【1分解説】成年後見制度とは?

城石 和秀

  音声解説

成年後見制度とは、認知症や知的障害等のため財産管理や契約締結等の法律行為を一人で行うことが難しい人を法的に保護し、その意思を尊重しながら支援することを目的にした制度です。

かつては禁治産制度がありましたが、これは家族の財産を守るという側面が強く、本人の生活状況等への配慮が不十分との批判がありました。そこで、1999年12月の民法改正により成年後見制度に改められ、療養看護等に関する事務や財産管理における本人の意思の尊重、生活状況等への配慮が条文に明記されるなどの改善が図られました。しかし、政府や有識者の間では、普及はまだ不十分とみられています。

普及が進まない理由としては、制度が周知されていないことのほか、「親族ではなく、事情を知らない弁護士等の専門職が後見人に選任される」「財産処分の制限のため、自宅を処分して高齢者施設に入居することはもちろん、孫にお小遣いを与えることさえできなくなる」等の懸念が持たれていることが挙げられます。担い手からは、煩雑な報告事務等も問題といわれています。なお、国際連合の「障害者の権利に関する委員会」は、昨年10月、現行制度は障害者の権利を守っていないと指摘しています。

制度のあり方については、現在、政府の専門家会議で議論が進められていますが、以上の問題の方向感は、まだみえていないのが現状です。

図表1
図表1

この解説は2023年7月時点の情報に基づいたものです。

城石 和秀


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