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2024.12.05
新興国経済
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ブラジル、景気底入れ確認で中銀は一段のタカ派傾斜が不可避か
~食料インフレ、レアル安、内需の堅調さがインフレ要因となるなか、中銀と政府の対立再燃にも懸念~
西濵 徹
- 要旨
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- ここ数年のブラジル経済は、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなってきたが、一昨年半ばを境にインフレは頭打ちに転じ、中銀も昨年後半以降利下げに動くなど、そうした状況は変化してきた。こうした動きを反映して年明け以降の景気は底入れしており、7-9月の実質GDP成長率も前期比年率+3.70%と内需をけん引役に堅調な動きをみせている。他方、洪水被害の影響による食料インフレに加え、堅調な内需を追い風に足下のインフレは底打ちに転じており、中銀は再利上げを余儀なくされている。ルラ政権の財政運営への懸念を理由に通貨レアルは最安値を更新するなど輸入インフレも警戒され、堅調な景気が確認されたことも重なり、中銀は一段の引き締めに動く可能性は高まる。ただし、低金利政策を求めるルラ政権との対立が再燃することも予想され、そうした事情がレアル相場の重石となる可能性にも留意する必要がある。
ここ数年のブラジルでは、物価高と金利高の共存が経済成長のけん引役である家計消費など内需の足かせとなるとともに、世界経済を巡る不透明感やそうした懸念を受けた商品市況の調整の動きも重なる形で外需も勢いを欠くなど、他の新興国などと比べて景気は勢いの乏しい推移をみせてきた。しかし、商品高の一巡を受けて一昨年半ばを境にインフレは頭打ちに転じるとともに、その後も中銀は引き締め姿勢を維持したことで実質金利(政策金利-インフレ率)はプラス幅が拡大するなど、投資妙味の高さを追い風とする資金流入の動きを反映してレアル相場も堅調な推移をみせた。さらに、インフレは中銀目標への収束が見込まれたことを受けて、中銀は昨年8月以降に漸進的な利下げに舵を切るなど景気下支えに動くなど、景気の追い風になることが期待された。事実、昨年後半の成長率はほぼゼロ近傍で推移する展開が続いたものの、年明け以降は家計消費や企業部門による設備投資の動きが活発化するとともに、景気も底入れの動きを強める展開をみせている。7-9月の実質GDP成長率も前期比年率+3.70%と前期(同+5.65%)からペースは鈍化するもプラス成長で推移するとともに、中期的な基調を示す前年同期比ベースでは+4.1%と前期(同+3.3%)から加速して6四半期ぶりの高い伸びとなるなど、底入れの動きを強めている。なお、年明け以降のレアル相場は一転して調整に転じるなど輸出競争力の向上に繋がる動きがみられるものの、中国の景気減速などが重石となる形で輸出は減少するなど、外需は景気の足を引っ張る動きをみせている。他方、足下のインフレは底打ちに転じるも、過去数年に比べて落ち着いた推移をみせているほか、昨年来の利下げに伴う債務負担軽減も重なり、家計消費は堅調な動きをみせるとともに、企業部門による設備投資も同様に拡大するなど、内需の堅調さが景気底入れの動きをけん引している。さらに、同国は4月以降に各地で大雨に伴う大洪水が発生するなど史上最大の水害に見舞われたが、その復興需要の発現を反映する形で公共投資が進捗して固定資本投資を下支えするとともに、政府消費も押し上げられる形で足下の景気を下支えしている。分野別の生産動向を巡っても、内需の堅調さを反映してサービス業の生産は引き続き堅調な推移をみせるとともに、製造業や建設業、鉱業部門の生産にも底堅い動きがみられる一方、洪水被害の影響が長引くなかで農林漁業関連の生産は引き続き減少傾向で推移しており、先行きは供給懸念が食料品などの物価上昇を招く可能性に留意する必要がある。また、上述のように足下のインフレは底打ちに転じていることを受けて、中銀は9月の定例会合で再び利上げに動くとともに、先月の定例会合でも2会合連続の利上げに加え、利上げ幅を拡大させるなど『タカ派』姿勢を強めている(注1)。しかし、足下では洪水被害の影響で食料品など生活必需品を中心に物価上昇圧力が強まる動きがみられる。こうした状況に加えて、国際金融市場においては米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高の動きが再燃しており、折からルラ政権によるバラ撒き志向を反映して財政状況が悪化するなか、ルラ政権が先月末に歳出削減案に併せて公表した所得税改革を巡って財政運営に対する不透明感を引き起こすなど『失望』を招いており、レアル相場は最安値を更新している(注2)。よって、輸入インフレ圧力の高まりを受けてインフレ圧力が増幅される可能性も高まるなか、年明けに就任する中銀のガリポロ次期総裁は先行きの金融政策について、長期に亘って引き締め政策を堅持する意向を示す考えをみせている(注3)。さらに、上述のように足下の景気が内需をけん引役に底入れの動きを強めていることが確認されたことを受けて、中銀は物価安定を図るべくタカ派姿勢を一段と強めることが予想されるとともに、低金利政策を求めるルラ大統領などとの対立が再燃することによりレアル相場の重石となる可能性に留意する必要があろう。



注1 11月12日付レポート「ブラジル・レアル、中銀のタカ派傾斜も相場の重石となる材料は山積」
注2 11月29日付レポート「金融市場はブラジルの税制改正に「失望」、レアル相場は最安値更新」
注3 12月3日付レポート「ブラジル中銀・ガリポロ次期総裁、タカ派堅持示唆もレアル相場は」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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