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DXの視点『AIが暗記や計算を代替する時代に何を学ぶべきか』

柏村 祐

ChatGPTをはじめとする生成AIが世界的に注目を集めている。そのような生成AIの普及は、教育分野にも大きな影響を与える可能性がある。本稿では、生成AIが有する暗記や計算能力を概観しつつ、生成AI時代に求められる教育のあり方について考察する。

生成AIは、数学や英語など学生が日常学んでいる基本的な問題から、司法試験のような国家資格試験に出題される高度な問題まで、あらゆるレベルの問題を解析し、回答する能力をもっている。ここでは、基本的な問題と専門的な知識を必要とする難易度の高い試験問題の2つの事例を用いて、生成AIの能力を検証していく。

まず、基本的な問題に対する回答能力を確認すべく、中学生レベルの数学問題を作成し、生成AIに解かせてみた。「辺の長さが3cmの正方形の対角線の長さを求めよ」と生成AIに質問した。すると、生成AIはピタゴラスの定理を用いることで問題を解くことができると説明し、正解である「約4.24cm」という回答を出力した。次に、司法試験を始めとする高度な専門知識を必要とする問題に対する生成AIの実力を検証する。最新の生成AIモデルの一つであるGPT-4は、マルチモーダルモデルと称され、文章や数式だけでなく、図表や画像の読解や解析の能力を有している。OpenAI社の検証によると、米国司法試験の模擬試験においては、一世代前の生成AIモデルであるGPT-3.5においては受験者の下位10%前後のスコアであったものが、最新の生成AIモデルであるGPT-4においては受験者の上位10%程度のスコアとなった。この最新モデルは、米国司法試験のみならず、数学、医学、物理、経済学、統計、プログラミングといった幅広い分野において能力が発揮されている。また、多くの試験問題においては、合格レベルのパフォーマンスを達成していることも確認されている。

生成AIの進化は、教育現場に大きな変化をもたらすことが予想される。教育者、学校、政府が連携し、生成AIの利点を最大限活用しながら、人間にしかできない能力開発や教育の質の向上に努めることが、今後の教育改革の鍵となる。教育機関は、生成AIをうまく活用しつつ、従来の教育方法とのバランスを保ちながら、学生がもつ独自の才能や能力を引き出す新しい教育プログラムを考案することが求められる。また、教育現場での生成AIの活用に関するガイドラインやルール作りも、今後の課題となるだろう。加えて、学生の創造性、共感力、倫理的判断といった能力を向上させるためには、教師自身の能力向上も求められる。たとえば、教師自らが創造性を高めるための行動として、アートや音楽、ダンス、演劇などの芸術分野での活動に参加することや、共感力を高めるためにボランティア活動や社会貢献活動に参加し、他人の状況を身近に感じることなども一案だ。また、倫理的判断能力を高めるために、ディベートや意見交換を通じて、異なる視点や価値観を理解し、自分の考えを明確化する訓練も有効だろう。生成AIを学習に活用する流れは止められないだろう。教育機関は、生成AIの登場を受けて、教育のあり方やその存在意義を再考するべきである。また、生成AIの能力や可能性を見極め、迅速に次世代の教育カリキュラムへアップデートすることが、日本の未来を支える学生の能力開発において重要だといえるであろう。

柏村 祐


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