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AIアバターの衝撃

~自分の分身となるバーチャルITアナリストをつくってみた~

柏村 祐

目次

1.AIアバターとは 

AIアバターは、人工知能に基づく仮想の存在である。

このテクノロジーは、テキストや画像、音声などのデータを分析したうえで人間のように対話する能力を有し、多岐にわたる用途で活用されている。たとえば、企業のカスタマーサポートにおいて24時間体制で顧客の問題解決を支援したり、教育分野では学習支援や言語学習のパートナーとして活躍している。また、エンターテインメント業界では、映画やゲームのキャラクターとしてリアルタイムのインタラクションを提供している。

かつてAIアバターの作成には高度な専門知識が必要であったが、現在では対話形式のインターフェースを通じて簡単に作成できるようになっている。専門知識やプログラミングスキルがなくても、ユーザーは自分のニーズに合わせてデータを提供し、AIを訓練することで独自のAIアバターを構築できるようになっている。

このレポートでは、AIアバターの作成プロセスとその可能性を詳しく検討する。

2.AIアバターの実態

まず、AIアバターの具体的な作成方法に焦点を当てる。筆者の研究テーマであるテクノロジー分野におけるAIアバターとして、自分の分身ともいえるバーチャルITアナリストに注目する。バーチャルITアナリストの役割は、最新のITトレンドやテクノロジー関連の分析を行い、専門的な知識を分かりやすく伝え、ユーザーの意思決定をサポートすることである。このようなバーチャルITアナリストは、技術的な知識をもつ専門家と非専門家の間の情報のギャップを埋めることを目指している。

バーチャルITアナリストの創造プロセスは、AIアバターを創るナビゲーターとの対話を通じて進められる。開発画面にアクセスすると、AIアバターナビゲーターが「こんにちは!新しい GPT(注1)の構築をお手伝いします。新製品のビジュアル生成を支援するクリエーターを担当してください、コードのフォーマットを支援してくれるソフトウェアエンジニアを担当してください、などと作りたいものを指示してください。何を作りたいですか?」との問いがあり、筆者は「バーチャルITアナリスト柏村を作りたい」と回答した。

AIアバターナビゲーターは、筆者の回答に基づいて、創られるAIアバターの名前を「Virtual IT Analyst Kashiwamura」とし、さらに、AIアバターのプロフィール画像、目標、役割、立場を設定した。これらは、AIアバターがユーザーにどう認識され、どのように機能するかを決定するため重要である。プロフィール画像は、AIアバターの視覚的なアイデンティティを形成し、ユーザーとの相互作用において信頼感や親近感を生み出す。一方、AIアバターの目標や役割、立場は、AIが提供する情報の種類やその提供方法を規定し、ユーザーとの対話におけるAIの視点や意見を示す。

AIアバターに必要な知識の情報源としては、筆者がすでに発信している過去のレポート全件が用いられた。これにより、AIアバターはVirtual IT Analyst Kashiwamuraとして創り出され、専門的なIT分析を提供することが可能になった(図表1)。

図表1
図表1

創られたVirtual IT Analyst Kashiwamuraに対して、「シンガポールの交通情報のDXについて教えて」と質問したところ、筆者自身がアップロードした過去のレポート内容の情報に基づき、交通システムの改善、データ活用の進化、アプリケーションとサービス、未来の展望を重要な点として挙げ、それぞれについて解説した(図表2)。

図表2
図表2

次に、Virtual IT Analyst Kashiwamuraに対して、「エストニアの電子投票制度について教えてください」と質問したところ、筆者がアップロードしたファイル情報に基づき、エストニアが2005年に世界で初めて電子投票を導入した国であるといった概要や電子投票制度に関する内容を解説した(図表3)

図表3
図表3

以上のように、AIアバターは、直感的なインターフェースとユーザーフレンドリーな操作性を備え、特別なプログラミングスキルや深い技術的理解を必要とせずに、カスタマイズされたAIモデルを構築した。これにより、ユーザーは自分の特定の要件や興味に合わせて、AIを設計し、訓練することができる。

3.AIアバターの未来と可能性

AIアバターの開発は複雑で困難な作業であるが、技術進歩により、専門知識やプログラミングスキルがなくても、対話形式のインターフェースを通じてAIアバターを創ることが可能になっている。その結果、個人や企業は、特定の要件に合わせてAIを設計し、活用できる。たとえば、バーチャルITアナリストの創造は、この進化の一例である。これらのアバターは、専門知識のないユーザーでも、自分の問題を解決するためのカスタマイズされたAIソリューションを開発する手助けとなる。

これらのAIアバターは、誰でもAIを使える社会を促進し、技術的障壁を低減する。そしてその活用が進めば、多様な業界でのイノベーションを促進し、新しいビジネスモデルやサービスの創出を可能にするだろう。さらに、ビジネスプロセスの効率化、顧客サービスの改善、新しい市場の創出など、経済にも大きな影響を与えるようになると予測される。

このように、AIアバターの進化・普及は、より多くの人にその技術へのアクセスを促し、新しい創造的な可能性を開くことになる。これは、社会のあらゆる分野での革新を促進し、未来の世界を形作る重要な要素となるだろう。

【注釈】

  1. GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、OpenAIによって開発された大規模な言語モデルである。これは、テキストを生成し理解するために、大量のテキストデータから学習する。GPTモデルは、質問への回答、テキストの要約、翻訳、さらにはクリエイティブな文章の作成など、多様な言語関連タスクに使われる。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員
専⾨分野: テクノロジー、DX、イノベーション

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