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- 時評『2026年のスタートと60年の変化』
2026年がスタートする。新たな年は、十二支では午(うま)、十干(じっかん)では丙(ひのえ)、合わせた干支(えと)は60年ぶりの丙午(ひのえうま)である。ご案内のように干支は60年で一周し、還暦のもととなっている。
今から60年前の1966年は、ベトナム戦争が拡大、中国で文化大革命開始という世界情勢の下、日本は前年の昭和40年不況(オリンピック後不況、山一への日銀特融)を脱し、景気は長期成長となる「いざなぎ景気」へと本格的にスタートを切った年である。この年の実質GDP成長率は10.2%、総人口は1億人に迫った。まさに高度成長の最中、成長真っ盛りの社会であった。
一方、丙午はかつて、迷信(この年生まれの女性は気性が激しく夫を不幸にする)により出産を回避する人々が増え、1906年も1966年も出生数が激減した経験がある。統計の明確な1966年のデータでは、出生数は1965年から25.4%減少して136万人になり、合計特殊出生率も前年の2.14から1.58に急低下し、成長真っ盛りの社会に大きなインパクトを与えた。60年後の現在はどうか。2024年の出生数は初めて70万人を下回り68万6000人強となり、合計特殊出生率は1.15と少子化の流れはすさまじい水準となっている。60年前の丙午を吹き飛ばすほどに出生数は低下が明確な状況だ。
マーケットはどうか。相場の格言では、「辰巳天井、午尻下がり」とされるが、60年に一度の丙午では、丙も午も「火の陽」に属し、「火の気が重なり、勢いとエネルギーに満ち、活動的になる年」とされる。このため、「丙午は大相場の始まり」ともいわれ、1966年は1970年まで続くいざなぎ景気下の株価上昇の起点となったが、単年度の日経平均は高値と安値で17%弱も変動する不安定な年であった。2026年も大相場への起点となることを期待したいが、AI相場に湧いてきた近時の超強気相場が大きな調整なく継続成長するのかは確信が持てない。AI実需の勝ち組は定まっておらず、マーケットの動きは不安定な国際情勢も含め、一つのきっかけで大きな調整が生じる余地がある。
現在、日本経済は長きにわたるデフレ状況から脱却し、30年ぶりのインフレ経済となっているが、人口減少は潜在成長率の長期低迷をもたらし、実質GDP成長率は0-1%程度というのが多くの分析である。60年後の丙午、2086年は、人口動態推計によれば、出生中位推計で総人口は74百万人超である。60年後の人口推計はさすがに各種前提で大きく変動しうるが、現在の子供の数からかなり正確な推計となる30年後の2056年の総人口は99.6百万人と初めて1億人を割り、0-14歳が9.5百万人、15-64歳(生産年齢人口)が52.6百万人、65歳以上が37.4百万人とされている。生産年齢人口は30年で20百万人減少する計算だ(以上、国立社会保障・人口問題研究所推計)。
国力低下の流れを断ち切るには、言い古されていることだが、第一に労働力減少を補う劇的インパクトでのAI(フィジカルAI他)活用と外国人材の秩序ある活躍、第二に全要素生産性を大幅に向上させるためのイノベーションや高付加価値産業の強化・拡大が中核となろう。高市政権による「日本成長戦略本部」が掲げる17戦略分野の強化、それに資する資源配分・支援が強く望まれるとともに、担い手の民間企業のリスクテイク意欲が不可欠である。AIの初期開発では遅れを取った日本であるが、0から1を生み出すのが今一つ得意でなくとも、古来、1を磨きこんで10にすることには長けており、今後のAI実践活用での期待もある。
2026年が新たなトレンドの出発点となることを切に希望している。
寺本 秀雄
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。