- Investment Navigator
-
2025.04.15
金融市場
マーケット見通し
株価
資産形成・資産運用
トランプ関税
テクニカル指標から見た当面の日経平均
~一旦は落ち着くも、当面は不安定継続~
嶌峰 義清
- 要旨
-
- テクニカル分析から日経平均株価を判断すれば、売られすぎの状態にあるとはいえ、明確にトレンドが上昇に転じているとまでは言えないものの、その可能性は高まりつつある。
- 今後はトランプ関税に関するニュースに一喜一憂しながらの展開がしばらく続くものの、関税引き上げの影響や、各国交渉の行方に対する不透明感もあって、上値の重い展開が続こう。
やや落ち着きを見せ始めてきた株式市場
トランプ米大統領による相互関税、及び上乗せ税率が発表された4月2日(米国時間)以降、世界のマーケットは大きく動揺した。なかでも株式市場の混乱ぶりは目立ち、トランプ関税発表を受けたあとの4月3日以降の日経平均株価は終値が前日比900円を超える変動が続いた(4月7日から4月11日までは5日連続で前日比1000円以上)。しかし、4月14日の終値は前日比396.78円高と8営業日ぶりに“小さい”変動幅となり、翌15日も同+285.18円にとどまったことから、ようやく株価の急変動も収束し始めているように見受けられる。
日経平均株価の変動率を示す日経VI(ボラティリティインデックス)をみると(図表1)、4月14日には38.91ポイントと足元の水準はまだ“高い”と言えるものの(日経VIは、平時であれば20~30ポイント程度で推移)、4月9日につけた56.61ポイント(終値ベース)をピークに、その後は一進一退ながら低下基調を辿っている。

株式市場がやや落ち着きを見せてきた背景には、混乱のきっかけとなったトランプ関税の上乗せ部分について、90日間の実施延期が決定されたことが大きい。これにより、関税引き下げ、ないしは撤回のための交渉期間が設けられ、その間は中国を除く各国は相互関税のうち基本税率となる10%にとどまることとなった。10%とはいえ、これまでには課せられていなかった関税がかかっているうえ、米中間では超高関税が課せられていることもあり、世界経済には相応の悪影響が出る状況には変わりはないものの、今期の小幅減益予想を織り込んだといえる水準にまで下落していた日経平均株価にとっては(Investment Navigator「動揺する株式市場の行方~織り込むべき水準は達成も、深刻な景気後退なら一段安もある~」(25/4/9)をご参照)、一旦落ち着くチャンスだったとも言えよう。
そこで、テクニカル指標からは足元の株式市場についてどのようなシグナルを送っているのか確認する。なお、以下で取り上げるテクニカル分析については「資産運用のキホン~その20:代表的なテクニカル分析~」(25/3/13)をご参照ください(一部の判断は上記レポートでは言及していないものがある点にご注意)。
オシレーター指標は「一旦は上昇したものの、トレンドが転換したとは言えない」ことを示唆
相場の転換点を示唆すると言われるオシレーター指標の代表的なものの一つであるMACDをみると(図表2)、

以上の点から、MACDでは相場が下落トレンドから脱したとまでは言い切れない、と判断される。
次にRSIを確認する(図表3)。RSIでは、その水準が70%を超えれば買われすぎ、30%を下回れば売られすぎのサインであると考えられている。

最近の日経平均のRSIを見ると、4月4日に30%を下回り翌5日は11.89%と、日経平均株価が過去最大の下落(前日比▲4451.28円)を記録した2024年8月5日以来の低水準をつけた(同日のRSIは11.31%)。その後は上昇基調に転じ、4月10日以降は30%を超える水準での推移が続いている。RSIのシグナルからは、
以上の点を勘案すると、RSIからは日経平均株価が(短期的に)反転上昇トレンドに転じたとは見なせない。
次にストキャスティクスを確認する。ストキャスティクスも代表的なオシレーター指標の一つで、RSIと同様に相場の買われすぎ(80%以上)や売られすぎ(20%以下)を判別するほか、二本の指標がクロスする形状から買いや売りのシグナルを見極められるとされるものだ。ストキャスティクスには以下の三本のラインを使用する。

(図表4)は24年9月以降の日経平均株価とストキャスティクスを表したものだ。グラフ中段がファストストキャスティクス(%Kと%D)、下段がスローストキャスティクス(%DとSlow%D)のグラフとなる。一般的に、ファストストキャスティクスは相場への反応は敏感なもののダマシが多く、スローストキャスティクスは相場への反応は若干鈍いもののダマシが少ないとされる。
この点から判断すると、
となり、足元は上昇トレンドにあると判断される。

トレンド系指標は「売られすぎ感はあるものの、トレンド反転とは言えない」ことを示唆
次にトレンド系のテクニカル指標としてボリンジャーバンドと一目均衡表を確認する。
ボリンジャーバンドをみると(図表5)、

