怒りの毎日指値オペ  出口戦略は海外金利が安定している時に

藤代 宏一

  • 日銀は金融政策の現状維持を決定。ごく一部の市場参加者は引き締め方向の政策修正を見込み、また少数の市場関係者はフォワードガイダンスの修正を予想していたが、日銀はそうした観測を徹底的に潰すかのように、現行の金融緩和を継続していく姿勢をより強く示した。政策変更という位置付けではなかったが「連続指値オペの運用の明確化」と銘を打ち、指値オペを毎営業日実施する方針を示した。

  • エネルギー価格上昇を主因にコアCPIが(携帯電話通信料を除いたベースで)2%近傍へと切り上がるなか、悪い円安論が盛り上がり、それに対処すべく緩和策を修正するとの観測が一部で浮上していた。一方で、黒田総裁は「円安は日本経済にとってプラス」との見解を固持し、22日のコロンビア大学主催の講演においても「いまの金融緩和を継続する必要がある」として、緩和修正観測を否定していた。今回の措置はYCCの修正観測を封じ込める意図が明白に伝わる。物価上昇の質を重視する黒田総裁が任期満了を迎えるまでは、賃金上昇を伴った内生的な物価上昇が実現しない限り、日銀が緩和策を修正する可能性は低そうだ。

  • 展望レポートでは2022年度の物価見通しが従来の+1.1%から+1.9%へと引き上げられた。2023年度は+1.1%で据え置かれ、今回新たに公表された2024年度は+1.1%となり、2023年度対比横ばいであった。生鮮食品とエネルギーを除いた物価は2022年度が0.9%、2023年度が+1.2%、2024年度が+1.5%とされた。

  • 筆者は黒田総裁の任期満了後、YCCの操作対象年限を5年に短縮する可能性があるとみている。その際の環境としては、もちろん景気がある程度持ち直していることが重要であるが、10年金利のコントロールを止める以上、より重要な要素になってくるのは海外金利の安定であろう。現在のように主要中銀が引き締め方向へ舵を切る環境は、日銀の「便乗引き締め」を容易にする一方、海外金利上昇の余波で日本の10年金利の急上昇を招く恐れがある。この点を重視すれば、海外中銀の引き締めが終わっている局面の方が、容易に出口戦略に着手できると考えられる。

藤代 宏一


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