電子計算機等(機械受注)・日経平均
電子計算機等(機械受注)・日経平均

  • 3月工作機械受注は前年比+65.0%へと伸びを高めた。国内向けが+18.7%と、2018年11月以来の前年比プラス。外需は+101.8%へと急増。筆者作成の季節調整値では全体が前月比+6.1%、国内向けが+7.6%、外需が+7.6%であった。業種・地域別詳細は確報を待つ必要があるが、これまでの傾向から判断して中国、米国、アジア向けが伸びたとみられる。
  • この指標は世界経済の包括的指標であるOECD景気先行指数と密接に連動するほか、アナリスト予想(TOPIX予想EPS)とも一定の連動性を有するため、金融市場の行方を占う際に重宝する。

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注
工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注
工作機械受注

工作機械受注・OECD指数
工作機械受注・OECD指数
工作機械受注
工作機械受注

  • サイクルの位置取りを確認するために、縦軸に工作機械受注の水準(36ヶ月平均からの乖離)、横軸に方向感(6ヶ月前比)をとった循環図をみると、現在は右下領域を上方向に進んでおり、20年央に底打ちした様子が見て取れる。過去のサイクルに従うなら、今後は回復モメンタムをやや弱めつつも水準を切り上げていくと予想される。

工作機械受注
工作機械受注

藤代 宏一


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