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シフト管理生成AIの衝撃

~もう悩まない!今日から使えるシフト管理の世界~

柏村 祐

目次

1.シフト管理作成の難しさ

シフト管理は、企業等が従業員の勤務日や勤務時間を調整し計画する業務で、勤務形態に応じて、効率的かつ公平に勤務スケジュールを作成することを主な目的としている。労働力の有効活用に資するだけでなく、従業員の満足度を高める意味でも重要な役割を果たしている。

近年、働き方の多様化に伴いシフト管理はより複雑になっている。フルタイムだけでなくパートタイムやフレックスタイムなど勤務形態が多様化し、従業員一人ひとりの働きたい時間や日数は異なっている。また、労働力不足の影響もあり、短時間で働きたい人を効果的に活用することが求められるケースもある。それらを1つの勤務スケジュールにまとめるのは容易なことではない。

スタッフの個々のニーズに合わせてシフトを組むことは時間と労力を要する作業である。たとえば、筆者の知り合いであるクリニックの院長は、スタッフの相性や働く時間の不平等が生じないよう考慮しながらスケジュールを自分で作成しており、これに多くの時間を要している。また、小売業、飲食業、製造業など、シフトワークが基本の業種では、従業員の多様な勤務希望に応えることが難しい場合もあり、しばしば労働者の不満の原因となる。

このようにシフト管理の要素は多岐にわたるが、最近ではプログラミングやITの専門知識がなくてもその課題を解消してくれるAIが登場している。このAIは、必要なスキル、勤務時間、従業員の希望などを考慮して、最適なシフトを自動生成する。これにより、労働者と企業双方のニーズに応えつつ、スケジュール作成の効率を大幅に向上させることができる。

本稿では、このシフト管理AIを用いて実際にシフト管理表を作成し、その価値について考察する。

2.シフト管理生成AIの実態

以下では、医療事務担当者のシフトスケジュールを効率的に生成するAIの開発過程と使用方法に焦点を当てる。このAIの開発には、OpenAIが開発した先進的な自然言語処理モデル「ChatGPT」を活用した。ChatGPTは、大量のテキストデータから学習し、複雑な言語パターンを理解する能力をもつ。AIを構築するためには、まずシフト管理生成AIの名称、役割、使用方法を入力する。今回このAIの名称を「クリニックシフトアシスタント」とし、役割を「クリニックのパートタイムスタッフのシフト管理を効率的に作成すること」、使用方法を「午前9時から午後5時までの常時2人体制のクリニックで、パート従業員のシフト管理表を作成する。各従業員のシフト時間を明確に表示し、医療事務スタッフのスキルレベルに注意を払い、スキルレベルの低いスタッフが2人同時に勤務しないよう配慮する。また、スタッフ間の相性を考慮し、相性の悪いスタッフが一緒にならないよう配慮する」と定めた。

クリニック院長の話によると、この使用方法を採用したのは、医療事務スキルが低いスタッフだけが勤務すると患者対応に支障が出る可能性があることに加え、スタッフ間の相性も重要なためである。上記により開発された「クリニックシフトアシスタント」は、直ちに利用可能となった。

図表1
図表1

次に、生成されたクリニックシフトアシスタントの実際の活用状況を確認する。この場合、15名のスタッフを設定し、それぞれの氏名、勤務可能時間、スキル、相性については図表2の通りとした。

図表2
図表2

この情報をクリニックシフトアシスタントに読み込ませた上で、「来週のシフトスケジュールを作成してください」との指示を出したところ、図表3のように、午前9時から午後5時までの営業時間内で、スタッフの勤務可能時間、スキルレベル、相性を考慮し、常に2人体制を維持するシフトスケジュールを作成した。

図表3
図表3

以上、シフト管理生成AIの実践的な活用を検証した結果、この技術がクリニックなどの職場におけるシフト管理の大幅な改善をもたらす可能性が高いことが明らかになった。従業員の勤務可能時間、スキルレベル、相性など複数の要素を総合的に考慮することで、効率的かつ公平なシフトスケジュールの作成が可能となっている。特に、医療事務のような専門性を要求される職場では、スキルレベルのバランスを考慮することが非常に重要である。このAI技術により、従業員の満足度を向上させるとともに、業務の質も維持できることが期待される。

3.シフト管理生成AIの可能性

シフト管理生成AIは、その柔軟性と効率性において非常に大きな可能性をもつ。先に述べたように、シフト管理の作成は多くの要素を考慮する必要があり、これを人間が手作業で行うのは大きな労力がかかる。しかしながらAIを利用することで、従業員の個々のニーズやスキル、勤務可能時間、さらには相性までを総合的に考慮し、最適なシフトスケジュールを迅速に作成することができる。そのため、より客観的かつ効率的なスケジュールを作成することが可能となる。

既に市販されているシフト管理アプリも存在するが、設定が難しい側面があることは否定できない。多くのアプリは煩雑な設定や複雑な操作が必要であり、ユーザーにとって大きな負担となる。しかし、シフト管理生成AIは、名称、役割、使用方法を簡単な文章として入力するだけで、即座に利用を開始できる設計となっている。この利便性は、特に技術的な専門知識をもたないユーザーや多忙な管理者にとって、大きなメリットである。

さらに、技術進歩により、シフト管理生成AIはさらに高度な機能をもつようになることが予想される。たとえば、従業員の健康状態やストレスレベルを考慮したシフト作成、季節や天候・イベントなどの外部要因に基づく柔軟なシフト調整など、より複雑な要素を取り入れたスケジューリングが可能になるかもしれない。これらが実現すれば、従業員の満足度はもちろん、業務の生産性や効率性の向上にも大きく寄与するだろう。

このように、シフト管理生成AIは、従業員の働きやすさと企業の運営効率の両面で大きなメリットをもたらす可能性を秘めている。しかし、その一方で、個々の従業員の勤務時間やスキル、相性などのセンシティブな個人情報を扱うため、情報漏洩や悪用のリスクが存在する。そのため、データの暗号化やアクセス制限など、技術面と運用面の両方からプライバシー保護に万全を期することが欠かせない。併せて、従業員に対する説明責任と同意手続きの確立など、適切な個人情報管理の仕組みづくりが重要な課題となる。今後は、それらの側面も十分に考慮し、適切なガイドラインを設ける必要がある。このような対応を取ることで、シフト管理生成AIの可能性がさらに大きく広がることが期待される。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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