インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

トルコ中銀、イラン情勢の再燃で様子見姿勢を維持

~原油高と異常気象の物価への影響、リラ相場も見通しが立たない展開が続くか~

西濵 徹

要旨
  • トルコ中銀は7月23日の会合で、政策金利を37.00%に据え置くことを決定した。2024年12月以降、リラ相場の安定を受けて断続的に利下げを進めてきたが、イラン情勢悪化に伴う原油高がインフレ見通しを悪化させたため、3月会合以降は様子見姿勢を継続している。最新の四半期インフレ報告では、先行きのインフレ見通しを上方修正した。エネルギーコスト上昇に加え、リラ安による輸入物価上昇、最低賃金の引き上げが、インフレ高止まりの要因となっている。6月のインフレ率は前年比+32.11%にやや鈍化したが、足元ではイラン情勢が再びエスカレートしており、先行きに対する不透明感が強まっている。
  • 声明では、6月のインフレ鈍化を認めつつ7月の上昇を見込み、地政学リスクの物価・経済活動・期待への影響を注視する姿勢を示した。内需の弱含みを認める一方、インフレ目標達成までの引き締めスタンス維持を強調し、上振れリスクへの高い警戒感や必要に応じた再利上げの可能性にも言及するなど、前回会合に続き「タカ派」的な内容となった。リラ相場は対ドルで最安値を更新しているが、資本規制と為替介入で変動幅は抑制されている。イラン情勢の再燃により原油高が一段と進行する可能性のほか、エルニーニョ現象による農業生産への悪影響も懸念材料となる。実体経済への下押しリスクも意識され、リラ相場の好転は見通しにくく、金融政策運営は引き続き困難な局面が続くであろう。
目次

【イラン情勢による原油価格上昇を受けて中銀は様子見姿勢を維持】

トルコ中央銀行は、7月23日に開催した定例の金融政策委員会で、政策金利である1週間物レポ金利を4会合連続で37.00%に据え置くことを決定した。トルコのインフレ率は、2024年半ば以降鈍化してきた。このため、中銀は2024年12月に現在の経済チームの下で初めての利下げに踏み切った。2025年には政治混乱によるリラ相場の急落に直面し、中銀は通貨防衛のための利上げを余儀なくされたものの、その後はリラ相場が落ち着きを取り戻したことを受けて金融緩和に転じ、2026年1月まで断続的に利下げを実施した。

しかし、イラン情勢の悪化による原油高を受けて、物価を取り巻く環境は変化している。トルコは原油や天然ガスなどエネルギー資源を輸入に依存しており、原油高はエネルギー価格の上昇に加え、対外収支の悪化を招くことが懸念される。金融市場では、対外収支の悪化を警戒したリラ安が続いており、足元の対ドル相場は1年前に比べて約14%下落するなど、輸入物価を押し上げている。加えて、政府は高止まりするインフレによる国民生活への影響を軽減すべく、1月から最低賃金を27%と大幅に引き上げたため、インフレが高止まりすることも懸念された。

中銀は5月に公表した四半期のインフレ報告において、2026年末時点のインフレ見通しを16%から24%、2027年末時点のインフレ見通しも9%から15%に引き上げたうえで、2028年末時点のインフレ見通しを9%に設定したことを明らかにした。中銀はその理由として、イラン情勢によるエネルギー価格の上昇リスクを挙げ、短期的にその影響が顕著に続くとの見方を示した。事実、2024年半ばを境に鈍化したインフレはここ数ヵ月加速に転じており、中銀は3月会合以降様子見姿勢を維持してきた。原油高の一巡を追い風に、6月のインフレ率は前年同月比+32.11%と前月(同+32.61%)から鈍化したものの(図1)、足元ではイラン情勢が再びエスカレートし、原油価格も上昇しており、先行きの物価の不透明感が高まっている。このため、中銀は4会合連続の金利据え置きを決定し、様子見姿勢を維持したと考えられる。

図表
図表

【原油高とエルニーニョによる経済への影響に懸念、先行きもリラ安が続くか】

会合後に公表した声明文では、物価動向について「6月のインフレ率はわずかに低下したが、7月は一時的な上昇が見込まれる」としたうえで、「地政学リスクが物価、経済活動、期待を通じて物価見通しに与える影響を注視する」との考えを示した。一方で、経済動向について「内需が弱含む動きが続いていることを裏付けている」との見方を示した。

そのうえで、先行きの政策運営について「需要動向やリラ相場、インフレ期待を通じた物価安定を実現するまで引き締めスタンスを維持する」との従来姿勢を維持した。政策運営についても「インフレ見通しと実績、基調的な動きを勘案して決定する」、「会合ごとにインフレ見通しを注視しつつ慎重に見直す」とし、「インフレ見通しが目標から大きく乖離した場合には、必要に応じて引き締め姿勢を強める」、「インフレの上振れリスクに引き続き高い注意を払っている」と、前回会合に続いて再利上げに動く可能性をあらためて強調した。

また、「信用市場や預金市場で予期せぬ事態が発生した場合は、流動性を巡る状況を注視しつつ、マクロプルーデンス政策を強化する」と従来からの考えを繰り返した。そのうえで、「インフレ目標の実現に向けて、入手可能なデータに基づく透明性の高い枠組みの下で必要な環境整備を図るべく政策決定を行う」との考えをあらためて示している。声明文は、過去3会合の内容をほぼ踏襲した。しかし、4月と5月会合と同様に、インフレの上振れリスクに対する警戒感を強調するなど「タカ派」姿勢を強めている。

足元のリラ相場は、引き続き対ドルで最安値を更新する展開となっている(図2)。なお、当局による実質的な資本規制に加え、断続的な為替介入によりリラの変動幅は抑えられている。しかし、足元ではイラン情勢が再びエスカレートしており、ホルムズ海峡のみならず、バブ・エル・マンデブ海峡を巡る情勢も悪化しており、原油高が一段と進行する可能性も高まっている。加えて、トルコでは、エルニーニョ現象に伴う気象の不安定化が作付け時期や病害のリスクを高めるなど、農業生産への悪影響が食料インフレを招く可能性も高まっている。実体経済への悪影響も懸念されるなか、先行きもリラ相場の好転は見通しにくい展開が続くとともに、金融政策の舵取りも困難が続くと見込まれる。

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