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時事雑感(2025年12月号)

嶌峰 義清

10月に行われた米中首脳会談で、トランプ関税をきっかけの一つとした米中の経済面での対立は一旦終息した。会談が急遽設定された背景には、米中関税交渉期限が11月半ばに迫っていたこともあるが、中国が事前に打ち出したレアアースの輸出規制強化方針が強く影響したと考えられる。

採掘で世界の7割近く、精製では9割以上を中国が占めているレアアースは、最先端技術に欠かせない鉱物の一つだ。その中には電気自動車や風車などに使用される強力磁石や、最先端半導体製造装置などが含まれる。同時に、多くの軍事品にも使用されているため、中国は軍事転用を避けるための措置として輸出管理の正当化を訴える。しかし、中国製レアアースを0.1%以上使用する世界中の全ての製品の輸出管理を行うとした中国の規制強化策は、米国が対中交渉に本腰を入れるほどのインパクトがあった。結果として、中国は規制強化を1年先送りする代わりに、米国よりも実の多い結果を勝ち取ったとの評価が一般的だ。

しかし、こうしたなりふり構わない中国の姿勢は、各国のレアアースの対中依存引き下げの動きを加速させることに繋がろう。米国は、自国内での採掘や精製技術・施設の開発に力を入れているほか、豪州など親米国との間で共同事業を推し進めている。日本では、南鳥島近海の膨大なレアアース鉱床の採掘に向けて、来年から試掘が始まる。予備調査では、レアアースの中でも希少とされ、中国依存度がほぼ100%の重希土類元素を多く含んでいる可能性が高く、採掘が本格化すれば“ゲームチェンジャー”となる可能性を秘めている。

課題は、深海での採掘技術とコストだが、中国がレアアースを“武器”として使用することを厭わないことが明確となった以上、欧米などの知恵と資本を借りてでも、南鳥島近海のレアアース採掘を急ぐべきだろう。

(嶌峰 義清)

嶌峰 義清


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