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OPECプラス、有志8ヶ国は6月も大幅増産、原油価格は一段調整も

~「調整役」であるサウジが「自国中心主義」の様相を強めるなかで原油価格の行方に不透明感も~

西濵 徹

要旨
  • OPECプラスの有志8ヶ国は3日にオンライン会合を開催し、6月の自主減産枠を日量41.1万バレル縮小する事実上の増産を決定した。有志8ヶ国は5月にも自主減産枠を日量41.1万バレル縮小させており、当初は18ヶ月かけて段階的な縮小を計画していたが、わずか3ヶ月で4割超が回復する格好となる。この決定についてOPECは市場の基礎的条件の健全さや前向きな見通しを反映したとするが、足元では米中貿易摩擦などによる世界経済の減速懸念を理由に原油価格は頭打ちの動きを強めている。こうした状況にもかかわらず、有志8ヶ国は一段の大幅増産を決定し、先行きも上値の重い手買いが続く可能性は高い。

  • 一方、OPECは加盟国による生産割り当て枠の適合の徹底を求める考えを強調しており、サウジアラビアなどが減産目標を遵守しないカザフスタンやイラクなどへの不満を強めているとみられる。他方、これまでサウジアラビアは「調整役」として価格維持や市場安定を重視する動きをみせてきたが、脱原油を目指すなかでそうした役割を甘受することが困難になっているとみられる。結果、サウジは自国の経済改革と市場支配の両立を図る「自国中心主義」の様相を強めている可能性がある。こうした状況は、OPECプラスの枠組み維持や原油価格の行方を巡る不安定要因とみられ、今後の動向にはより注意が必要になっている。

主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、3日に開催したオンライン会合において、6月の自主減産枠を日量41.1万バレル縮小する決定を行った。有志8ヶ国は先月に開催したオンライン会合において、今月の自主減産枠の縮小枠を当初予定された日量13.5万バレルから同41.1万バレルに大幅拡大させており、事実上の増産に舵を切る決定を行っている(注1)。この決定の理由について、OPEC(石油輸出国機構)は市場の基礎的条件が健全であることに加え、市場見通しが前向きであることを反映したとし、増産(自主減産縮小)量についても5月に予定されたものと2ヶ月分の増産分を合わせたものと説明した。一方、先行きの増産については市場の状況に応じて一時停止や見直しを行う可能性があるとするなど、追加増産に慎重な見方を示していた。

その後の世界経済や国際金融市場は米トランプ政権の関税政策を巡る不透明感に揺さぶられている。国際原油価格も、米トランプ政権の関税政策をきっかけに米中が貿易戦争に発展していることに加え、世界経済の減速による需要減観測を反映して調整の動きを強めた。さらに、有志8ヶ国による予想外の増産決定を受けて世界的な需給が緩むとの見方をして上値は抑えられた。こうした状況にもかかわらず、有志8ヶ国はオンライン会合の開催を当初予定された今月5日から直前に2日前倒しした上で、一段の増産を決定した。よって、先行きの国際原油価格は一段と上値が抑えられる展開が続く可能性が高まっていると見込まれる。

なお、今回の有志8ヶ国の決定についてOPECは、原油在庫が低水準で推移するなど市場の基礎的条件が健全であることを理由に挙げている。そして、増加分について5月同様に3ヶ月分の増加分に相当するとした上で、各国の割り当てられている生産枠を巡って、各国に完全な適合と補償を行うことができなかった国を念頭に、完全な適合と実現の加速を求める考えを示している。この背景には、サウジアラビアをはじめとする加盟国の多くが減産目標を遵守しないカザフスタンやイラクへの反発を強めていることが影響しているとされる。さらに、6月までに有志8ヶ国による自主減産の縮小枠は日量96万バレルとなり、当初は自主減産枠(同220万バレル)を18ヶ月かけて段階的に縮小するとしていたものの、たった3ヶ月で4割強が回復することになる。有志8ヶ国は6月1日に開催予定のオンライン会合において7月の生産方針を決定するとしているが、足元の国際原油価格が上値の重い動きをみせるも増産に動いたことを勘案すれば、7月にも一段の増産に動く可能性は高まっていると判断できる。

OPECプラスを巡っては、サウジアラビアを中心に価格維持による市場の安定を重視してきたとみられる。しかし、協調減産や自主減産の長期化により世界の産油量に占めるOPECの割合が低下するなど存在感の低下が顕著になっている。これまでは豊富な埋蔵量に加え、生産コストの低さ、余剰生産能力の大きさなども追い風に、サウジアラビアは割り当てられている生産枠を上回る減産を受け入れることで価格維持による市場安定を目指す姿勢をみせてきた。しかし、同国ではムハンマド皇太子が主導する原油依存からの脱却に向けた巨額投資が必要となるなか、割り当て枠を上回る減産による原油収入の減少はその実現を難しくすることが懸念される。他方、上述したようにサウジアラビアは原油の生産コストが低いなか、国際原油価格の低迷が長期化することで高コスト体質の他の新興産油国のほか、米国のシェールオイルが撤退に追い込まれれば、その後の世界の産油量のなかで存在感を高めることが可能になる。よって、これまで『調整役』を担ってきたサウジアラビアが米トランプ政権同様に『自国中心主義』の様相を強めている可能性が考えられる。その意味では、先行きはOPECプラスの枠組みそのものが再び瓦解するリスクのほか、そうした見方が国際原油価格の動向に影響を与える可能性にも注意を払う必要性が高まっていると言える。

図表1
図表1

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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