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- QOL向上の視点『セカンドライフのマネープランのヒント』
人生100年時代のセカンドライフを考える
近年話題になったのが、令和元年の金融審議会市場ワーキンググループによる「老後2000万円問題」だった。簡単に言うと一般的な夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦の収支は公的年金などの収入が毎月約20万9,000円に対して、支出が約26万4,000円なので毎月約5万5,000円の赤字となる。仮にこの状態が30年間継続するとしたら、2,000万円不足してしまうという内容だった。しかし、現実のケースでは、持家の有無、保有金融資産、各家庭の生活スタイルなどで大きく差異がある。大切なのは早いうちに「自分ごと」として将来を確認することである。人生の三大費用(住宅、子育て、老後)のうち最も費用がかさむのは老後費用であるが、遠い将来なので後回しになりやすい。しかも住宅や子育てのマネープランの失敗はすべて老後費用にしわ寄せがいくからである。
メンタルアカウンティング
そこで「資産形成」を考えるのだが、ここではメンタルアカウンティングの考え方を紹介したい。メンタルアカウンティングは、2017年ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラ―教授によって提唱された「心の家計簿」「心理的な勘定体系」といわれるもので、人は心の中で用途別に口座をわけて、用途ごとに判断していくという考え方である。例えば「固定費」「食費」「娯楽費」「交際費」などと心の中で区分して支出などを考えているというものである。この考え方は収入にも当てはまり「勤労収入」「勤労外の棚ぼた収入」など区分することができる。資産形成では、「目標設定」「貯める」「ふやす」「使う(取り崩す)=楽しむ」などのステージがあるが、この考え方は「貯める」「使う」場面で特に大切になる。
貯める
「貯める」の場面では、漠然と老後資金を貯めようと考えるか、具体的に70歳代、80歳代の日常生活費、旅行費用、車の買換え、住宅修繕費のように区分し各々の目標を決めて考えるかでは、その達成意欲・達成感が全く違ったものになる。また目的に応じて金融商品やiDeCoやNISAなどの制度の選択、管理口座区分も有効な手法になる。
使う
「使う」の場面では、メンタルアカウンティングの考え方がより重要になる。担当していたお客さまの例を紹介したい。お客さまは、70歳代男性、預金残高も数千万以上、公的年金収入もあり、マネープラン面では十分余裕がある方である。お子さんやお孫さんも複数名いらっしゃるが、不思議なことにお金を使わない。失礼を承知で「なぜ消費をあまりされないのか」と伺ってみたところ、お返事は「老後が心配なので使えないよ」とのことだった。つまりこの方は「お金の区分」が十分にできていなかったのだ。私は70歳代、80歳代で使うお金、病気療養、施設への準備、万が一の準備の目安金額などを示し、それに対応した資金と金融商品などをアドバイスすることにした。当時メンタルアカウンティングという言葉を知らなかったが内容は「心の家計簿」そのものだった。結果的には「老後の心配」なく、お金を使う計画に繋がり大変喜んで頂くことになった。そしてその経験を契機に「お金の区分」を取り入れたマネープランを推進していくようになった。
是非とも「貯める」「使う」に関して具体的なイメージ(勘定)を作ってプランニングをするようしていただけたらと思う。目標をもって「貯める」、そして計画的に「使う」ことで「楽しみ」のある充実したセカンドライフにしていきましょう。
平岡 一弘
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。