よく分かる!経済のツボ『コロナ禍の中で株価が高いのはなぜ?』

小池 理人

新型コロナで企業業績は悪化も、株価は高値圏を維持

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業業績が大きく悪化する中で、株価は大きく反発し、コロナ前の水準にまで戻しています(資料1)。企業業績が低迷する中で、なぜ株価が回復し、高値圏での動きを維持しているのでしょうか。

日経平均株価と経常利益の推移
日経平均株価と経常利益の推移

世界的な金融緩和と日銀による巨額のETF購入

株価が高値を維持できている理由として、主に世界的な金融緩和が挙げられます。

コロナウイルスの感染拡大に伴う急速な景気悪化への対応策として、各国は大規模な財政支出や金融緩和政策を実施し、その結果として資金供給量は大きく増加しました(資料2)。大量に供給された資金は金融市場に流れ込み、世界的に資産価格が上昇しやすい環境が醸成されています。

日米欧のマネーストック(M2)の推移
日米欧のマネーストック(M2)の推移

特に、日本では日本銀行によるETFの購入も株価を押し上げる要因となっています。日本銀行は2010年からリスクプレミアムを縮小することを目的とした多様な金融資産買入れを開始しています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う株価急落時には、単月で1兆円を超えるETFの購入が行われ、足もとでのETFの累計購入金額は30兆円を超える水準に達しています。株価は需要と供給のバランスによって決定されるため、巨大な買い手の存在は、株価を下支えする要因となっています。

日本銀行によるETF購入額
日本銀行によるETF購入額

以上のように、現在のような高値圏での株価の推移は、政策要因による影響が強まっていることが大きな要因の一つであると考えられます。株価とは、会社の持分である株式についた価格であり、企業業績等の実体経済と乖離した株価は、政策要因が消失した際に急落するリスクをはらんでいます。

足もとでは、欧米における感染の再拡大に伴い、株価に強い下押し圧力がかかっていますが、今後も株価は下支えされるのか、コロナ禍が去った後の金融政策の正常化は軟着陸できるのか。コロナ禍の中でますます株価への注目が高まります。

小池 理人


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