Withコロナの地域ブランディング(2)

~独自のコンテンツをアップデートする(鹿児島県大崎町)~

稲垣 円

目次

感染力が強いと言われる変異株の影響が広がっている。

未だ回復や収束への視点は定まらないが、自治体としては当面の感染対策はさることながら、制約がある中で地域の価値や存在意義をいかに高めて、そして形にしていくか、地域なりの方法を確立していなかければならない。ある種の折り合いをつけながら、コロナ後を見据えた戦略を立てることが出来るかが鍵となる。

本稿では前回(Withコロナの地域ブランディング(1))に引き続き、感染拡大下での地域ブランディングに関する取り組みを紹介する。

1.リサイクル率日本一のまち

鹿児島県大崎町は、20年以上にわたって住民主導によるごみの分別を行い、再資源化に取り組んできた(取り組みの詳細は「『燃えるごみ』がないまちの話①」、「『燃えるごみ』がないまちの話②」を参照のこと)。町民、行政、企業が協働した取り組みの成果として、リサイクル率は8割を超え(2019年時点の全国平均は19.6%)、12年連続「リサイクル率日本一」の記録を達成している。2018年12月には、第2回「ジャパンSDGsアワード」内閣官房長官賞を、自治体としては唯一受賞するという快挙を成し遂げた。2019年には政府からSDGs未来都市に選出されている。

この取り組みをさらに発展させようと、2021年4月に循環型社会を目指し、サーキュラーヴィレッジ構想を掲げ、鹿児島県内の企業や団体と「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会」を設立している。

2.感染拡大で戦略が一変

大崎町は、このリサイクルの仕組み「大崎リサイクルシステム」について学ぶことを目的に、県外・国外の企業や自治体、学生等の研修や視察、インターンなどをこれまで年間84件受け入れてきた。役場の担当職員が、大崎システムが出来上がるまでの経緯、ごみ回収やリサイクルの現場を解説しながら一つ一つ現地を巡る。人口約1万3千人の町にとって、受け入れの負担は少なくなかったが、「大崎リサイクルシステム」を町内外の多くの企業、自治体、学生、専門家等に伝えていくことは、すなわち大崎町のブランドを確立することでもあり、力を入れていた。

しかし、この取り組みを本格化して、体系的にまとめる準備を進めてきたところで、新型コロナウイルス感染拡大により状況は一転した。全国的に移動が制限され、研修の受け入れも困難な状況に陥ったのだ。そこで一般社団法人大崎町SDGs推進協議会が始めたのがオンラインツアーだ。

3.コロナ禍で生まれた「OSAKINI ツアーズ」

きっかけは、感染拡大が続く2020年9月。ある非営利団体から、先進事例の研修先として大崎町に声がかかり、行政主導でオンラインでの「大崎リサイクルシステム」の研修に取り組むことになった。大崎町を実際に訪問しているかのような雰囲気を出すために、鹿児島空港から大崎町までの移動の様子から、大崎町内でリサイクルが行われるすべての行程(ごみステーションでのごみ分別~回収~リサイクルセンターでの分別~埋め立て)を映像に収め、グリーンバックを設えたスタジオを設置、研修当日は、役場の担当者が案内人として現地にいるかのように臨場感ある映像と共に大崎リサイクルシステムを解説した。

グリーンバックを使った特設スタジオ
写真 1 グリーンバックを使った特設スタジオ
グリーンバックを使った特設スタジオ
写真 1 グリーンバックを使った特設スタジオ

(一社)大崎町SDGs推進協議会提供

OSAKINIツアーズの様子
写真 2 OSAKINIツアーズの様子
OSAKINIツアーズの様子
写真 2 OSAKINIツアーズの様子

(一社)大崎町SDGs推進協議会提供

2021年4月以降、大崎町SDGs推進協議会が企画・主催するオンラインツアーは、「OSAKINI ツアーズβ版」としてコンテンツを一新した。通常開催や企業研修を含め3回実施し、延べ70名が参加した。バーチャルで観光地を巡るツアーではなく、大崎町のリサイクルのしくみ(「大崎リサイクルシステム」)や循環型社会を学ぶコンテンツとして、企業の社会貢献や環境、SDGsの実践を担当する部署、自治体、NPO、学生、マスコミなどからの参加がメインだ。現地を訪れる研修では丸1日(場合によっては複数日)かけて要所を巡って説明や体験をしてもらうプログラムだが、オンラインでは伝えたい内容をコンパクトに厳選して伝えることができ、コンテンツ制作にかかる人員は、現地の研修に比べるとかなり抑えられている。また、終了後はツアー参加者が時間を置かずにブログやWEBメディアなどで様子を発信してくれるため「大崎リサイクルシステム」のPRとしても効果的であることが徐々にわかってきた。

4.まずはコンテンツの見直し。そしてオンラインの体験とリアルの体験の融合

これまで地域ブランディングといえば、まずは現地に来てもらって関係を深めること(そのためにイベントの開催や映像コンテンツで話題づくりをするなど)が基本的な戦略だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、私たちの暮らしのあらゆる場面でのオンライン化が加速した。気ままに訪れ、現地で想定してなかった偶然の出会いや出来事などを期待することが難しい中では、独自のコンテンツを開発し、オンラインならではの密なやり取りを通じて関係を深める、その次のステップとしてリアルの訪問に結び付けていく・・・といった、これまでとは逆の関係づくりが求められるようになる。

そして、オンラインでのやり取りが主流になるほどに、リアルに訪れることの意味や価値がより問われるようになる、ことも忘れてはならない。リアルの場では、オンラインで得た経験を裏切らない、それ以上の価値を提供しなければならないだろう。改めて地域資源や価値を問い直し、誰に向けて、何を行うのか、誰と行うのか、どのように見せていくかといった綿密な戦略が必要になる。その意味では、途上ではあるものの、大崎町の取り組みは、「大崎リサイクルシステム」という確立されたコンテンツをオンラインへと発展させて、リアルとの両輪で進めていこうとする取り組みとして参考になる。

今後の課題は、こうしたオンライン事業をいかに収益化するかという点だろう。地域固有の魅力や価値を再定義したコンテンツを磨きあげ、「代替でない」リアルとのデュアル化が、さまざまな領域で求められていくのではないだろうか。

稲垣 円

稲垣 円

いながき みつ

ライフデザイン研究部 主任研究員
専⾨分野: コミュニティ、住民自治、ソーシャルキャピタル、地域医療

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