インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

ブラジル中銀、3回連続且つ大幅利上げでルラ政権の政策に「警鐘」

~ルラ政権の財政運営がインフレ悪化を招くとの警戒感を露わに、追加利上げの可能性にも言及~

西濵 徹

要旨
  • ブラジル中銀は、10~11日の日程で開催した定例会合で3会合連続の利上げに動くとともに、利上げ幅を100bpに拡大して政策金利を12.25%とする決定を行った。足下のインフレは食料インフレの動き、ルラ政権の下での財政悪化を警戒したレアル安、景気の堅調さや雇用回復も重なり底入れの動きを強めている。さらに、ルラ政権が先月末に歳出削減案を公表したが、同時に公表した所得税改正案に金融市場は失望してレアル相場は最安値を更新するなど輸入インフレ懸念が高まっている。よって、金融市場では中銀の利上げは既定路線とみられるも利上げ幅に注目が集まるなかで、前回会合から利上げ幅を倍増させた。中銀はインフレの上振れリスクを警戒するとともに、政府が公表した所得税改正案がさらなる上振れを招く懸念に言及している。その上で、今後も2会合は同程度(100bp)の追加利上げに含みを持たせている。足下のレアル相場は中国の政策転換を好感する向きをみせるが、その行方は不透明な上、今後は中銀とルラ政権の対立が強まる懸念もくすぶるなか、先行きも上値が抑えられる展開が続く可能性に要注意である。

ブラジル中銀は、10~11日に開催した定例の金融政策委員会(COPOM)において政策金利(Selic)を3会合連続の利上げに動くとともに、利上げ幅を100bpに拡大して12.25%と丸1年ぶりの水準とする決定を行うなど一段と『タカ派』姿勢を強めている。ブラジルでは、インフレ率が一昨年半ばに一時18年ぶりの高水準となるなど物価高に直面したが、商品高の一巡、中銀による累計1175bpもの大幅利上げやそれに伴う実質金利(政策金利-インフレ率)のプラス拡大による投資妙味の拡大を受けた通貨レアル高も重なり、その後のインフレは頭打ちに転じた。さらに、物価高と金利高の共存により景気は頭打ちの動きを強めてインフレ鈍化が促されたため、中銀は昨年一転して利下げに動くなど景気下支えに舵を切るも、累計325bpの利下げに留まるなど慎重姿勢を維持してきた。この背景には、昨年発足したルラ政権がバラ撒き志向を強めるなか、ボルソナロ前政権下で黒字に転じたプライマリー収支は再び赤字に転じるなど財政状況が悪化しているほか、ルラ政権が中銀に対して利下げを要求するなど『圧力』を掛ける動きをみせてきたことも影響している(注1)。事実、昨年こそ投資妙味の高さを理由にレアル相場は堅調な推移をみせるも、年明け以降はルラ政権によるバラ撒きを警戒してレアル相場は一転頭打ちの動きを強め、中銀は急変動を抑えるべく為替介入に追い込まれるなど状況は大きく変化してきた(注2)。また、頭打ちの動きを強めたインフレは昨年半ばを境に底打ちに転じており、足下では4月以降に同国南部で発生した大洪水のほか、異常気象の頻発も重なり食料インフレの動きが顕在化するとともに、インフレ鈍化や利下げを追い風に足下の景気は底入れの動きを強めるなか(注3)、雇用回復の動きも重なるなかで幅広くインフレ圧力が強まる動きがみられる。よって、中銀は9月の定例会合で利上げに動くなど利下げ局面は一巡したほか、先月の定例会合でも2会合連続の利上げに加え、利上げ幅を拡大させる動きをみせたものの、直近11月のインフレ率は前年比+4.87%と中銀目標(3±1.5%)の上限を上回るとともに、コアインフレ率も銅+3.84%と中央値を上回る推移をみせるなどインフレ圧力が強まる動きがみられる。そして、ルラ政権は金融市場で強まるレアル安の動きに対抗すべく、歳出削減に動く方針を示してきたものの、先月末に公表した案では向こう2年で総額700億レアル(GDP比0.6%)の歳出削減に動く一方、同時に公表した所得税改正案で課税最低限の大幅引き上げに動く方針を示し、昨年に自ら嵌めた財政運営を巡る『タガ』となる財政規則法(歳出の伸びを歳入の伸びの7割以下、その範囲もインフレ率+0.6~2.5%に留めるほか、目標が達成不可能な場合は歳出の伸びを歳入の伸びの5割に制限するもの)の実現性低下が懸念されている(注4)。公的債務残高は拡大ペースを強めるなか、その後のレアル相場は折からの米ドル高の動きも相俟って調整の動きが加速して最安値を更新するなど輸入インフレが警戒される事態に直面している。したがって、来月に次期総裁に就任するガリポロ氏は先行きの政策運営を巡って、より長期に亘って引き締め姿勢の強い政策運営が必要とされると述べるなどタカ派姿勢をみせた(注5)。こうしたことから、中銀が一段の利上げに動くのは既定路線となる一方、その利上げ幅に注目が集まってきたなか、先月の前回会合時点(50bp)から利上げ幅を倍増させるなどタカ派傾斜を強めた格好である。会合後に公表した声明文では、物価動向を巡って「前回会合時点に比べてシナリオを巡るリスクは高まるとともに、依然としてリスクは上向きに傾いている」との認識を示した上で、上振れリスクに「①インフレ期待の固定化の一段の長期化、②需給ギャップのプラス化に伴うサービスインフレの想定以上の上振れ、③内外の経済政策や持続的なレアル安に伴うインフレへの影響」を挙げている。その上で、上述したルラ政権による歳出削減案と所得税改正案を巡って「金融政策や資産価格に与える影響を注視しており、資産価格とインフレ期待、レアル相場などを通じてインフレ動向のさらなる悪化を招く要因になる」との見方を示している。そして、先行きの政策運営について「シナリオが想定通りに進めば今後2会合も同規模(100bp)のさらなる調節が行われると予想される」とするなど、一段の利上げに含みを持たせる考えをみせている。足下のレアル相場を巡っては、中国による政策転換への期待を受けた原油をはじめとする商品市況の底打ちを好感する動きをみせているものの(注6)、現状は期待先行感が強く、その行方については見通せない状況にある。財政運営を巡る不透明さに加え、今後もルラ政権は中銀に利下げを要求する可能性が高まるなど対立の懸念もくすぶることに鑑みれば、レアル相場は上値が抑えられる可能性に留意する必要がある。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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