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時事雑感(2026年6月号)

嶌峰 義清

ゴールデンウィーク中に行われた政府・日銀の円買い介入は、160円台後半まで進んだドル円相場への「最後のブレーキ」として位置づけられる。背景には、FRBの利下げ観測後退と日銀の利上げ見送りによる日米金利差の再拡大、原油高や中東リスクを通じた構造的な円売り圧力があり、ファンダメンタルズに沿った円安をどこまで容認するかという難しい線引きがあった。

為替市場の実需取引は全体の1〜2割に過ぎず、大半は短期の投機取引とポートフォリオ調整とされる。この意味で、今回の介入は投機を敵視するものではなく、流動性に乗じた短期的な過度の円売りが、実体経済や物価安定目標との乖離を拡大しすぎるのを抑える安全弁と見るべきだろう。介入そのものは時間を買う政策にすぎず、相場のトレンドを決める決定要因は、あくまで成長率・物価・金利といったマクロ要因にある。

資産形成の観点からは、介入で一時的な急騰・急落が起きても、長期の為替水準は金利差と経常収支で説明される部分が大きいという基本を忘れないことが重要だ。今回も、介入直後こそ5円前後の急激な円高が見られたものの、その後は再び日米金利差をにらんだ水準調整へと回帰しつつある。短期売買の世界では介入の読み合いが収益機会になるが、長期投資家にとっては、むしろこうしたボラティリティの高まりを利用して、通貨分散や外貨建て資産の積み増しペースを冷静に見直す局面だったと言えよう。

今後も、FRBが高金利を維持する一方で、日銀は緩やかな正常化にとどまる可能性が高く、名目・実質の両面で日米金利差が完全に解消されるシナリオは描きにくいとの見方が主流だ。そうであれば、為替介入はあくまで「急激な円安へのストッパー」として断続的に用いられる一方、日本の家計・企業にとっては、為替水準に一喜一憂するよりも、自らのバランスシートの通貨構成や金利リスクの取り方を問い直す契機であろう。

(嶌峰 義清)

嶌峰 義清


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