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AIが予測する米中“145%vs125%”超関税戦争の行方

~まだら模様の世界経済と日本企業の針路~

柏村 祐

目次

1.超高関税時代の幕開け

2025年4月13日、米中経済関係は、常識を超えた関税率の応酬と、不可解な政策の揺り戻しが交錯する、前代未聞の混沌状態に突入した。トランプ米国大統領は、4月9日に「相互関税」を発動、中国からの輸入品に累計104%という関税を課したかと思えば、翌10日には一部措置の90日間停止を発表する一方で、税率そのものを145%へと引き上げる動きを見せた。これは、単なる保護主義や交渉術の域を遥かに超え、予測不能な政治的衝動が経済合理性を駆逐した危険な兆候と言わざるを得ない。

この米国の挑発に対し、中国は即座に「最後まで戦う」と応じ、4月11日には対米報復関税を125%に引き上げると発表、翌12日からこれを正式に適用開始した。両国が互いに100%を超える関税を課し合うという、経済学の想定を超えた頂上決戦は、世界の貿易システムを麻痺させ、グローバル経済を深刻な危機へと陥れている。

このような複雑かつ不安定な状況下では、表面的な情報に一喜一憂することなく、深層にある構造変化とリスクの本質を見極める必要がある。本レポートでは、この矛盾と混沌に満ちた最新状況をAIで分析し、今後蓋然性の高い複数のシナリオとその確率を提示する。日本企業がこの視界不良の嵐の中で、いかにして針路を見極め、生存・再生への道筋を見出すべきか、具体的な戦略オプションを高い解像度で描き出す。

2.AIが予測する混沌時代の米中対立シナリオ

1)異常事態の現状分析

AIが分析の前提とする現状は、経済合理性だけでは到底説明がつかない異常事態といえる。

この全面対決の様相に水を差すかのように、米国政府は4月11日、スマートフォン、ノートパソコン、一部半導体などをこの超高関税の対象から除外するという決定を下した。AIはこの動きを、国内消費者やハイテク産業への配慮、インフレ圧力緩和を狙った「戦術的調整」あるいは「一時的な適用猶予」と分析している。だが、これはトランプ政権内の対中強硬路線と現実的な経済への配慮との間で生じている深刻な矛盾と政策的迷走を露呈するものであり、対立の根本的解決には程遠い。

むしろ、影響の大きい品目を除外することで国内の不満を一時的に抑えつつ、他の分野での強硬姿勢を維持・強化するための政治的計算である可能性も否定できない。中国側も報復関税の手を緩めておらず、交渉の兆しは依然として見えない。この結果、世界経済は超高関税による貿易縮小圧力と、一部除外による歪な緩和が混在する、極めて不安定かつ予測困難な状況に置かれている(図表1)。

図表1
図表1

2)AIが予測する3つの未来分岐シナリオと発生確率

このような混沌とした最新状況を踏まえ、AIはリアルタイムデータ(市場動向、物流情報、政策発表、地政学指標など)を駆使して、今後の展開に関する主要な3つの未来分岐シナリオとその発生確率を分析した。

第一に警戒すべきは「制御不能なエスカレーションと世界的リセッション深化」シナリオであり、その発生確率は最も高い50%を示した。このシナリオでは、スマホなどの除外は一時的な措置に終わり、他の分野での制裁・報復の応酬が激化、あるいは除外措置自体が撤回され、全面的な経済戦争へと突き進む。根本的な米中対立構造と相互不信、トランプ政権の政策の予測不可能性、一部品目(スマホなど)を除外することで国内経済や世論への配慮を示しつつ、その分、他の重要分野で制裁や規制といった強硬策を推進しやすくなるという計算、そして中国側の強硬姿勢の維持がその根拠であり、結果として地政学的リスク(特に台湾有事)が顕在化し、経済危機と軍事危機が連鎖する可能性が高い。その影響は計り知れず、世界恐慌レベルの経済危機、金融システムの麻痺、地政学的動乱、そして広範な社会不安の増大をもたらすだろう。

第二に高い蓋然性をもつシナリオとして、「高関税・部分的除外が常態化する『まだら模様』のブロック経済化」が挙げられ、発生確率は45%とされた。この場合、現在の145%対125%という高関税と、スマホなどの一部除外という状況がある程度継続・固定化する。米国側にも全面的な経済破壊は避けたい意図が窺える(スマホ除外)一方で、対中強硬姿勢は維持されるというジレンマ、そして企業がこの複雑な規制環境に適応していく可能性が根拠となる。その結果、世界経済は明確な二分化ではなく、関税率や規制によってまだら模様に分断された、流動的で不安定なブロック経済へと移行し、サプライチェーンの複雑化・多元化、長期的な経済成長の停滞、企業経営における地政学リスクプレミアムの常態化、そして技術デカップリングの選択的進行といった影響が常態化する。

第三の「予期せぬ対話進展による段階的緊張緩和」シナリオの発生確率は低く、5%である。これは、極端な対立による経済的ダメージや他の国際的課題への対応から、米中が水面下で交渉を進展させ、関税率の段階的な引き下げや除外対象の拡大などで合意し、限定的なデタント(緊張緩和)が実現する可能性を指す。しかし、現在の指導体制下での大幅な方針転換の困難さ、根深い相互不信、そして国内の強硬世論を考慮すると、その実現性は低い。影響としては一時的な市場の安堵感や貿易環境の部分的改善が見込めるものの、対立の根本解決には至らず、不安定性は残存するだろう(図表2)。

