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Well-being『私たちは「2040年問題」を乗り越えられるのか』

永原 僚子

「2040年問題」と呼ばれる、高齢化と人口減少の進行に伴う一連の社会的・経済的問題が、今から16年後に迫ってきています。2040年頃には団塊ジュニア世代層(1971年から1974年生)が65歳を超え、全人口に占める65歳以上の高齢者の割合が約35%に達すると予測されています。この状況では、現在の医療、介護、年金などの社会保障制度を維持することが難しくなると指摘されています。

高齢化の問題として見てみると、団塊の世代層(1947年から1949年生)が後期高齢者である75歳になる「2025年問題」、65歳以上の高齢者が人口の30%を超える「2030年問題」、団塊の世代が85歳を迎え、総人口の約33%が65歳以上の高齢者となる「2035年問題」など、次々と困難な問題が待ち受けています(推計値は「令和5年版高齢社会白書(全体版)」より)。

一方、少子化の進行も止まりません。厚生労働省の人口動態統計の速報値(外国人を含む)によれば、2023年の出生数は統計を開始した1899年以降初めて80万人を割り込んだ2022年からさらに5.1%減少し、75万8631人と前年よりも4万1097人減少しました。出生数は減少の一途をたどり、8年連続で過去最少を更新しています。

この人口構造の変化にいよいよ耐え切れなくなると予測されるのが2040年です。現役世代の社会保障費の負担はさらに増大すると予測され、医療や介護の需要増加に対して人員や財源の不足が深刻化するとことも見込まれています。さらに、労働力の不足、生産性の低下、地方の過疎化、世代間格差の拡大など、多岐にわたる問題が懸念されています。また2040年問題を考える際には、団塊ジュニア世代の特性も考慮が必要です。この世代は現役時代の経済成長率が親世代に比べると低く、就職氷河期でもあったため、非正規雇用率が高い傾向が見られます。そのため、団塊ジュニア世代が高齢者になることは、単純な人数的負担だけでなく、社会全体にさらなるさまざまな負担をもたらす可能性があります。このように2040年は、日本が抱える多様な社会構造的・経済的問題が決定的に顕在化、深刻化する時なのです。

しかし2040年が「ラスボス」ではありません。内閣府によれば、2042年以降65歳以上の人口は減少に転じますが、高齢化率は上昇を続け、2070年には65歳以上の人口は総人口の約38%に達します。また、75歳以上人口の割合は25.1%となり、約4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると推計されています。これらの問題に対処するために、社会保障制度の改革や少子化対策、女性や高齢者の積極的な活用など、多角的な視点からの取り組みが進められていますが、問題の根本的な解決には至っていません。

私たちは「2040年問題」を乗り越えられるのでしょうか。2040年問題は社会保障制度の根幹に関わる問題なので、周到な準備無しでは乗り越えることは難しいでしょう。これまでのように社会保障制度に頼り、公的年金や企業年金で生活するという考えを捨てる時が来たと言えます。

私たちが立ち向かう諸問題を乗り超えていくためには、自分の将来にとって何が必要かを見極め、それに基づいた準備を始めることが重要です。最優先事項は常に健康を心掛け、医療や介護を必要とする状況を未然に防止して高齢期でも働ける身体を確保することです。同時に、ライフイベントを見通して計画的な貯蓄や保険など自分自身でできる限りの準備を進めることも大切です。一人ひとりに必要な準備は異なるため、これらの準備を進めることで、将来の困難に対してより強く立ち向かうことができるのではないでしょうか。

永原 僚子


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。