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2026.07.24
新興国経済
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南ア準備銀行、事前予想に反して金利据え置き、ランド相場はどうなる?
~物価上昇の一方で景気減速を懸念、金融引き締めが後手に回る可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- SARB(南ア準備銀行)は7月会合で政策金利を7.00%に据え置いた。南ア経済の低成長やインフレ鈍化を背景に金融緩和を進めてきたが、イラン情勢を受けた原油高でインフレ圧力が高まり、目標を上回る伸びに加速したため、金融市場では追加利上げ観測が強まっていた。
- 声明では、イラン情勢による不透明感やエネルギー価格上昇を警戒しつつも、景気減速懸念も強いため、景気と物価の板挟みの状況を理由に据え置きを決定した。あわせて、2026年のインフレ見通しを下方修正し、成長率見通しを上方修正するとともに、年内は政策金利を概ね据え置く方針を示した。
- 一方、ランド相場はイラン情勢を背景とするドル高に加え、金価格の下落も重なる形で上値が重くなっている。SARBが今回、インフレリスクを認識しながら利上げに慎重な姿勢を維持したことで、金融引き締めが後手に回るとの見方が広がる可能性がある。このため、当面はランド相場の重い展開が続くと見込まれる。
南アフリカ準備銀行(SARB)は、7月23日に開催した定例の金融政策委員会で、政策金利を7.00%に据え置くことを決定した。SARBは、2024年9月にコロナ禍後初の利下げに舵を切り、その後も一時休止を挟みながら断続的に利下げを実施し、金融緩和を進めてきた。背景には、南アフリカ経済の成長率が2023年(+0.8%)、2024年(+0.5%)、2025年(+1.1%)と、他の主要新興国と比較して見劣りしていることがある。さらに、2024年以降のインフレ率は鈍化し、SARBが定める目標のレンジ内で推移したことも、断続的な利下げを後押しした。しかし、イラン情勢の悪化を受けた原油高の進行により、そうした環境は大きく変化している。
4月のインフレ率は前年比+4.0%と目標レンジ(2~4%)の上限に達するなど、インフレ圧力の高まりが確認されたため、SARBは5月の定例会合で約3年ぶりとなる利上げを決定した。その後は、米国とイランの停戦合意を受けて原油高の動きに一服感が出たものの、6月のインフレ率は前年比+5.0%、コアインフレ率も同+4.1%と、ともに目標レンジを上回る伸びとなった(図1)。さらに、足元ではイラン情勢が再びエスカレートして原油価格も上昇しており、インフレ圧力が一段と強まる可能性が高まっている。このため、事前の金融市場ではSARBが2会合連続の利上げに動くとの見方が広がっていた。

会合後に公表した声明文では、今回の決定が「4(据え置き)対2(25bpの利上げ)」と、5月会合の「4(25bpの利上げ)対2(据え置き)」から票が逆転したことが明らかにされた。そのうえで、足元の状況について「イラン情勢は不安定な段階に入った」としつつ、世界経済について「サプライチェーンの混乱による悪影響の一方、AI(人工知能)ブームが投資を活発化させている」として「全体として景気と物価の見通しは前回会合時点からほぼ変わっていない」との見方を示した。一方で、同国経済は「1-3月は想定を上回ったものの、内需は弱いなかで純輸出が押し上げたもの」としたうえで、「先行きは鈍化の動きを強めると予想される」との見通しを示した。そして、「家計部門はエネルギー価格の上昇に直面しており、不透明感の高まりが投資活動の足かせとなっている」、「政府部門の機能不全も景気の足かせとなっている」ものの、「先行きはイラン情勢の悪影響が後退して景気回復が進む」との見方を示しつつ、「見通しは極めて不透明である」とした。
判断に当たっては、景気の下振れリスクが懸念される一方で物価の上振れリスクが懸念されるとして、「中銀は困難な板挟みに直面しており、物価上昇が進む一方で需要が低迷する最悪の状況にある」との認識を示した。しかし、最新の見通しでは、2026年のインフレ率を+4.0%と従来見通し(+4.4%)から下方修正する一方、経済成長率を+1.4%と従来見通し(+1.2%)から上方修正するとともに、四半期予測モデルに基づけば「年内の政策金利はおおむね横ばいで推移すると見込まれる」として、現行の金融政策スタンスを維持する考えを示した。先行きの政策運営に当たって「インフレ率を長期的に目標(3%)に安定させることであり、その実現に向けて必要な措置を講じる」との考えをあらためて示した。
金融市場では、2025年以降の金価格が上昇したことを追い風に、通貨ランド相場は堅調に推移してきた(図2)。その後は、イラン情勢の悪化を受けた「有事のドル買い」のほか、金価格がピークから3割近く下落したこともランド相場の重石となってきた。先行きは、新興国の中銀を中心に外貨準備における金需要の根強さはあるものの、イラン情勢を巡る不透明感が金相場の上昇を抑制する可能性は残る。さらに、インフレリスクを意識しているにもかかわらず、SARBが利上げに慎重な姿勢を示したことは、金融引き締めが後手に回るとの見方につながるとみられ、ランド相場は当面、上値の重い展開が続く可能性がある。

西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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