【1分解説】キッシンジャー外交とは?

城石 和秀

  音声解説

キッシンジャー外交は、理想主義よりも現実主義に基づく国益を中心に据えた外交、あるいはバランス・オブ・パワーを実際の政治の場に適用した外交として知られています。

2023年11月29日、国際政治学者であり、元米国国務長官であったヘンリー・キッシンジャー氏が亡くなりました。氏は、ニクソン政権およびフォード政権の時代に、米ソ間の核軍縮、米中和解、ベトナム戦争終結、中東和平に大きく貢献したと評価されています(資料)。

しかし、これらの成果をもって氏を平和主義者、理想主義者と評する人はいないでしょう。氏は、むしろ実利的で冷徹な現実主義者と見られています。チリのピノチェト軍事政権の支持などに対しては、道義面、人道面からの批判も受けています。ノーベル平和賞受賞も物議を醸しました。

一方、氏は決して覇権主義者ではありません。冷戦という時代において、低下傾向にあった米国の国際的な地位、あるいは威信を回復させ、バランス・オブ・パワーの観点から相応の安定状態をもたらしたところに、その功績が認められます。

ロシアとウクライナの紛争、米中間の緊張、イスラエルとハマスの紛争等、混沌とした国際情勢の中、キッシンジャー氏逝去の報は1つの時代の終わりを告げるものかもしれません。

資料
資料

この解説は2023年12月時点の情報に基づいたものです。

城石 和秀


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。