インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

OPECプラス有志8ヶ国、5月も日量20.6万バレル増産で合意

~ホルムズ海峡の事実上封鎖で、合意は「絵に描いた餅」となる可能性は高い~

西濵 徹

要旨
  • OPECプラスの有志8ヶ国は4月5日の閣僚会合で、5月も4月と同水準の日量20.6万バレルの増産を継続することで合意した。背景には、イスラエルと米国のイランへの軍事行動を受けて、イラン革命防衛隊は報復に加え、ホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界的にエネルギー需給が逼迫して原油価格が高騰していることがある。ホルムズ海峡は世界の原油消費量の約2割が通過する要衝であり、その封鎖は湾岸産油国に事実上の減産を強いている。
  • 有志8ヶ国は2025年から段階的な増産に動いたものの、世界経済の不透明感や需給緩和観測による原油価格の下落を受け、2026年1〜3月は増産を停止していた。今回の増産決定はホルムズ海峡の封鎖解除と航行再開を前提としたものとみられるが、封鎖が続く限り実効性は乏しく、「絵に描いた餅」となる可能性が高い。よって、今後の原油価格についても、イラン情勢の展開に左右される不透明な状況が続くと見込まれる。

主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、4月5日にオンラインで閣僚会合を開催した。イスラエルと米国が2月末にイランに対する軍事行動を開始したことを受けて、イラン革命防衛隊は報復攻撃を活発化させるとともに、ホルムズ海峡を事実上封鎖するなど、イラン情勢は不透明な展開が続いている。ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐ海上輸送の要衝であるうえ、ペルシャ湾岸産油国の原油輸出の大部分、世界の原油消費量の約2割が通過する。したがって、革命防衛隊による事実上の封鎖を受けて、全世界的にエネルギー需給環境が急速に悪化して原油価格は上昇、その後も事態の長期化を受けて高止まりしている。有志8ヶ国は、イスラエルと米国による軍事行動開始直後に開催した3月の閣僚会合において、4月に日量20.6万バレルの増産を行うことで合意した(注1)。なお、有志8ヶ国は2024年から自主減産を実施したものの、自主減産が長期化するなかでシェアが縮小して影響力の低下が顕著になった。このため、有志8ヶ国は2025年4月に一転して自主減産を段階的に縮小させるなど実質増産に動いてきた。しかし、世界経済を巡る不透明感が需要の重しとなる一方、実質増産による需給緩和観測を理由に原油価格は下落したため、有志8ヶ国は2026年1~3月の増産を停止し、生産計画を修正した。その後、4月からイラン情勢の悪化を受けて増産に動く方針を示したが、会合では4月の増産幅について日量13.7万~54.8万バレルと幅のある形で協議が行われた模様であり、状況に応じて一段の増産が可能であるとの姿勢を示した。とはいえ、ホルムズ海峡の事実上封鎖という供給制約を理由に、金融市場においては決定そのものが「実効性に乏しい」と見なされた可能性がある。

今回の閣僚会合において、有志8ヶ国は5月に日量20.6万バレルと4月と同水準の増産を行うことで合意した。とはいえ、増産を決定したにもかかわらず、ホルムズ海峡の事実上封鎖を受けて、増産余力があるとされるサウジアラビア、UAE、クウェート、イラクといった湾岸産油国は事実上の減産を余儀なくされている。したがって、今回の決定は、ホルムズ海峡が解放されて航行が再開されれば増産に動く方針を示したものと捉えられる。同日に開催された合同閣僚監視委員会(JMMC)では、ホルムズ海峡の事実上封鎖を念頭に、円滑な流通を確保する観点から海上ルートの保護が極めて重要との認識が強調された。一方、イランによる報復攻撃が湾岸産油国のエネルギーインフラを対象とするなか、損傷した施設の復旧に時間を要するなど供給懸念が高まっていることが指摘された。イラン情勢の見通しが立たないなかでは、今回の決定も「絵に描いた餅」となる可能性は極めて高く、イランによる報復攻撃が激化していることを受けて、状況は一段と厳しさを増すことも予想される。こうしたことから、原油価格の動向は引き続きイラン情勢次第の展開が続くであろう。

図表
図表

以 上

西濵 徹


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