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- QOL向上の視点『老後マネープランの不確実性』
老後資金2000万円問題
「老後資金2000万円問題」という言葉が登場したのは何年前だったか。現在でもそれに関する質問をいただくことがあり、老後資金に関して不安を感じている人の多さを感じる。
2000万円という数字は、総務省家計調査において高齢者世帯の収入と支出が月額約5.5万円の赤字であったことに由来する。30年分なら約2000万円というわけだが、これはあくまで日本全体の平均値である。
当然ながら個人のマネープランでは前提となる公的年金額・退職金額・生活形態・家族構成などが異なり、こうした平均値を金科玉条のごとく適用するのは危険である。大切なのは各自の状況に合わせて老後の収支を予測し、いわば自分だけの老後資金計画を立てることだろう
もっともそうした計画にも大きな問題がある。それは「各自が何歳まで生きるかはまさに神のみぞ知る」ということに尽きる。つまりいくら収支の予測をしても、それを何年分用意すればいいかはわからないということだ。
前述の「2000万円」では「30年」としている。他には「平均寿命まで」「定年時点の平均余命まで」等々の考え方があろうが、各自の実際の寿命がわからないことに変わりはない。
寿命という不確実性が内包されている限り、老後資金計画も不確実性をはらむのである。つまり確実な老後資金計画は存在しないことになってしまう。
こんなことを聞くと不安を覚える方もいるかもしれない。しかし世の中には「電車が遅延して大切な約束に遅れるかもしれない」といった不確実性があふれている。私たちはそれを前提とし「大切な約束だから余裕をみて早めに出発しよう」といった形でうまくやり過ごしている。
ここで大切なのはその余裕をどれだけ見るかであるが、それはその人の考え方次第ではないだろうか。私の周りにも重要な約束だと30分前に着いている人もいれば、10分しか余裕を見ない人もいる。あまりギリギリというのはどうかと思うが、何分が正解ということはない。その人が安心できる余裕を見ればいいのである。
安心の尺度
老後資金においても、まずは平均寿命等の一定の寿命を想定して資金を計算し、あとは「自分はどれだけ余裕を見れば安心できるか」と考えるしかない。
実は個人のマネープランではこうした安心の尺度が大切である。例えば個人の株式投資ではプロのそれと異なり、「値下がりに動揺しパニック売り」といった心理的要因で失敗してしまうケースがある。ここでも注意するべきは各自がどこまで余裕をもって投資すれば安心できるかであろう。
それでは安心の尺度をどう決めればよいだろうか。心理的な問題なので絶対的正解がない難しい問題であるが、私は次の尺度を提案している。
「仕事や家庭生活に支障がないか。具体的には 株価や老後資金のことが気になって仕事や家庭生活がおろそかになったり、寝つきが悪くなったりするようなことがないか等。」
要するに将来のことが心配で現在の生活に悪影響があっては本末転倒ということである。
夜はぐっすり眠っていただき、目下の仕事や家庭生活を充実させれば、老後の生活準備も前向きな気持ちで進められるというものだろう。
岡田 浩介
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。