以上の点から、日経平均の下降トレンドは一旦終了に近づいていると考えられる。ただし、トレンド終了後は一旦もみ合い相場になることが多く、中期的な上昇トレンドに転じるとまでは言えない。
次に、一目均衡表を見ると(図表6)、日経平均株価は2月7日に雲を下抜けて以降、雲の下での推移が続いている。
足元の状態から判断すると
といったことが判断される。基準線(4月15日終値ベースで34,582円)を明確に上回れば、暫くは上昇トレンドが続く可能性はあるものの、その場合でも37,000円台半ばには雲の抵抗水準が控えている。

トランプ発言に一喜一憂しながらも、景気面への悪影響見極められるまで冴えない相場継続か
以上の各種テクニカル指標からは、総じて見れば日経平均株価は短期的には売られすぎの状況にあり、明確にトレンドが転換したとまでは言えないものの、その状況は近づいていると判断される。
すでに10%の相互関税が各国に課せられているうえ、中国には145%。中国側は米国に125%の関税を課しており、景気への影響はこれだけでも十分に大きい。90日間の上乗せ関税猶予期間はあるものの、その間に各国の交渉がうまくまとまるとは言い切れない。先行き不透明な中では、生産活動も貿易取引も抑制的なものとなろう。そもそも、トランプ政権の関税政策について“ディール(取引)によって何らかの果実が得られれば相互関税も撤回される”との見方もあれば、“品目別に除外されるものはあっても、相互関税が撤廃されることはない”との見方まで様々あり、関税政策が短期間で終わるのか、長期間(少なくとも現政権下)継続するのかによって、描かれる世界観も異なってこよう。
このようにリスクがとりにくい状況では、何らかの結論が出るまでは株価が“関税前”の展開に戻ることは考えにくい。相互関税発表後の下落が急激なものだっただけに、相場が上昇に転じても戻り売り圧力をこなすには時間がかかるだろう。
このように、暫くは上値が重い展開が続きそうだ。一方で、短期的には日替わりとも評されるトランプ大統領の発言に一喜一憂する展開が続こう。足元でも、半導体関連に関する別枠での関税(週内発表、数ヶ月内に実行)、自動車・同部品に対する関税の一時免除など、適用除外となるものが出てきている。その中には、関税を当面ゼロにするものがある一方で、相互関税となる10%を超える税率を課されるものも出てくる可能性がある。
投資家の立場から見れば、値動きが大きい展開は短期間のうちに大きな利益を生む機会であることは否定しないものの、大きな損失を抱えるリスクも十分にある。一方で、先行きの展開が読めないだけに、大きく下落したところで慌てて売却することにも機会損失リスクは潜む。
今後株式市場を左右する要素としては、トランプ政権の関税関連政策に関する発言などを除くと、短期的には①月次で発表される4月分以降の米国の物価統計(輸入物価を含む)、消費関連統計(消費者の景況感を示す統計を含む)、②月次で発表される日本の貿易、生産関連統計、③4月分以降の中国の貿易、生産関連、消費関連統計、などが挙げられる。また、中期的には①日米間の為替相場に関する政策、②日米中央銀行の金融政策、及びこれに関する当局者発言、③各国首脳などによる対米交渉、あるいは新たな貿易制度に関する発言、などが重要視され、株式市場の展開を左右していこう。
【補論】移動平均、サポートラインから見た中長期的なテクニカルポイント
日経平均の月足チャートと移動平均線の動きを見ると(図表7)、株価は3月に24ヶ月移動平均線を下回った後、4月にはトランプ関税を受けて急落した。本稿執筆時点(4月15日)での4月の日経平均の安値は30792.74円だが、60ヶ月移動平均線(30422.50円)に非常に近い水準となる。この水準を切り下がると再び急激に下げ足を強めるリスクはあるが、当面はこの水準が下値支持線と見なすことができる。逆に、月足終値(月末値)で同移動平均線を切り下がって終わるようであれば、場合によっては長期的な下降トレンド入りを意識する必要が出てこよう。

一方、月足チャートにトレンドラインを引いたものが(図表8)だ。2013年以降、日経平均株価は緩やかな上昇チャネル①内(図中水色の線:二本は並行)で推移していたが、2020年のコロナ禍で一時これを切り下がった。しかしその後上昇に転じると、その後は2013年来のチャネル①よりも角度が急な上昇チャネル②(図中青色の線:二本は並行)内での推移となった。チャネル②は今局面で一時切り下がったものの、足元では再びチャネル内に収まっている。当面は、チャネル②の下限線が月足終値ベースでの支持線として生きていると見込まれるものの、これを切り下がった場合にはチャネル①の下限線(足元で30,000円弱)となる。

嶌峰 義清
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

