- HOME
- レポート一覧
- 経済分析レポート(Trends)
- OPECプラス、4月からの有志国による段階的増産で合意
- World Trends
-
2025.02.04
新興国経済
原油
産油国経済
トランプ政権
OPECプラス、4月からの有志国による段階的増産で合意
~米トランプ大統領が求める大幅増産には距離、価格と存在感の維持を図るべく漸進的な増産に舵へ~
西濵 徹
- 要旨
-
- 主要産油国の枠組であるOPECプラスは、3日に開催した合同閣僚監視委員会(JMMC)において、4月以降に有志国8ヶ国による自主減産を段階的に縮小する方針で合意した。昨年末の閣僚会合では原油価格の低迷が続くなか、有志国の自主減産を3ヶ月延長するとともに、枠組全体としての協調減産を1年間延長することで強いメッセージを打ち出した。他方、その後は米トランプ大統領が原油価格の下落へOPECプラスに増産を求める考えを示していた。JMMCではトランプ氏の増産要求についても協議がなされた模様だが、価格維持の一方で存在感低下を避けるべく減産縮小のタイミングを探るなか、昨年末に合意した4月からの有志国による自主減産の段階的縮小の方針を維持した格好である。その意味では、米トランプ政権とOPECプラスの間に「温度差」があることは間違いないと捉えられる。なお、当面は米トランプ政権の通商政策の行方に加え、需給の緩みが意識されやすい時期も重なり、原油相場は上値の重い展開が続こう。
主要産油国の枠組であるOPECプラスは3日に合同閣僚監視委員会(JMMC)を開催し、昨年12月の閣僚会合において3ヶ月延長することを決定した有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)による日量220万バレル規模の自主減産について、4月以降段階的に縮小させることで合意した。なお、OPECプラスは昨年12月の閣僚会合において、枠組全体として実施している日量約366万バレル規模の協調減産を1年間延長して2026年末までとしており、現時点においては世界需要の6%弱に相当する産油量を協調、自主減産する展開が続いている。このところの国際原油価格は、昨年末以降は米トランプ政権によるロシアやイランに対する対応を巡る不透明感が供給懸念を招くとの見方を反映して底入れする動きがみられたものの、一方でトランプ氏は物価抑制を図るべく米国内でのシェールオイル・ガスの増産に動く姿勢をみせており、足下では頭打ちに転じる動きをみせた。さらに、トランプ氏は先月の大統領就任以降、OPECプラスに対して原油価格を抑えるために繰り返し増産を要請する動きをみせており、そうしたことも価格の上値を抑えており、足下においては昨年末以降の底入れの動きは一巡しつつある。こうしたなか、今回のJMMCでは上述したトランプ氏による増産要請について議論が行われた模様である。なお、このところのOPECプラスにおける協議では、価格維持を目的とする減産の必要性が共有される一方、財政面で原油関連収入への依存が強い国のなかには減産に反発する向きも出ているほか、減産長期化を受けて世界の原油生産に占めるOPECプラス全体の割合が低下するなど存在感が低下する事態を招いており、協議が難航する場面が散見された。一方、世界経済を巡る不透明感が世界的な原油需要の重石となるとともに、価格も上値が抑えられる展開が続いたため、昨年12月の閣僚会合において有志国による自主減産を3ヶ月延長するとともに、枠組全体としての協調減産も1年間延長する踏み込んだ内容とすることで価格維持への強い意志を示したと捉えられる(注1)。その後の国際原油価格は一進一退の動きをみせているものの、価格水準は上昇しているほか、OPECプラス全体としての存在感のさらなる低下を避けるべく減産縮小へのタイミングを探る姿勢をみせてきた。こうしたなか、今回の協議では有志国による自主減産について、昨年12月の閣僚会合において合意した通り、4月以降に段階的に縮小することについて再確認されており、漸進的に増産が進められることとなった。他方、上述のようにトランプ氏はOPECプラスに対して価格抑制を目的とする増産を要求していたことを勘案すれば、今回の合意内容は明らかに『温度差』を感じるものとなったことは間違いないと捉えられる。また、今回の協議では枠組内の国々の生産量と減産の順守状況を監視する際に用いる二次情報源の一部について、エネルギー調査会社のライスタッド・エナジー社と米エネルギー情報局(EIA)を除外する一方、データ分析会社のKpler社、OilX社、ESAI社に変更する旨を明らかにしている。当面については、米トランプ政権がカナダとメキシコに今月4日付で発動するとした追加関税について1ヶ月延期する旨を公表するなど不透明要因の後退が意識されており、価格は上値の重い展開をみせる可能性が高まっている。さらに、冬場のエネルギー需要の一巡も見込まれるなかで需給が緩みやすい状況となることも予想され、そうしたことも相場の上値を抑える状況が続くと見込まれるが、トランプ氏が期待する大幅な下落は見通しにくいであろう。

注1 2024年12月6日付レポート「OPECプラス、協調減産をさらに1年、有志国の自主減産も3ヶ月延長」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
-
経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
執筆者の最近のレポート
-
台湾・9月輸出、半導体などの旺盛さを反映して過去最高に(Asia Weekly) ~原油価格の再上昇を受けて、多くのアジア新興国でインフレ率が再び加速~
アジア経済
西濵 徹
-
新たなスキャンダルに揺れるインド、今度は「選挙」を巡る問題噴出 ~選挙制度の信頼が揺らぎ、モディ政権への批判が再燃、政治不安が新たなリスクとなるか~
アジア経済
西濵 徹
-
トルコ金融市場の混乱が収まらない ~投資信託の規制強化が株安を招き、実体経済や政策運営への波及が懸念される~
アジア経済
西濵 徹
-
インド中銀、3年8ヵ月ぶりの利上げ、政策スタンスも転換 ~インフレを警戒した「予防的引き締め」、追加利上げに含みも慎重姿勢、ルピーや株価は?~
アジア経済
西濵 徹
-
ベトナム景気は引き続き外需・投資をけん引役に加速 ~7-9月は4年ぶりの高成長、市場格上げ期待の一方で物価・対外収支に懸念材料~
アジア経済
西濵 徹
関連テーマのレポート
-
金融市場はブラジルの右派回帰を好感、株価・レアルともに上昇 ~議会選も右派躍進、財政再建への期待の一方で実現性に課題、左派の巻き返しも要注視~
新興国経済
西濵 徹
-
ブラジル大統領選は決選投票へ、フラビオ氏が首位 ~フラビオ・ボルソナロ氏が予想以上の得票、市場は財政・外交政策の行方に注目~
新興国経済
西濵 徹
-
OPECプラス、2ヵ月連続で生産目標据え置き ~G7は備蓄放出の方針も、原油市場は生産枠より中東の供給制約を注視する展開が続く~
新興国経済
西濵 徹
-
ロシア、財政運営はウクライナ戦争のさらなる長期化を鮮明に ~2027年度予算案はウクライナ戦争の長期化を前提、対日関係改善の道筋も見えにくい~
新興国経済
西濵 徹
-
メキシコ中銀、政策判断の自由度を重視 ~3会合連続で金利据え置き、FRB利上げへの機械的追随を否定、ペソ相場はどうなる?~
新興国経済
西濵 徹

