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OPECプラス有志8ヶ国は7月も大幅増産、減産縮小は大きく前倒し

~4ヶ月で自主減産枠の6割強が縮小へ、シェア重視で価格は上値の重い展開が続くか~

西濵 徹

要旨
  • OPECプラスは、5月28日のオンライン閣僚会合において2026年末までの日量366万バレルの協調減産の継続を確認し、2027年以降の生産に向けて生産能力評価の枠組み策定を進めることで合意した。一方、有志8ヶ国は4月から自主減産を段階的に縮小し、5月と6月には予定を前倒しして実質増産に動いてきた。これは、OPECの影響力低下、サウジの戦略変更、過剰生産国への対抗姿勢などが影響している。

  • こうしたなか、有志8ヶ国は5月31日にオンライン会合を開催し、7月の自主減産枠をさらに日量41.1万バレル縮小することで合意した。OPECは健全な市場のファンダメンタルズと世界経済の回復を理由に挙げる一方、今後も生産調整に柔軟に対応する構えを示している。この決定を受けて、7月までの4ヶ月間で自主減産枠の6割以上が回復するなど、大きく前倒しされることになる。

  • 米中貿易協議を巡る不透明感や世界経済の先行きにも不透明感がくすぶるなか、足元の国際原油価格は上値の重い展開が続いている。今回の決定は有志国が市場シェアを重視していることを示唆しており、先行きについても国際原油価格は上昇しにくい状況が続くと見込まれている。

主要産油国の枠組みであるOPECプラスは、先月28日に開催したオンラインでの閣僚会合において、枠組み全体として2026年末までとしている日量366万バレル規模の協調減産を継続することをあらためて確認した。その上で、協調減産の期限が切れた後の2027年以降の生産量について、OPEC(石油輸出国機構)事務局に対して各国の生産能力を評価する枠組みの策定を求める方針を示した上で、将来的な枠組みの在り方に関する協議を進めることで合意した。

他方、有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は今年4月から自主減産を段階的に縮小させたほか(注1)、5月(注2)と6月(注3)には当初予定された減産スケジュールを前倒しで実施する実質増産に舵を切る動きをみせてきた。この背景には、協調減産や自主減産の長期化により世界の産油量に占めるOPECの割合が低下するなど存在感の低下が顕著になっていることがある。さらに、価格の維持による市場の安定を重視してきたサウジアラビアは、豊富な埋蔵量や低コストの生産能力を背景に担ってきた『調整役』としての立場を変えつつある。そして、枠組みのなかで過剰生産を行っているとされるイラクやカザフスタンなどの国々に対する『懲罰』的な動きを強めていることも影響しているとされる。

こうしたなか、有志8ヶ国は先月31日にオンライン会合を開催し、7月の自主減産枠を日量41.1万バレル縮小する決定を行った。この理由について、OPECは堅調な世界経済の見通しと、原油在庫の少なさに反映される現在の健全な市場ファンダメンタルズを挙げており、増産(自主減産縮小)量についても、6月同様に3ヶ月分の増加分に相当するとした上で、生産枠の適合について、一部の国が十分な補償を行えなかったことを念頭に、OPECは適合の徹底と実現の加速を求める方針を示している。なお、先行きの生産量については、市場の状況に応じて一時停止や見直しを行う可能性があるとするなど、引き続き慎重姿勢を維持している。とはいえ、7月までに有志8ヶ国による自主減産の縮小枠は日量137万バレルとなり、当初は自主減産枠(日量220万バレル)を18ヶ月かけて段階的に縮小する予定であったものの、4ヶ月で6割強が回復することになる。

このところの世界経済や国際金融市場を巡っては、米トランプ政権の関税政策に翻弄される展開が続いている。トランプ関税をきっかけに、米中は貿易戦争に突入したものの、先月には米中による直接協議を経て双方が報復関税を撤廃するとともに、相互関税の上乗せ分を90日間延期して貿易協議を行うことが明らかにされるなど、関係改善が期待される動きがみられる。しかし、足元では米中間の協議の不調が明らかになるなど、依然として見通しの立ちにくい状況が続いている。こうした状況を反映して、このところの国際原油価格は上値の重い展開をみせている。先行きについても米中関係を巡る不透明感が世界経済の足かせとなることが懸念されるなか、有志8ヶ国が価格維持よりシェアの維持を優先する考えを示したことにより、原油価格は引き続き上値の重い展開が続くことは避けられないであろう。

図表1
図表1

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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