【1分解説】財政検証とは?

平岡 一弘

  音声解説

財政検証とは、政府が原則として5年ごとに作成する国民年金・厚生年金の財政に係る現況及び見通しのことです。前回の財政検証は2019年、次回は2024年になります。

公的年金制度は長期的な制度であり、人口、労働力、経済成長などの社会・経済の変化を踏まえ、年金数理に基づいて長期的な財政の健全性を定期的に検証することは不可欠です。実際には財政状態に応じ調整された年金額の水準を見ることで財政の検証としています。

前回の財政検証では、検証時点で61.7%の所得代替率(現役世代の収入とモデル世帯の厚生年金の比率)が、経済成長と労働参加が進むケースでは50%以上を維持する一方、低成長の場合などは2040年代半ばに50%を割り込む財政水準との予測が示されました。

同時に社会保障審議会の議論を踏まえたオプション試算では、

①厚生年金の適用拡大は、所得代替率や基礎年金の水準確保に効果が大きい 

②就労期間・加入期間の延長、繰下げ受給の選択は年金の水準確保に効果が大きい 

などが確認され、一部政策にも反映されています。
 

岸田政権の「資産所得倍増プラン」の第二の柱となるiDeCo(個人型確定拠出年金)の改革は、2024年の財政検証に併せて結論を得るとしています。このように財政検証は公的年金制度の健全性診断機能に加え、年金制度全体の検討に欠かせない基礎資料にもなっています。

この解説は2023年7月時点の情報に基づいたものです。

平岡 一弘


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