図表2
図表2

3)AI予測を踏まえた筆者見解

AIが示すこれらのシナリオ分析、特に「制御不能なエスカレーション(50%)」と「まだら模様のブロック経済化(45%)」という二つの厳しい未来が、合わせて95%もの確率を占めているという事実は、今後の米中関係がいかに深刻なリスクを孕み、かつ予測困難であるかを物語っている。スマホなどの一部品目除外という動きは、一見矛盾しているが、AIが指摘するように、これは対立緩和の兆しではなく、むしろ国内事情への配慮と強硬姿勢維持という二律背反を抱えた政権の迷走、あるいはさらなる対立激化に向けた時間稼ぎや戦術的調整に過ぎない可能性が高い。これにより、状況はさらに複雑化し、企業が直面する不確実性は増す。

AIが緊張緩和シナリオの確率をわずか5%と低く見積もっている点は、現状に対する安易な楽観論を強く戒めるものである。企業経営においては、最悪の事態(エスカレーション)への備えと、長期的かつ構造的な変化(まだら模様のブロック経済化)への適応という、二正面作戦を強いられる覚悟が必要となるだろう。このAI予測が浮き彫りにするのは、経済合理性だけでは読み解けない政治的衝動が支配する現代において、極度の不確実性を前提とした経営判断と、変化への迅速な対応能力こそが、企業の生存を左右するという厳しい現実である。

3.混沌を生き抜く日本企業の針路

関税率145%対125%の応酬とスマホなどの一部除外という矛盾に満ちた状況は、日本企業に対し、従来の延長線上ではない抜本的な変革を迫っている。この視界不良の嵐の中で針路を定め、生存・再生への道筋を見出すためには、以下の3つの核心戦略に経営資源を集中させ、迅速かつ徹底的に実行することが不可欠である(図表3)。

図表3
図表3

第一に必要なのは、「サプライチェーンと生産体制の抜本的再構築」である。これはもはやコスト削減や効率化ではなく、事業継続そのものを左右する最重要課題と認識すべきである。地政学リスク、特に中国への過度な依存リスクを最優先で回避するため、最新の関税対象リスト、除外品目リスト、原産地規則を常に精査し、品目ごとに最適な生産・調達ポートフォリオを構築・更新し続ける必要がある。これにより、日本国内への回帰のほか、ASEAN、インド、メキシコなどへの生産拠点の多元化が加速する。

実際に、こうした動きはすでに現場レベルで始まっている。たとえば、筆者が九州地方でのヒアリング調査を通じて把握した林業関連企業の事例では、経営者はこれまで地元産の木材を中国に輸出し、現地で家具に加工して米国へ輸出していたが、今回の異常な関税障壁の高まりを受け、中国経由のリスクを回避し、日本国内で高付加価値製品を製造して直接米国市場へ輸出する新たな販路開拓を真剣に模索しているとのことだった。これは多くの日本企業が直面する課題の縮図であり、サプライチェーンの脆弱性を克服しようとするリアルな動きである。たとえ関税対象外となった品目であっても、政策の再変更リスクに備えた代替策(プランB、プランC)の準備は必須であり、サプライチェーン全体の可視化とリアルタイムでのリスク監視体制強化が求められる。

第二は、「市場と製品・技術戦略の転換による競争優位性の再確立」である。米国市場のリスクを管理しつつ、依存度を戦略的に低減し、成長が期待されるアジアなどの他市場へ軸足を移す市場の多角化の加速が求められる。同時に、関税の影響を受けにくい、あるいは関税の影響を吸収できるだけの競争力をもつ、高付加価値な製品・サービスへのシフトの徹底も重要である。そのためには、他社が容易に模倣できない独自のコア技術の開発・保護が生命線となる。研究開発投資を継続・強化し、技術的優位性を確立することで、価格競争からの脱却を図り、厳しい環境下でも収益を確保できる事業構造へと転換する必要がある。米中の技術覇権争いを踏まえ、先端技術分野の輸出管理や投資規制への対応、知的財産の保護にも万全を期さなければならない。

第三は、「危機対応経営体制と外部連携による変化適応力の最大化」である。不確実性と変動性の高い環境下では、経営トップの強いリーダーシップのもと、迅速かつ的確な意思決定を行える体制が不可欠となる。最新の政策変更や市場動向に関する情報をリアルタイムで収集・分析し、経営戦略に即座に反映させる情報感度を高めることが重要である。AI予測やシナリオプランニングを活用し、複数の未来に備えた具体的な対応計画(コンティンジェンシープラン)を準備・更新し続けると同時に、自社だけで対応するには限界があるため、政府や業界団体との連携をこれまで以上に緊密にすることも求められる。政策動向に関する情報共有、サプライチェーン強靭化や国内投資促進に関する政府の支援策の最大限の活用、そして必要であれば業界として政策提言を行うなど、外部との連携を通じて変化への適応力を高めていくことが求められる。

米中関税戦争は、単純な二元論では捉えきれない、複雑で矛盾に満ちた新たなフェーズに入った。AIの分析は、破局リスクが依然として高い一方で、状況が流動的であり続ける可能性も示唆している。日本企業にとって、この混沌は大きな脅威であるが、変化への適応力と変革力をもつ企業にとっては、新たな競争優位性を築く機会ともなり得る。重要なのは、悲観にくれることなく、かといって安易な楽観にも陥らず、常に現実を直視してリスクを管理し、変化に柔軟に対応しつつ、自らの変革を断行する強い意志をもつことである。それこそが、この視界不良の時代を生き抜き、未来を切り拓くための唯一の道筋となるだろう。

柏村 祐


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

柏村 祐

かしわむら たすく

ライフデザイン研究部 主席研究員 テクノロジーリサーチャー
専⾨分野: AI、テクノロジー、DX、イノベーション

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